劇場公開日 2019年10月18日

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「裏テーマが気になって仕方がない」楽園(2019) 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5裏テーマが気になって仕方がない

2019年10月18日
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鑑賞方法:映画館

原作を読んでいないので深い部分での理解が足らない、というより私の理解力が足らないだけか。

楽園なんて何処にも無いんだよ。

この映画のメッセージがそれしか思いつきません。
人それぞれの要因で方向もバラバラなまま何かを抱えながら生きていて、それでも、うまくシンクロすることがあるかもしれないが、現実の社会ではこの映画のように何もかもが嫌になるようなことだってある。それでも生きていくしかない。

まさか、本当にそれだけ⁈

うーん、あの『怒り』に比肩し得るほどの演技力のぶつかり合いで描いたものがそれだけのはずがない!
と信じたいのだが、〝楽園〟という言葉の登場のさせ方、使われ方が唐突過ぎてちょっと引いてしまった。

『空の青さを知る人よ』を観たばかりのせいか、ガンダ〜ラ、ガンダ〜ラ🎵の方が説得力がありました。

『自分の知らない外の世界にはきっと自分の生きるべき場所があるはずだ。でも自分を取り巻く一見すると狭い世界だって、こんなにも豊かで満ち足りた世界になる。それは君自身の心の有り様次第だ』

この映画の世界観による暗めなトーンだと、こんな言い回しがとてもアンマッチだとは思うが、私の理解力ではそういったことを言いたかったようにしか見えなかったのです。本当に申し訳ないです。

ただ、もうひとつ。
実は、言ってはいけない本当に怖い裏テーマがあるのでは?という疑惑もあります。
それは、『嫌老・反老』です。
年金生活者=弱者という世間的なシールドに胡座をかいて、
・公共の場でマナーを守らない(年寄りなんだから大目に見て)
・ちょっと気に入らないとすぐに大声で怒る(年寄りなんだからもっと丁寧に扱え)
・都合が悪いと、自分が反省する前に、したり顔でもっと大人になれ、とか、経験すれば分かると宣い、結局は先送りでごまかす。
・自分たち年寄りは、若い連中から理解してもらう側であって、自分たちが若者に寄り添って理解してあげる必要はない。

そんなような描写は、直接的には描かれていなかったけれど、あの集落の長老達からはそんな匂いがプンプンしてました。
大きな声じゃ言えないけれど(実際に平日から映画館に来てる人はそのような人達の世代が多いので、大っぴらには言えない)、お年寄りの皆さま、もう少し『人の振り見て我が振り直せ』いや、『自分の振り見てこのままでいいのか』と考えて欲しい。
そんなことを訴えていたのではないか。
そんな気もするのです。

グレシャムの法則
asicaさんのコメント
2021年8月30日

私、これ全然ダメでした。

asica
かいりさんのコメント
2019年11月8日

琥珀さん。うーんやはりよくわからんですね😂😂というのも、楽園とした理由もそうですが、じゃあ楽園でなかったとして、他にタイトルがあってもそれがしっくりくる気もしないんです。かと言って、村上君のかき消されたセリフが楽園だったとわかったとき、私は🤔でした。もはやそこでつまづいてる私、、、不思議な映画です。

かいり
グレシャムの法則さんのコメント
2019年10月23日

kossyさん、コメントありがとうございます。あれから、こんなことも考えてました。

ADHD(注意欠如/多動性障害)は、最新の研究によるとオキシトシンというホルモンに起因し、哺乳類に広く共有される、心理学的というよりも生物学的な現象のひとつ(愛着障害)と考えられるようになってきたそうです。
母親(養育者)との関係性が不安定な環境で育った子供は高い確率で愛着障害と見なされるような依存症、不安症、気分障害など大人のADHDとされているものと重なる症状が出ることがあるそうです。

原作における豪士も母親の男好きのする放埓な性格に翻弄され続けてきました。村の周囲の人間も人種差別というよりは、得体の知れない生活をしている薄気味悪い母子として捉えています。
片付けができない大人、これも従来は大人のADHDの症状のひとつと言われてきましたが、近年は愛着障害の方が合理的な説明ができる。豪士の部屋の様子は正にそうでした。

上記のことを踏まえると、いびつな親子関係がもたらした豪士の心理的な障害を明確に描いておきながら、映画においては、要因の多くの部分が周囲に存在した差別とかイジメにあるように描かれています。監督・脚本の意図は分かりませんが、その辺りの整理がつかないまま、中途半端になってしまったように思います。

グレシャムの法則
kossyさんのコメント
2019年10月23日

在日監督や在日問題を扱う監督が作ってくれたほうがシビアになったんじゃないかと感じました。
韓国から日本に来る際に「楽園に行くよ」と母に言われてついてきた息子。
人間はいつも楽園を求めて引っ越すんじゃないかな~などと、引っ越した経験のない俺が言ってもしょうがないか・・・
ま、ここが楽園じゃなかったということで、自ら努力して楽園を作ろうにも周囲の人間が閉鎖的、排他的じゃねぇ・・・

kossy
グレシャムの法則さんのコメント
2019年10月22日

気になったままで落ち着かなかったので、本日、原作本『犯罪小説集』5つの短編のうち、『青田Y字路』『万屋善次郎』の2編を読みました。
映画とは人物造形がかなり違ってました。
紡と広呂はいい関係性の仲で、広呂は無防備なほどの生命力を持つ健康なボーイフレンド。紡も「お前だけ幸せになっていいのか」という自責の念は抱えながらも表立つほどの人格的障害は明確には描かれていない。
五郎老人も映画ほど極端に攻撃的な人ではない。
寧ろ、紡の父親があいかちゃんに付き合わなかった自分の娘の非?(誰もそのこと自体を責めていないのに潔白であることを証明したい、という思い込みからそう感じている)を晴らすために、豪士を犯人としてはっきりさせたいためにケシかけたようにも読み取れました。

善次郎と長老達の険悪な関係も、長老達が始めからあの頑迷さで手のひら返しをしたわけではなく、ちょっとした行き違いと老人同士の面子(メンツ)が悪い方に絡んでしまい、想定外の取り返しのつかない事態を招くことになったように描かれています。

因みにどちらにも「楽園」という言葉やそれを思わせる表現はありませんでした。

紡、広呂の人物造形、そして醜悪とも思える老人軍団はほぼ映画オリジナル脚本が生んだように私には感じられました。
因みに久子は小説には登場しません。
他の短編は未読なので、もしかしたら5つの短編すべてを読まないと浮かんでこないテーマという可能性もあります。

グレシャムの法則
グレシャムの法則さんのコメント
2019年10月19日

誤解があるといけないので追記します。
お年寄りの皆さんが全般的にそうだと言ってるわけではなくて、そういう振る舞いをするご高齢の方を見る機会が最近増えてきたということです。
柄本明さん演じるお年寄りの家族の中には、自分より遥かに精神的ダメージを受けている息子夫婦、その影響のもとで肩身の狭さを感じながら成長してきたであろうあいかちゃんの弟がいます。大きな苦しみを抱えながら生きている人が身近に居ながら、他人を思い遣るよりも、自分が悲劇の主人公であり、怒りに任せた振る舞いをしてもいいのだ、と視野狭窄に陥ることへの警告と受け止めたいと思いました。自分もお年寄り予備軍なので。

グレシャムの法則