「公開遅延の根源ながら、やっぱり清水富美加が惜しい」ごっこ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
公開遅延の根源ながら、やっぱり清水富美加が惜しい
お笑い芸人の千原ジュニアの迫真の演技が味を出している。ヘタな計算をしていないから、強烈なインプレッションを与える。都内上映は2館だけなのに、話題となっている。
40歳目前の"引きこもり"で"おたく"の城宮。ある日偶然、虐待を受けていた5歳の少女を目撃し、連れ出してしまったことから、誘拐であることを隠しながら、偽りの父娘生活が始まってしまう・・・。
乳児を誘拐して、愛を持って育てたといえば、「八日目の蝉」(2011)や最近では「ブリグズビー・ベア」(2018)がある。"愛があれば、血のつながりなんて・・・"とは言うものの、この設定は、非常識な犯罪行為と愛情の対比が不思議な空気感を生む。
本作は2016年に急逝した小路啓之の同名マンガを原作にしている。
"児童虐待"、"貧困地域"、"ニート"、"誘拐"、"シャッター商店街"、"年金不正受給"、"自殺ほう助"など社会的弱者の様々な問題提起を含んでいる。
なんといっても注目は、誘拐した5歳の少女"ヨヨ子"を演じる平尾菜々花だ。彼女の演技がこの作品を、見どころのあるレベルまでに引き上げている。ヨヨ子のセリフ、"パパやん!"、"BB弾!"、などが印象的だ。川谷絵音の書き下ろし主題歌が、また強烈である。
本作は、例の"清水富美加・出家事件"で資金難に陥り、公開が1年遅れた。
成長したヨヨ子を清水富美加が演じているが、ひさびさに見ると、やっぱり惜しい。(というか戻ってきてほしい。出家はレプロを辞めるいいわけであったはずで、個人的な宗教活動とは別にできないものか)。
熊澤尚人監督が、吉高由里子主演のイヤミス映画「ユリゴコロ」(2017)の直前に、やはり不条理な設定の作品を手掛けていたことになる。オトナの都合で公開時期が逆転してしまったが、公開初日は原作者・小路啓之の命日だった。
(2018/10/28/イオンシネマ シアタス調布/シネスコ)