劇場公開日 2019年12月20日

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「好き嫌いはあるが、間違えなく名作と言える作品。」この世界の(さらにいくつもの)片隅に スキピオさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5好き嫌いはあるが、間違えなく名作と言える作品。

2020年3月4日
iPhoneアプリから投稿

2016/11に公開された映画で、約40分追加されたバージョン。3時間近い大作になっています。恐らくアニメ映画では過去最長なのでは?2016年版の「伏線回収版」という感じです。前回ではサラッとしか出てこなかった遊郭のリンが、周作とすずの関係に大きな影響があったことが分かる内容になっています。

テーマを荒っぽく分類すると「戦争の悲劇」「女性の生き方」「すずの居場所」になります。このうちの「すずの物語=居場所」の話がハッキリするのが本作。2016年版は、すずが嫁ぎ先に馴染まない部分として、小姑のような姉との軋轢と水原君への未練っぽいとこだけでしたが、リンの登場でより複雑な感情が生まれます。

それと「ヒトの命の儚さ」なのかな。儚さと軽く断じてはいけないんだろうが、最初に出てくる言葉は、儚さ、だな。戦争作品だからたくさんの登場人物が死にます。悲しむ死もあれば、え?死んだの?というもの、お兄さんの戦死のように「良かった」と思え自己嫌悪を得る死。追加映像のテルちゃんも、あ〜あ死んじゃうんだなぁ〜、って。
そのあたりを最後の戦争孤児を連れて帰ることで救済しているのかな。あの子は晴美とリンと水原君の供養なんだよね。

でもこの映画の凄いのは、こういう「テーマ」ではないと思う。「リアリティ」にこそ、この映画の凄みがあると思います。背景、動作、心理描写といった作面だけでなく、ストーリーやキャラクターの感情表現の、どこにも嘘っぽさがない。最初のすずが海苔の荷物を壁に押し付け担ぎ直す動作、海軍の軍艦の書き方、枕崎台風の被害の大きさ、すずがリンへは情愛をもって接するのに周作へは嫉妬するところ、みんなスッと腹オチするんです。

私如きのニワカの映画・アニメファンが言っても説得力はないけど、一言で感想をまとめれば「好き嫌いはあっても、文句のつけようのない作品」かな。
実は私は苦手なジャンルなので、正直「好き」ではありません。でも、アニメーションの素晴らしさと、戦争や生きることの難しさを後世に伝える「名作」であると思います。この作品は是非、子供さんにも観て欲しいです。

おでん