峠 最後のサムライのレビュー・感想・評価
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グッと胸に迫るものもなく……
予告編を見て、本作を鑑賞するのをとても楽しみにしていたのですが、ちょっと期待はずれでした。残念です。『蜩ノ記』のほうがだいぶよかったなぁ。
潔い主人公の姿、そして役所広司の熱演にもかかわらず、グッと胸に迫るものもなく……。
というか、その熱演がどうも作品にぴったりと収まらず「役所広司 独演会」みたいになってしまっているなと感じたりもしました。
とにかく何だか物足りなかったです。歴史や道徳のお勉強じゃないのだから、もっと映画としての、エンターテインメントとしての、面白さや盛り上がりが欲しかったように思います(エラそうなこと言ってスミマセン)。
久しぶりに仲代達矢さん(年とったなぁ)をスクリーンで観られたのはよかったです。
それにしても、タイアップかなんか知らんけど、あのエンドロールの石川さゆりの歌、必要なのかなぁ。
追記
本作は、観客にある程度の鑑賞能力が求められる作品だと思います。
『燃えよ剣』などと同様に、物語の背景となる、幕末~明治維新にかけての基本的な史実を押さえておかないと、「何をやってるのかイマイチわからん」、いや、もしかすると「さっぱりわからん」ということにもなりかねません。
それから、登場人物のセリフを正確に聴きとり、理解する力も必要でしょう。普段つかわない馴染みの薄い言葉がいくつも出てきますので、歴史につよくない人なんかは、ストーリーに入っていきにくいかもしれません。
古き時代劇という感じ
河井継之助の何がすごいかがわからない作品
万事が古臭いし日本映画が最悪だった頃の作りだ
今も昔も、維新に人物などいないのだ
「自由と権利、リバティとライトだな」と、唐突に英語が出てくる。福沢諭吉の著書にある言葉だと紹介されている。なるほど、河井継之助は福翁以上の西洋かぶれで新しもの好きだった訳だ。絵画も音楽も聞きかじりである。
同じ役所広司が主演した映画「山本五十六」を想起した。和平や講和を望んでいるにも関わらず、軍事に邁進するところが似ている。覚悟のなさの現れだ。「常在戦場」という主君の言葉に感心するなど、人間的な深みに欠けるところも、山本五十六にそっくりだ。
役所広司の演技はもちろん悪くなかったのだが、満41歳で死んだ武士にしては歳を取りすぎている。思い切って若い役者を使うのもありだったのではないかと思う。若気の至りということであれば、官軍の浅ましさに怒って徹底抗戦をしたことにも納得できる。
領民のためを思う老練な役人なら、一銭にもならない武士のホコリなど捨てて、長岡が戦場となることを防ぐのが最善だった筈だ。老人に謝っている場合ではない。このシーンに一番がっかりした。
明治維新はクーデターである。本作品で河井継之助が看破しているように、薩長は権力亡者の集団である。継之助が上手く立ち回れば領民の血を流さずに済んだ。これからは教育だというなら、軍事よりも教育に予算を注ぎ込むのが筋だ。どうにも一貫性がない。
薩長の官軍もクズばかりだが、継之助も褒められたものではない。登場人物の底が浅ければ、必然的に作品の底も浅くなる。今も昔も、維新に人物などいないのだ。
『武士道』『侍』というプライドの志にのみ生き抜いたラストサムライ。
少し物足りなくて…
ガトリング銃
松たか子の所作の美しさと役所広司の台詞力!そして…
