「時代劇を観ながら未来を思う」女王陛下のお気に入り とえさんの映画レビュー(感想・評価)
時代劇を観ながら未来を思う
今年のアカデミー賞で、9部門10ノミネートという最大の目玉作品
これがめちゃくちゃ面白かった
18世紀のイングランドを舞台に、王女と彼女に取り入る侍女たちの攻防を描く
18世紀を舞台にした歴史劇と聞いたら、歴史的な知識が必要だと思う人がいるかもしれないが
この映画については、必要ないと思う
なぜならば、私はこの映画を観ながら未来を感じたからだ
いや、日本では未来でも、既にヨーロッパでは、こういう時代が来ているかもしれない
アン王女(オリヴィア・コールマン)は、あらゆる出来事の判断を侍女のサラ(レイチェル・ワイズ)に委ねていた
そのため、王女の寵愛を受けたサラは絶大な権力を握っていた
そこへ、サラの親戚で貴族から没落してしまった家の娘 アビゲイル(エマ・ストーン)が現れる
そこから、彼女たちの三角関係が始まるのだ
彼女たちの立ち位置はとてもわかりやすい
欲望だけで生きていて、自分一人では何もできないアン王女と、
知識と経験で王女を操る熟女のサラ、
そして、若さを武器にするしたたか娘のアビゲイル
この三人の腹の内を探りながら観るのが、とにかく面白い
相手の動きを読み、その一歩先にいた者が勝つ世界だ
しかし、それを男性に置き換えて考えてみると、
バカ殿と、そんなバカを手なづける熟練の側近、そして、そんな二人の間に割り込もうとする若手の野心家
そんな話は、これまで何度でも描かれてきた
この映画では、男女の立場が完全に逆転している
それは、女性上位の社会を予言していると思った
現在、または近い未来、女性が国のトップに立った時、その周りでは、どんなことが起きるのか、そして男性たちは、どんな扱いを受けるのか
これまでの時代劇とは性別が完全に逆転していて、そこが、この映画のとても面白いところだった
そんな世界の中で、王女と、サラと、アビゲイルが、どう絡んで、どこへ向かっていくのか
その先の展開が何一つ読めず、ハラハラドキドキしながらラストまで、一気に観てしまった
これが例えば、
トランプ大統領がアン王女で、その側近たちが全員女性だったら、ホワイトハウスで何が起きているのか
この映画で起きていることに照らし合わせてみると
トランプに任せていていいのかな…
と考えてしまう映画だった