「大仰なイメージとは裏腹な艶笑劇」女王陛下のお気に入り MPさんの映画レビュー(感想・評価)
大仰なイメージとは裏腹な艶笑劇
権力はあるものの、孤独と欲求不満の極みにいる英国女王を挟んで、そんな女王を影で操る幼なじみと、没落貴族の娘が、愛情と権力を奪い合う。欲望を剥き出しにした女たちの愛憎劇を、側で見守る男たちはみんな、まるで去勢されたかのようだ。ヨルゴス・ランティモス監督はえげつなく、時に笑える宮廷内ドラマを、特にローアングルから嘗めるようにとらえて、観客を押しつぶすような圧迫感を演出している。誰も決して傍観者にはしないという意気込みが、特異なカメラワークからはひしひしと伝わってくるのだ。それは、3人の女優たちの演技にも言えること。これほどまでに人間の醜さと、それ故に漂うおかしみを体現したアンサンブルはないと思わせるほどに。特に、女王を演じるオリビア・コールマンの怒りと嘆きが交互に現れる感情演技は一見に値する。フェミニズムを極端な形でテーマに据えた意欲作。大仰なイメージとは裏腹に、けっこう笑える艶笑劇なので、気楽にシートに身を埋めて欲しい。
コメントする