劇場公開日 2019年11月8日

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「至近距離に迫ったカメラが捉えるゴッホの苦悩」永遠の門 ゴッホの見た未来 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0至近距離に迫ったカメラが捉えるゴッホの苦悩

2019年2月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 酒場で出会ったゴーギャンの勧めでアルルに移り住んだゴッホは弟テオの仕送りで細々と暮らしながら精力的に絵画にのめり込むが閉鎖的な町の中で孤立してしまう。アルルを訪れたゴーギャンとともに互いに刺激し合いながらますます創作に打ち込むゴッホだったがそんな関係も長くは続かず・・・。

 台詞がほぼ英語というところに違和感はあるものの、さすがウィレム・デフォー、迫真の演技で不遇に喘ぎ苦悩するゴッホの姿を見事に体現しています。『ファースト・マン』や『アリー スター誕生』と同じく登場人物の至近距離に迫ったカメラが捉えた表情が台詞以上に饒舌。恐らくはCGで作り込んでいるのだと思いますが、さりげなく映り込む背景がゴッホの作品群とリンクしていて何度もはっとさせられます。当然色彩も非常に豊かで、ゴッホのアトリエ"黄色い家"の壁の鮮やかさなど思わず息を呑むほど美しいです。また何気にルーブルに展示されているドラクロワやゴヤの作品も接写されているので西洋絵画が好きな方にはそれも眼福だと思います。

 映像だけでなく音響もかなり凝っていてゴッホとゴーギャンが語り合いながら散策するシーンではずっとハエや蚊がブンブン飛び交う音が聞こえてくるし、物語に寄り添う劇伴のピアノの音色も印象的。脇を固めるオスカー・アイザック、マッツ・ミケルセン、マチュー・アマルリックの名演もあって地味な物語ながら圧倒的な貫禄のある作品に仕上がっています。

エンドクレジットが始まって少し後にオマケがついているのでスクリーンでご鑑賞の際は早々に席を立たないように注意しましょう。

よね