劇場公開日 2018年10月26日

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「低予算サスペンスの革新」search サーチ vary1484さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0低予算サスペンスの革新

2019年3月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

知的

低予算映画の金字塔。
日本でも”カメラを止めるな”という、低予算インディー映画が話題となったことで衝撃を読んだ去年ですが、同じ年の世界でも、100万ドルという低予算ながら、7500万ドルもの驚異の興行収入をあげたサスペンス映画が公開されました。それがこの作品。私も、日本に吉事帰国した時に劇場で予告編を観て、知ったのですが、前編パソコン上で繰り広げられるサスペンスというのがこの作品の特徴です。アイデア、クオリティがまさにお金を使わず、頭を使った見事な革新的作品だと思います。

まず最初に見ていきたいのは、サスペンス映画としての質。サスペンス映画は、昔から映画界の遊撃手的な立場で、映画業界の発展に貢献してきました。オーソン・ウェズル、ヒッチコック、デヴィッド・フィンチャーなど素晴らしい監督が名を連ねるジャンルです。今作もかなりピュアなサスペンスです。親子の関係性と、ネットの情報社会の影の部分をテーマとした、子供の失踪次元を扱うサスペンス映画です。サスペンス作品を作る要素として、省都と事件を細かく繋げた脚本は見事でした。人間のサガをも巻き込む事件は、まるで東野圭吾作品を読んでいるような、日本人には受けるであろうストーリーです。一方で、これまで、偉大な映画監督が作ってきた作品には、サスペンスのスリラー要素以外にも、サイコロジカル的な部分がキャラクターを描いてきたため、サスペンスは発展してきたのだと思います。この作品にも少なからず、親子の愛情や、思春期の距離感みたいなものはありますが、サスペンスに結びつけるには、少し現実から離れ過ぎていて、視聴者の心から離れないネッセージみたいなものを残すことはできなかったのかもしれません。

そして、この作品の最大の特徴である、すべての画面がパソコンのスクリーン上で繰り広げられるというアイデア。100万ドルという低予算の中、彼らの用いた方法は、ポストプロダクションに時間をかけるということ。撮影自体は、16日間。そして、編集作業には1年以上の年月をかけたのだとか。Premier Pro, After Effects, IllustratorというAdobeの製品を最大限に利用した本作。Adobeのダイナミックリンクという機能を使って、9割以上のものを0から作り上げています。ウィンドウから、1つ1つのアイコンまで、Illustratorでデザインし、そのベクターファイルをAfter Effectsでアニメーション化する。さらに、そのコンポジションをシークエンスとして、Premiere Proで編集する。まるで、アニメーターのようなことをしています。これもまた、デジタル映画のとっつきやすさが叶えた、新たな時代の始まりといっても過言ではありません。どうやって時代がこの流れに息を加えていくのか、とても楽しみです。

vary1484