「言葉にするのは難しい」ラストレター zさんの映画レビュー(感想・評価)
言葉にするのは難しい
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手紙がテーマということで、言葉を大事にしているというか言葉の一つ一つが身体に染み渡っていくような趣があったように感じる。それは台詞の力ももちろんあるが、役者の声の力も大きいように感じた。言葉を発するというよりも、台詞を唱えるというよりも、役者の肉体に宿った登場人物の声が溢れ出しているような。
ラストレターの正体は愛した人とともに綴った最初の手紙だった。かつては彼に宛てて、自分に宛てて、友に宛てて書かれた手紙が、時を超えて娘の元へと届く。彼女にとって最も美しく素晴らしい時代の言葉が、数十年を経ても変わらず誰かに届けたい言葉となっていたことはロマンチックでもあるが、同時にその言葉に縋るしか無かったのが哀しい。
他の登場人物と違って、鮎美が広瀬すずの姿しか持たないというのが止まってしまった時間や、過去の幻影としての切なさが際立ついい演出だったと思う。
松たか子がラストで福山雅治と握手するシーンが個人的には一番感心したポイント。「先輩と握手できた」と喜ぶ姿が、高校時代を演じた森七菜の祐里が本当に歳を重ねた姿なのではと思うくらいに二人の演じた祐里が一つの存在として繋がっていた。
主題歌の『カエルノウタ』も素晴らしいですね。
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