「組織の背景と目的を説明してよ」マイル22 うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
組織の背景と目的を説明してよ
後半の盛り上がりを考えると、ツカミに失敗しているのが非常にもったいない。マーク・ウォルバーグとピーター・バーグの座組はもう限界に近いということか。マークのキャラクターは常にイライラしっぱなしの嫌われ者だが、信頼は厚いということは伝わってくる。そこからさらに深みというか、背景と目的が見えないので、いったい何にイラついているのかがよくわからない。
映画の尺が90分でスッキリとまとまってはいるものの、冒頭の作戦遂行シーンで部隊の成り立ちや行動原理を説明してほしかった。そこらへんはマークのキャラクターで押し切ることで大幅な時間の短縮を勝ち取り、その分派手なアクションに振り分けたのだろう。
何かよくわからない組織が、謎のテロ集団みたいなのと戦い、任務遂行に命がけで、仲間たちは次々に倒れていく。この骨太のストーリーに、主人公のエモーショナルなアプローチは欠かせないと思うが、それが無い分、ドライでスタイリッシュな戦闘がひたすら続く印象だ。自己犠牲の美しさみたいなものが強調されているだけに、内面はともかく傷ついていないように見えるマークのメンタルは共感できない。
もちろん最低限の説明は果たしているので何度か見直せばちゃんとわかるのだろう。謎のエージェントを演じるイコ・ワイスの中国武術風のアクションは見事だが、はっきり言って映画から浮いてしまっている。彼をフィーチャーしたかったのなら、もっと違うアプローチがあったはず。
アクションも拠点の襲撃、バイクチェイス、病院でのカンフー、市街戦、民間のアパートの攻防など、盛り沢山だが、全部どこかで見たことのあるようなものばかり。いろいろと不満の残る映画だった。