「一本の道」米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
一本の道
映画の冒頭で、瀬長カメジローの「沖縄には三本の道しかない」という言葉が紹介される。一つは犯罪者となって刑務所に行く道、もう一つは自殺する道、そして最後は闘う道。
時期は分からなかったが、そこまで沖縄が追い込まれた状況があったのか・・・。
カメジローが進む一本の道は、闘う道だった。「ゆっくりと、だが断固として」。
“海外”渡航を禁じられ、妻と北端の辺戸岬に来て、「あれが本土」だと与論島を見つめるカメジロー。
自分は映画を観て、涙腺がゆるむことがほとんどないのだが、このシーンには心が揺さぶられた。
しかしながら、それほどまでに本土復帰と自治拡大が念願だった沖縄の人の心を裏切るような状況が、今現在に至るまで続いている。
コザ騒動(1970)での「なぜMPをかばうか、沖縄人をかばってくれ」という、一市民の叫びは、今日も古びていない。
政治的立場を越えた人気を誇る“SENAGA”を「恐れ」て執拗に弾圧を繰り返す、“返還前”の“民主主義国家”アメリカは、本作において徹底して批判的に描かれている。
しかし、昨今の報道の不自由のためか、TBSとしては、沖縄を捨て石にする日本政府や、名を捨てて「基地の自由使用」という実を取った“返還後”のアメリカへの批判は、本作には盛り込めなかったようだ。
したがって、問題としては現在進行形であるにもかかわらず、本作は“歴史ドキュメンタリー”ということになる。
正直に言えば、カメジローも本土復帰前の沖縄のことも、何も知らなかった自分にとっては、優に2時間を超すだけでなく、内容的にも実に盛りだくさんな本作を観るのは、かなりハードであった。
監督は舞台挨拶で、「一度見ても分からないから、もう一回見に来て」と語って笑いをとっていたが、観る方も少しは「不屈」の覚悟で臨んだ方がいいのかもしれない。