「とことん逞しく」この世界の(さらにいくつもの)片隅に ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
とことん逞しく
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168分の長尺が、自分にはまったく長いと感じなかった。
まるで新しい作品をもう一本観ているような、とはいえ
オリジナルの記憶がまだ新しいことで再発見にも至れる。
すず、リン、径子のこれまでの人生とこれからの運命を
丹念に掘り下げてやや大人版となった今作は、鑑賞者の
年齢や立場等で観る角度がかなり違ってくる。一女性が
たどる成長驒として、数奇な運命を振り返るきっかけと
して、現在の自分が感じるありのままを今後もこの作品
で追体験できることだろうと思った。
個人的には、径子の印象がかなり変わった。
意地悪な義姉でなく数々の不遇に見舞われた女性だった。
それでも自分で選んだ人生だから悔いはないと言い切り、
晴美を失った後すずに広島行を促す姿には涙がこぼれた。
すずが周作への愛を確実なものと認識する水原やリンの
エピソードでは、腹を立てて夫を罵る姿が印象的だった。
そうそうもっと想いをさらけ出せ、すずさん!と笑った。
喧嘩して言い合いを重ねて夫婦はどんどん成長するもの。
リンは周作の名書とお茶椀とすずの描いた絵を、きっと
死ぬまで大切に持っていただろう。
自分の居場所を最も分かっていたのは彼女に他ならない。
世界の片隅に活きている女性たちはとことん逞しいのだ。
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