楽園(2019)のレビュー・感想・評価
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学校で問題を解くのが楽しくてしょうがなかった勉強好きには最高な映画
この映画は勉強好きにはたまらない。細かい所までよく出来ている。初見では気づかない事も多かった。本などの文章は確認のために戻ることも出来るが、劇場で観る映画は文章以上に情報量が多いのにも関わらず、戻れない。何度観ても新たな発見があり、飽きずに…いやむしろ咀嚼されたことによりさらに楽しめる。勿論内容は暗く、深い。頭を使い犯人や手法を推理する作品は好きだったが、やはり殺伐としたものを推理することに辟易して最近は避けていた。しかし、この作品は心理描写を繋げていく楽しみなので、相手を理解するという点が心地よい。テーマも単純な田舎の話ではなく、自分が加害被害問わず当事者になりうるところが自身の行動について改めて考えさせられる。
これほど友人と考察することが楽しい作品に出会ったことはない。社会派作品の中でも突出して素晴らしい。
読解力がある人ほど何度も観たくなり、抜け出せなくなる魅力的映画。
限りなく重たい。しかし、観てほしい。
さて、本作、明るさや希望はまったくないと、他のレビューで予想して観に行った。そして、予想通り、たいへん重たい。
春夏秋冬、四季それぞれの美しい景色のカットを丁寧に撮りながら、その間に描かれる村の人間模様は、この上なく醜悪な村八分の世界と、そこから陥る悲劇的な二つの結末。
杉崎さん、村上さんと当代きっての若手実力派俳優に、綾野さん、佐藤さん、柄本さんと揃った日には、俳優的には何でもやれる、もう瀬々監督の腕次第ってなわけですが、この映画のすごいところは、二つの結末自体は、さほど話題にならないだろうと思われること。
そこへ至る過程が、いかに理不尽で、しかし誰もが陥りそうな状況から生まれたことか。さらに、限界集落であればたやすく発生するだろうと思える。さらには、先に述べた景色との対比で、日頃から「田舎の景色は素晴らしい」と言っているこちら側の観客に、「そこに住む、そこを維持することを考えたことがありますか?」と投げかけているような厳しさを感じる。
少なくとも俺は、考えたことがありません。知っていても、うまくいけばいいな、と期待しているだけです。
そんなわけで、たいへん疲れ、それ以上に充実した映画だった。
最後にわずかな光は示されらので、みんなに観る機会があるといいな、と思う。
TOHO川崎で観た。本作とは関係ないが、TOHOは、ブランケット有料にしたんだね。衝撃だった。殿様商売なのか、それとも思っている以上に経営は綱渡りなのか? 映画館が、ずっと続くといいな。
評価の難しい作品
現実に起きた事件をモチーフにした短編小説集が原作とのことですが、全く関連性の無い二つの事件が同じ集落で起きたものとして2時間ちょっとの映画の枠で描こうとして焦点がぼやけてしまった印象。
敢えてそうしてるのかも知れないけど、杉咲花さんと村上虹郎さんの作品全体での立ち位置もはっきりしない。
それと、濡れ場のシーンは必然性は無いかなと感じました。佐藤浩市さんに片岡礼子さんを当てた時点で多少の色恋事は有るのかなと思いながら見ていましたが、まさかの混浴、しかもフルヌードとは・・・
制作側の意図としては村八分の疎外感を決定的にした出来事として描いたのでしょうけど、
それならば、善次郎の抱く絶望感が大量殺人を犯すほどの憎悪に転じる村人との間のエピソードをもう一つくらい織り交ぜた方が良かったのでは、と思いました。(飼い犬の自宅軟禁だけでは動機づけとしては弱いのでは?)
穿った見方かも知れませんが、題材が重く、作品自体が地味で抑揚のない展開にならざるを得ないので、刺激的なエッセンスを盛り込むために安易な方法に走ったのかなと。
そして、追加キャストである片岡礼子さんは佐藤浩市さんと年齢的に釣り合いが取れて脱ぐ事を厭わない女優さんとしてキャスティングされただけなのでは、などと余計な事を考えてしまいました。(片岡さん、ごめんなさい。目の保養にはなりました)
ただ、犯人探しのサスペンスなのか人間ドラマなのか、見る側の想像力を試す作品を作り手側が指向したのだとすれば、なかなかの佳作だと思います。
心を引き摺られる
タガが外れる
なぜ、人ってこんなにも不平等なんだろう。
人間の奥底にあるもの
「楽園」て結局何のことなの?