主人が帰宅し、刀を受け取る。素手で受け取ってはいけない。着物の袖を巻きつけるように、指紋が付かないように受け取る。武家の嫁はこんなことしなきゃいけないんだ!と思うとともに、この映画の時代考証がいかに素晴らしいかを感じた。その受け取り方が美しい。他の動きもそうだが、所作の順序がきちんと決まっており、そしてそれを忠実に守る。美しいとは、そういうことか…と思いました。継之助の芸者遊びに付き合い、一緒に盆踊りを踊るシーンでは…日本舞踊のお師匠さんより上手な踊りを見せてしまいました😨松さんうま過ぎる!継之助役の役所さんの台詞力はハンパない!長セリフが多いこの映画の脚本でこなせるのは役所さんしか無理でしょう。長いのに力強く、そして悲壮感。それと部下を鼓舞する説得力。全てを表現しなければならない。これは難しい!各役者のセリフの力がハンパないこの映画でも役所さんの存在感は圧巻です。論理では割り切れない行動の裏には、心のあり方が重要だという認識と自分の置かれた立場に忠実であるという冷徹な覚悟がありました。今年一番泣きました。
役所広司の役者力に頼りっきりの2時間
龍馬、西郷、海舟、ヒーロー史観ではない、幕末維新のリアル。
薩摩・長州は、単に長年の徳川幕府の政治への反抗で、軍事クーデターを起こしたのに、あたかも日本の将来を心配して立ち上がった事になっている。
そんな明治維新絶対史観へのアンチテーゼとして、河井の存在は日本の救い。
こんな筋の通った立派な人物が日本にはいた。
しかし薩長の野蛮人が、自分勝手に振舞い殺し、歴史を捏造した。
薩長が政治を乗っ取り、やがて日本は 日清日露日中WW2 破滅へと向かう。
何がいいたいの?
義と御恩
自らの死と引き換えに遺したいもの、ありますか?。
いちいちニュースにならない程に、クニの都合で、ヒトの死が溢れています。ヒトの都合は一切、考慮無し。そこに大義があれば、認めますのか?。喜んで死ねますか?。
私、イヤなんですけど…。
当然ですが、歴史は勝者が綴ります。継さんみたいな立ち位置は、時流に逆らう頑迷な輩扱いされます。でもだからこそ、そこのみにて光輝くものが、あるわけで…。
私、継さんのすべてには、賛同しません。でも、継さんみたいな人がもう少しいたら、世界は、もう少しマシになっていたような気もします。武力を用いて仲介を成す。武力を用いて他者を屈服させるより、マシな世界。つまり、武を和平に用いる。夢みたいな話ですが、そんな理想に、ブレること無く邁進する。武士の一分を見た思いです。
どうでもいい感想ですけど、継さんのラストショット、「乱」の、仲代達矢に似てません?。師匠に捧げるオマージュか?。あるいは挑戦状か?。ちょっと気になりました。
「山本五十六」
生まれ変わりかと思いましたよ。確か、五十六さん、長岡の人だし。武を用いて、講和を模索するし。どっちの映画も、役所広司だし。
「峠」をご覧の方、全員もれなくオススメです。余力のある方は、そのまま「日本のいちばん長い日」までお進みください。見てはいけない何かが、見えてきそうになります。
脳内補完必須の歴史絵巻
山本五十六が敬愛したが為に世に広まった言葉の数々が彼(五十六)のものになってしまってますが、元ネタみたいな人の話。辿る苦難の人生も似ているので何とも複雑な気持ちになりますが、「ゆすりたかり」が国の中枢に群がる日本という国の中で、「こういう為政者もいたのだ」と背筋を伸ばすのに最適な作品でした。ガトリング銃と戦の妙みたいな見所はもっと欲しかったし、度々映る良く分からないイメージシーンはいらなかったと思うけれども、オルゴールの音に引っ張られる「平和への思い」と主人公親子の屹立とした破天荒さは素敵でした。
五十六も演じて今回は継之助。家康も演じたから、次は何だろう?と円熟期の極地な役所広司さん。ありえないだろうけども、三部作での「水野勝成」その大トリ三作目の勝成をやって欲しいなぁ。宮本武蔵との顔合わせなんて最高の一場面になるだろうに(宮本武蔵といえば若い頃の役所広司さん)。そんな本気の歴史絵巻が観たい。
河井継之助の人間性
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