「編集の妙」男はつらいよ お帰り 寅さん コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
編集の妙
デジタルリマスターした全シリーズからの抜粋映像を、現代に差し込む編集の匠を観せていただきました。
いやぁ、「国民的美少女」と言われていた頃の、ゴクミの美しさにメロメロになりそうでした(現代のゴクミについては発言を控えさせていただきます)。
作中、寅さんの今の生死については、誰も語りません。
涙を流すのみ。
山田洋次監督は、とにかくセリフを最小限しか使わないのが良いです。
ただ、みんな上手い役者のはずなのに、昔の「男はつらいよ」シリーズのテンポに合わせた演技をするので、セリフが下手に不自然に聞こえるのでありました。
特に主演の吉岡秀隆さんが、一本調子の疲れ切った中年セリフすぎてひどく。おまけに、目が死んでいて、かつての初々しい子ども〜高校生の姿が擦れて消えていくような後ろ向きな寂しさが漂い、辛かったな。
「お帰り」ではあるが、それ以上に吉岡さんのテイストから、「これで成仏してね、打ち止め」みたいに思えてしまいました。
そんな中で、救いというか、一番私がしっくり来たのが、桑田佳祐の主題歌。
これがPVっぽくて余計だ、嫌いだという意見もわかります。
そりゃ、オリジナルの渥美清さん歌唱と比べちゃいけない。
だけれども、渥美さんは亡くなっているわけで。
オリジナルは「ダメな自分を自覚した、周りへの照れや妹への申し訳なさ」みたいな【陰】が味にあるんですね。
しかし、寅さんが不在な本作では、「リスペクトできる素晴らしいおじさんだったよ」っていう、【陽】に歌い上げていて。
「みんな寅さん好きだよね!」って、共感を作り出すのに成功していた気がしました。
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