「楽園」というタイトルとは正反対の、陰鬱で凄惨な印象の作品だ。誰かを悪者にして、犠牲にしないと存続できない人間社会の本質を描いていると言えよう。人類が社会を作って生活し始めてからそんな話にあふれている。最近の問題では「いじめ」も根っこは一緒だ。少し集団から外れた人を悪者にして、自分が正しい側にいると思いたいだけだ。そんな人間の罪業と犯罪事件を絡めて凝縮した内容のサスペンスに仕立てている。社会から疎外されたり迫害されたりする人の悲しい心情も分かるが、「魔女狩り」みたいなことをする人たちの気持ちも理解できるだけに、見終わってもすっきりしない印象が残る。
難しいテーマなだけに、映像だけでは伝わりにくいものがあったと思う。「楽園」というタイトルもそうだ。意気込みが空回りして「頭でっかち」になっていないか。途中でいろいろ考えることはあっても、最初から最後まで映像に引き込まれることがなかった。話の展開をもっとシンプルにしたほうが良かったと思う。
紡の覚悟
楽園。誰かがその言葉を口にする度、怖さを感じました。
さりげなく描かれた人が減っていく地域の描写もリアルで良かったです。
成り手が減っていく中で、東京に出てる紡に声をかけるくだり、半ば強制的にやらされて、やりたくなくて練習がおろそかになる子どもたちの描写。毎年の祭りを成り立たせなくてはいけない地域にとっては一つの大きな課題です。
最後まで犯人が曖昧なままに終わるのは、“わからなくてもいい。それでも生きる。”と決意した紡の覚悟の、それがいかに大変なことかを、観たひとに感じてもらうためなのでしょうか。
あとで綾野さんの試写会でのコメント記事を読んだら、エンドロールで上白石さんの歌が流れて救われたというようなことを話されてました。まさに私もそんな感覚でした。
意外と爽やかな気持ちに
楽園とは何か
<Story>
さっぱりわからないという人と心に響いたという二つに意見が別れやすい映画だ。まさに、何も考えずに見るとこの映画はさっぱりわからないと思う。
しかし、この映画は意外に深い。「集落」という一つのコミュニティに生きる人間と事件を通して、人の性を描いている。
人というのは保守的であり、変わろうとしない。
また、他人との比較による嫉妬や妬みというものを常に持ち、変わった存在を潰そうとする。
それがまさに、限界集落というコミュティで起きる事件をきっかけとして、描かれている。
集落というのは、一つの社会であり、まさにその人間の性が出やすい。
何か問題が起こると、誰か一人のせいにしようとする。
出る杭は打とうとする。
それらは、異質を認めなく変化も求めないものにとってはまさに楽園だが、そうでない人間にとっては、地獄とも言える環境である。
また、東京との行き来を物語に持たせることによって、地方と都市の問題点も暗示している。日本という国で今、集落というのは後継者もいなくて、どんどん実際に消えていっている。そこで生きる人はどうするのか、これは私たちの問題でもある。
<役者>
それぞれにはまっており、非常に良かった。
<映像>
日本の田舎、祭り、静と動が動かれており、それがまた物語とマッチしており、良い。
不寛容が悲劇を招く
皆様は「イントレランス」を知っていますか?
1916年に公開されたアメリカ映画です。
四つのエピソードからなり、テーマは全て一緒です。それは・・・
不寛容(intolerance)さが全ての悲劇を生むという事です。私は深く肝に銘じました。
またグリフィス監督は当時としては斬新な撮影方法を考案しました。それは現在にも
受け継がれ、映画の父と言われています。
私はかなり前ですが、日本武道館、フルオーケストラ付きの特別上映で観ました。
上映前の事です。お腹がすいたので武道館の前にあるレストランでカレーライスを食べる事にしました。ところが水がついてない。水は給水器でセルフサービスなんだなと思いました。ところがなんと・・・
給水器がない!まじか!割と広く待ち合わせや休憩所で使う人が多いので店主が撤去したのでしょう。
待ち合わせだけでも迷惑なのに、無料で水まで
飲むのは許さん!!
でも私はカレーを頼んだんだぞ!
しかたなく水なしでカレーを食べ始めました。
しかーし無理だ!全然無理無理かたつむり!
(でんでんむしむしかたつむりのもじり?)
わにの腕立て、亀の腹筋くらい無理!(なぜ爆風スランプ)
バルタン星人とドラえもんがじゃんけんしてバルタン星人が勝つくらい無理!
(たとえがくどい)
しかたなくペットボトルのお茶を買いましたが
カレーと水はセットだろう!私は始めて言葉を発しました。
うっ・・・うっ・・・うおーたーー
(ヘレン ケラーか!)
馬鹿野郎!菊次郎だよ、馬鹿野郎!(なぜ菊次郎の夏?)
はっ!?すみません。不寛容でした。
単純に忘れただけかもしれないですしね。
さて長いまくらが終わりここから映画の感想に入ります。
が、原作の吉田修一さんの事を少しだけ言わせて下さい。
楽園のテーマは不寛容は悲劇を招くですが、吉田修一さんの書くテーマは 【不】で始まる言葉が全てです。
例えば不穏な空気、不思議な読後感、不幸の連鎖、ほのぼのした作品でも、不測の事態か起こります。
そして結末はあえて明確に提示されません。
だから良く分からないという意見には首肯できます。
つまり、その先は読者に委ねています。
私はずっと考えてしまいます。あれはなんだったんだろう?そんな風に考えてしまいます。
多分それこそが作者の目論見。読者の記憶に残してやる!そしていつのまにか吉田修一のファンに、なっている。
フィクションなのは承知だけれど、どこか私たちとシンクロするものを突きつけてくる。
お前は村八分にするのか?されるのか?
お前はそいつの味方になって村八分になってもいいのか?
お前はゴミの集積をされなくていいのか?
お前は生活用水を断たれていいのか?
そして・・・
お前は死んだほうがいいんじゃないのか?
撮影は美しい。長野の限界集落も美しい。
いわば楽園そのもの!
しかし、それはきっと一方的な見方。
つらい、悲しい、きつい、この映画を観てそう感じました。でも救いもあります。
もう一度言います。
不寛容が悲劇を招く。
田舎という狭い世界が生み出す苦しみ
犯罪を犯す方に
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