劇場公開日 2018年11月2日

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「拡散してしまった印象」華氏119 xtc4241さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0拡散してしまった印象

2018年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

知的

この映画、何か拡散してしまった印象が強い。
「華氏119」は反トランプを標榜した作品だが、それにしては舌鋒が鋭くないと思った。何か論点が集約していないのだ。
この映画は3つの要素から成り立っている。
⑴高校で起きた銃乱射事件と高校生たちの銃反対運動
⑵水質汚染におけるオバマ大統領の態度への落胆
⑶ヒットラーの勢力拡大に似たトランプの手法
このうち、⑵には大いに違和感を感じた。
オバマは猿芝居を打って水質汚染を黙認した、という論調の映像。
事実がどうだったかは知らないが、この映像によって政治家はみんなダメなんだという調子になってしまった。確かに政治家は清濁併せ持っているだろう。それは政治家だけでなく、僕ら一般の人も同じである。
それを持ってくるのがこの映画の目的に適合していたか疑問である。
それに⑶もややこじつけっぽく感じた。
今の時代、当時とはコミュニケーションの流通が違う。一方的な論説からいろんな論がありすぎるくらいある時代だ。その選び方が変わってしまったことに大きな原因があると思うのだ。
結局、この映画の目的にかなうテーマとしては⑴だけになってしまった。
高校生の銃規制運動は稚拙ながらも大きな力となった。
その持続力が課題ではあるが。
反トランプを打ち出すなら、もっと素材はあるだろう。
例えば、女性やLGBTのひとたちに対するトランプの態度。
あるいは、他国や他民族に対する侮辱的発言。
アメリカ第一主義で、積み上げられた環境問題の放棄。
そういった視点での切り込み方があったのではないか。
僕は、特に女性に対するトランプの態度について大きく取り上げてもらいたいと感じてしまった。こんな男がアメリカの大統領でいいのかというとても身近な問題なのだから。

xtc4241