「『ターミネーター』の為に」ターミネーター ニュー・フェイト 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
『ターミネーター』の為に
『ターミネーター』は試行錯誤の連続。
審判の日は避けられなかったという『2』の感動を返せ!レベルの展開で『3』を第1弾として3部作を企画するも、中止に。
舞台を変え、未来のスカイネットと人類の戦争というやりようによっては新展開を期待出来た『4』を第1弾として3部作を企画するも、また中止に。
シリーズの顔をI'll be backさせ、リブート的にした結果完全パラレルワールド化してしまった『新起動』を第1弾として3部作を企画するも、またまた中止に。
そして遂に、禁じ手を出してきてしまったのである。即ち、
『3』~『新起動』の事は無かった事にして、『2』の正当なる続編。
こういうの、シリーズ物では出来ればやってはいけない。何故なら、シリーズ物のお楽しみはその一貫性にあるからだ。MCUが人気なのもそれ。私が好きなゴジラシリーズも幾度かリセットし、その度に試行錯誤の連続…。
かと言って、安易なリセットではない。シリーズの生みの親ジェームズ・キャメロンとシリーズの真の主役リンダ・ハミルトンがいよいよI'll be back!
シリーズの今後が懸かってると言って過言ではない、並々ならぬ意欲の“続編”の感想は…
始まり方はお馴染み。服を頂戴するお約束も。
突然未来からやって来た2体のターミネーター。
ターゲットのヒロイン。
話的には『2』を踏襲。『2』を彷彿させるハイウェイ・チェイスも。
新たな設定は…
敵のターミネーターはT-1000の進化版、REV-9。まさかの2体に分離!
味方のターミネーター…ではなく、身体を一部機械化された強化女戦士、グレース。
標的である若い女性ダニーが狙われる理由は…?
追われ、追う、逃避行。
追い詰められ絶体絶命!…の所へ現れたは、サラ・コナー!
そして彼女たちが目指す先に居たのは、あの旧型ターミネーター…!
今回のニュー・ヒロイン二人。
グレース役のマッケンジー・デイヴィスのタフな女戦士っぷりに惚れ惚れ。
鍵を握るダニー役のナタリア・レイエスも『1』のサラの如く逞しくなっていく。
強いヒロイン像は『ターミネーター』やキャメロンの定番。
だけどやっぱり、リンダ・ハミルトンとシュワちゃん!
ある悲劇から“ターミネーター・ハンター”としておばあちゃんになっても闘い続けるサラの勇ましい姿もさることながら、ハミルトンとシュワちゃんが並んで銃をブッ放すシーンは、ファンなら感涙&興奮モノ!
ファンサービスもたっぷり。シリーズを彷彿やオマージュは多々あるし、何よりOPシーンは鳥肌モノ! だって、あの二人があの時の姿のままで…! 衝撃の展開にはなるが。
お馴染みのテーマ曲も要所要所で。
『デッドプール』では過激でノリのいいアクションを魅せてくれたティム・ミラー監督が、一転して重量級アクションをふんだんに。
グレースとダニー、サラとT-800、各々の機械と人間のドラマ。
一SFアクションとしては無難に楽しめ、『新起動』なんかより遥かに再起動した。
…が、しかし…
今回の新たな設定、展開、鍵を握るヒロインの存在、これから未来で起こる惨劇…。
巧く捻ったように見えて、焼き直し感半端ない。…いや、それどころか、
無かった事にした『3』~『新起動』と結局やってる事は同じ。
一体、これの何処が『2』の正当なる続編なのだろう?
やりようによってはサラもT-800も絶対に必要不可欠なキャラではない。グレースとダニーだけでも成り立つ話である。
キャメロンに権利が戻ってきた事をいい事に、製作側が強引に押し進めた、酷な言い方だが作る必要の無かった続編。
確かにそうつまらなくはなかったが…、非常にがっかりでもあった。
これが、皆が期待したあの『2』の正当なる続編なのか…。
本当に製作側には“ターミネーター愛”はあるのだろうか…?
もしあるのなら、あの『2』の感動のラストを受けて、これ以上凡作となるような続編は作ろうとしない筈である。
結果は端から分かっていたかもしれない。キャメロンがカムバックと言っても、監督ではなくプロデュースのみ。もうこれ以上、このシリーズに語るべき事は無いという事を…。
全米では期待外れの大コケで、またまたまたシリーズ化の企画があるそうだが、またまたまた中止になるだろう。
『ターミネーター』は製作側の都合や勝手で金を生む商品やおもちゃではない。我々映画ファンの至宝である。
だから『ターミネーター』の為に、本当に本当にもうこれ以上、I'll be backしないで欲しい。