「帝国の落日に、探し求める女が行き着く先」サンセット AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
帝国の落日に、探し求める女が行き着く先
1913年のブダペスト。オーストリア=ハンガリー帝国が解体する5年前、いわば“帝国の落日”の時期(1914年に帝国の皇位継承者が暗殺されるサラエボ事件が起き、同年第一次大戦が勃発)に欧州の中心だった都――という背景情報を知っておくと、描かれる状況やエピソードをある程度理解する助けになるだろう。
エマ・ワトソンを深刻にした感じの若き帽子職人イリスは、亡き両親がなぜ高級帽子店を手放すことになったのか、存在も知らなかった兄がどこにいるのか、真実を求め街をさまよう。華麗な帽子と衣装、瀟洒な帽子店や貴族の邸宅の内装など、ディテールは精緻に美しく描かれるが、全体はぼやけて曖昧だ。その時何がどういう理由で起きたのかを後世の視点から客観視するのではなく、イリスと共にリアルタイムで体験させることが、監督の狙いなのだろう。国の黄昏に、そうとは気づかないまま飲み込まれていくのかと思うと、ただただ怖ろしい。
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