「女王陛下の孤独」女王陛下のお気に入り 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
女王陛下の孤独
夫も子も居ない老女王陛下・アンの重積と孤独がくっきりと
浮かび上がる映画だった。
まず時代背景からみてみよう。
時は18世紀初頭のイングランド。
主役のアン(イギリス女王)の在位は1702年〜1707年である。
ずいぶんと足を引きずり移動は車椅子と老人のイメージだが、
40歳になるかならないかの年齢なので驚く。
足は痛風を病み、議会の書類を読むのも虫眼鏡を近づけている。
近視なのか弱視なのか白内障なのか知らないが、
書類をみて難儀をしている様子は気の毒になる。
そこにつけ込むのが幼なじみで親友のマールバラ侯爵夫人サラである。
2人の見た目の年の差が酷くはないか?
マールバラ侯爵夫人を演じるレイチェル・ワイズは見た目38歳くらい。
対してアン女王の見た目は昔の人と見積もっても60歳には見える。
レイチェル・ワイズは頭脳明晰で女王とタメ口。
タメ口どころか命令口調。
どっちが女王だか分からん程だ。
イギリスはフランスと戦争中である。
サラは増税して兵力を増やす考え。
対して男ども、大臣たちはフランスとの和平の道を探っている。
サラという女は好戦的で男たちが戦死しようと屁ともおもっていない。
それでアン女王はサラの言いなりになるのです。
男社会で育っている私は、何故イギリスでは女性を最高権力者に置き
彼女の意志で戦争の存続を決定しているのだろうか?
と怪訝な気持ちになる。
女王陛下が最高権力者であるメリットとは?
なんであろうか?
議事録もろくに読めず、内容も把握しない学問のないアン女王。
それが男どもの傀儡女王ではなくて、もっぱらサラの意向を気にしている。
アン女王陛下が、そこらのおばさんにしか見えない。
映画から比較して行こう。
ケイト・ブランシェト主演の「エリザベス」及び続編の
「エリザベス・ゴールデン・エイジ」での
エリザベス一世の在位が1533年〜1603年。
そして、
「ふたりの女王メアリーとエリザベス」
この映画のエリザベス一世はケイト・ブランシェトと同じ人である。
この映画のアン女王はエリザベス一世から100年後。
鉄砲はあるけれど、電気はない。蝋燭の灯りである。
サラが女王を盾に権勢を奮っている時、サラの従姉妹で
没落した貴族の娘アビゲイル(エマ・ストーン)が召使に雇われる。
サラの口利きだ。
下働きだったがある時女王に薬草を届ける。
これが愛風に良く効いたのだ。
次第に女王は命令ばかりするサラに嫌気がさして
アビゲイルを寵愛するようになる。
男たちは巻き毛の長髪のカツラを被り、
マスカラや頬紅で化粧をしている。
アヒルの競争や、裸の男に果物をぶつける遊びに興じている。
男性の主要キャストとして野党党首のハーレー(ニコラス・ホルト)
など若くて美しい男たちが登場するが、
この映画では男たちの影が薄い。
サラとアビゲイルの女王を真ん中にした権力闘争。
綱引き、
これこそが主眼の映画なのである。
そしてアビゲイルは汚い手を使う。
サラに薬草を茶に加える。
白馬にまたがり疾走して家に戻る途中で、
サラは気分が悪くなり落馬。
長い距離を引き摺られて大怪我を負う。
その間にアビゲイルは貴族と結婚を
慌てて決行する。。
もちろん女王が結婚の証人になり多額の持参金を貰う。
しかもサラと夫のマールバラ侯爵が共謀して国庫から金を
横領していると嘘の告げ口をする。
それをキッパリと否定したはずの女王は次の日には考えを変えて
マールバラ侯爵夫妻をイギリスから国外追放にするのだ。
貴族に返り咲いたアビゲイルは女王の世話にも身が入らず、
昼から酒浸り、女王が可愛がっているウサギを踏み潰そうとする‼️
17人産んだ子どもを全員失ったアン女王。
演じるオリヴィア・コールマン。
映画人としては無名な方だったが、この映画で一躍脚光を浴びて、
この役でアカデミー賞主演女優賞を獲得。
その後も「ファーザー」や「エンパイア・オブ・ライト」でその実力を
確かなものとしている。
このアン女王、見た目も呆け者のようで精神不安定で自信がない。
側近のサラやアビゲイルに依存してしまう。
しかし馬鹿ではなく
【フランスとの戦争をやめて和平へと舵を切る】
呆け者なのか賢いのか判然としないが《女王陛下の孤独と重積》だけは
痛いように浮かび上がる。
そして監督のヨルゴス・ランティモス。ギリシャ生まれの50歳。
「ロブスター」
「聖なる鹿殺し」で、カンヌ・ヴェネツィアなどの賞を総なめ。
先行上映もされ1月26日公開の「哀れなるものたち」も既に
ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受賞して、
ノリに乗っている。
王家の血筋を守るためとはいえ、17人もの子を産んだことに驚かされますね。結局は子供に恵まれず王家はアン王女を最後に終焉を迎えたわけですし。王だったら側室とかに子を産ませるんでしょうけど。
琥珀糖さん、コメントありがとうございます。心機一転というか結果的にそうなっちゃったー!です。でも映画好きだし、皆さんのレビューと込め読むのが楽しいので続けます。気がついてくださってありがとう!ことしもよろしくね!
みかずきです
共感ありがとうございます。
>【フランスとの戦争をやめて和平へと舵を切る】
呆け者なのか賢いのか判然としないが《女王陛下の孤独と重積》だけは
痛いように浮かび上がる。
仰る様に、ココが、本作の核心だと思います。
普段は、二人の女性臣下に操られているようで、賢いのか否か判然としませんが、肝心なところでは毅然とします。
それが、≪女王陛下の孤独と重責≫なんだと推察します。
リーダーシップの取り方の一つだと思います。
では、また共感作で。
ー以上ー