「今だからこそ観たい社会派エンターテイメント」バグダッド・スキャンダル とえさんの映画レビュー(感想・評価)
今だからこそ観たい社会派エンターテイメント
ノーマークの作品だったけど、緊迫感とスピード感があって面白い社会派作品だった!
実際に国連で起きた汚職事件をモデルに描くフィクション
2002年。世界平和という、壮大な夢を抱いて国連に就職した24歳のマイケル(テオ・ジェームズ)は、いきなり事務次長バシャ(ベン・キングズレー)の補佐という仕事を任される
事務次長のパシャは、イラクで 石油・食糧交換プログラムにたずさわっていて、マイケルもパシャに同行してイラクのバグダッドへ
そこで、イラクの人々に人道支援を行うはずが、その裏側で金が飛び交う汚職ままれの現実を知り…
当時の国連は、フセイン大統領の独裁政治を止めるために、経済制裁をしていた
その中で行われた「石油・食糧交換プログラム」というのは、石油を売ったお金で食糧や医療費など国民の生活に必要な物資と交換できるプログラム
しかし、実際には、国連の職員を通してフセインから各界の大物にワイロが渡り、フセイン自身は石油を売ったお金で私腹を肥やしていた
という事件があって、この映画は、ある一人の国連職員の告発という形で描かれている
国連が汚職まみれという話は聞いたことがあったけれど、ここまで汚れきっていると、人道支援とか、弱者を守る機関っていうのは、どこにあるんだろうなと、絶望的な気分になってしまう
政界や企業や国連の大物たちは、イラクで行われている民族浄化を見て見ぬ振りをし、悪の枢軸と呼ばれた独裁者と手を組み金儲けをしている
そして、その事実を知ろうものなら、命が危うくなる…
それって結局、あのフセインを支援してたのは国連に加盟している先進国ってことじゃん…(呆)
この映画は、その国連を根底から揺るがした事件をサスペンスフルに、ラブロマンスも盛り込み、分かりやすく楽しめるように描いている
ただし、「石油・食糧交換プログラム」の概要については、一切説明がないから、そこは予習してから観た方がいい
私は、ざっとあらすじを読んで、そのプログラムの仕組みを理解してから観た
現在
「命がけのジャーナリズムは必要か、それとも自己責任か」
の議論が沸き起こっている日本だからこそ、観ておきたい作品。
誰かが命をかけなければ明らかにされない悪事は、戦場にこそ潜んでいるのだ