この世界の(さらにいくつもの)片隅にのレビュー・感想・評価
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選ばなかった人生は、醒めた夢
すずさんが、呉の嫁ぎ先で「馴染めない」と感じて、実家のある広島に「帰りたい」と思う場面。
居心地が悪かったのは北條家ではなく、ますます厳しくなっていく戦時体制にではなかったか。帰りたかったのは、実家ではなく戦争がなかった時代にではないか。
意識下では「こんな世の中は嫌だ」と心が叫んでいるのに、周囲が当然のように戦争を受け入れているから、それが望郷の念に形を変えて出てきたのではないだろうか。
と、そんなことを思った。
すずさんリンさん周作さんに再会できて嬉しくなりました。世界は少し広くそして深くなっています。
前作から3年過ぎて、ようやく完全版の公開です。観ないわけにはいきません。
と意気込んだものの…
前の作品は、私にとってものすごく完成した作品でした。
カントク自身の手によるとはいえ、それに手を加えられることで、
いったいどんな作品になってしまうのかと
期待と少々の不安を持って鑑賞しました。 前置き長くてすいません
で。
余計な心配だったようです。
前作同様に、気付いたらエンディングでした。
追加されたカットは
2~3秒程度のシーン追加もあれば、数分単位の追加もあったと思います。
聞いていた通り、リンさんを中心としたエピソードが多かったです。
リンさんと周作さん、二人が出会ったきっかけも分かりました。
私の中での「周作さん=遊び人なの?」」の疑惑も晴れました。 冤罪~
すずさんも、ぼーっとしているだけじゃない熱い血の通った女性と分かりました。
全体を通して、前作よりもストーリーが分かりやすくなったと思います。
前作を観ている方、ぜひ鑑賞してみてください。
観ていない方、この機会にぜひ鑑賞してみてください。
充実した2時間48分でした。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
12/22 タイトル等、一部を加筆訂正しました。
評価自体はまったく変わっておりません。
(こんな隅っこの訂正コメントまで見るひといないかな と思いつつ)
人の心は複雑で醜く、美しい。
2016年に賞レースを席巻したこの世界の片隅にの「長尺版」いくつもの片隅に。東京映画祭の先行上映で観てきました。未完成版です。
※公開版も鑑賞済みです。加筆します。
東京映画祭版から再修正された場面もありました。
こだわりたるや、見事です。
……胸が痛い。
登場人物が皆、善良と言われていた前作この世界の片隅に、しかし、
すずさんは意外と勘が鋭く、人並み、またはそれ以上に嫉妬深く、主人の過去カノにプレゼントを突き返す強さがありました。
その優しい主人は遊郭の女に入れあげた過去があり、
人が良さそうな叔母は人前でズケズケと配慮のない言葉を並べ…
前作では見られなかった人の心の複雑さ、ややこしさを感じる場面がところどころに追加されています。
さらに描かれる5つの「死」
主人公のひとり、りんさんは理解ある友人、大人なようで、それは実は諦めが達観に繋がっているだけで、これがまた観ていて辛い。彼女は言葉通り女街を出る事なく空襲で命を落とし、彼女の同僚ですずさんに口紅を託したテルは呆気なく病で死に、最愛の妹は父母の死と、自らの死と必死に向き合い、知多さんはすずさんの想いを目の当たりにしたことが命取りに。そして慕ってくれた姪も。。
脆い、あまりに弱い彼女たちの毎日の暮らし。
それでも時に笑顔溢れる暮らし。ささやかな日々、それらいくつもの片隅が、べったりと真っ黒に、戦争に塗りつぶされていく。
前作で、私はりんさんもすみちゃんもきっと生きていると考えていました。
しかし、いくつもの片隅にを観た後はそうは思えなかった。きっと、彼女たちは皆死んだ。戦争に殺された。
義理の姉との関係に特化されていたこの世界の片隅に、とは違い、りん、テルらの物語も交えた多層的な物語に生まれ変わりました。
それがややこしく、テンポが悪く感じる方もいると思います。一度観て整理できなかったら原作を一読頂ければと思います。
いくつもの痛み、苦味、辛さ。そしてだからこその人の美しさ。
こちらもまた傑作。この世界の片隅にとは別の作品としておすすめします。
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