「松たか子のカンカン踊りが素晴らしい」峠 最後のサムライ のりかずさんの映画レビュー(感想・評価)
松たか子のカンカン踊りが素晴らしい
役所広司演じる河井継之助、松たか子演じるおすが。この時代の夫婦の美しさに見惚れる。夫を信じて支える、凛とした佇まい、着物の着こなし、時代劇ならではの所作…大豆田を演じる松たか子も好きだが、このおすがも本当に見惚れる。特に、継之助に促されて踊る「カンカン踊り」で魅せる手先のしなやかさがとても美しい。これは観る価値があると思う。
司馬遼太郎が、幕末の知られざる英雄、河井継之助の生き様を描いた長編小説「峠」の初映画化ということで早速観に行ってきた。
いきなり大政奉還のシーンから始まった。徳川慶喜を演じているのが東出昌大だったのだが、彼の声や口調は独特で時代劇に合わないのではないかと思ってしまう。
さて、新政府軍には加勢しない、同盟軍にも味方しない武装中立を表明し、洋式ライフルのミニエー銃を採用、横浜にいた外国人貿易商から手動機関銃ガトリング砲も購入した継之助。このガトリング砲は360発連射でき、これ1台で兵士360人に匹敵するので、長岡藩は小藩ながら国内有数の軍備を持つ藩となっていった。それは中立を保つため、外圧を振り払う自衛だったが時勢はそれを許さなかった。
会津への出兵に応じず、武装する長岡藩を新政府軍は敵とみなし、新政府軍の一隊は兵を進めた。何としても開戦を避けたい継之助は和平実現のための知恵をめぐらせ直談判しに新政府軍が本営を敷く寺へ乗り込む。面会した新政府軍の、土佐藩出身の岩村は24歳の若者だった。継之助は「戦争は双方に不利益、諸藩が団結して新しい国づくりに邁進すべき」と説く。また会津藩などの諸藩にも和平を提案するため、猶予が欲しいと懸命に主張した。だが不幸にも岩村には武力衝突しか頭になく、継之助の言葉を聴かなかったため、継之助の非戦中立の夢も敗れた。
もはや戦は避けられない―。
こうなった以上は故郷と自身の正義をかけて戦う。それこそが武士の心得、最後のサムライと言われる所以であると思う。