「個としてのすずが、よりダイナミックに立ち上がってくる」この世界の(さらにいくつもの)片隅に ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
個としてのすずが、よりダイナミックに立ち上がってくる
3年前、私は主人公すずさんのことをすっかり理解し尽くしたつもりになっていた。あの頃の自分に言ってあげたい。人の内面はもっと広くて深く、そう易々と把握できるものではないのだと。これは「もう一歩」だけ心の内側に踏み込んだ物語だ。
オリジナル版では、すずさんというキャラクターがあえて柔らかいタッチで描かれていたように思う。それゆえ観客は、当時を生きた名もなき人々の人生や青春や愛すら彼女の輪郭に重ね、過ぎ去りし日々に想いを馳せることができた。一方、本作では、もっと描写やエピソードを尽くしてじっくり心の言葉に寄り添うことで、「個としてのすず」がよりダイナミックに立ち上がってくるようになった。すずさんだけではない。リンとケイコも同じ。ある意味これは「3人の女性たちの物語」なのだ。作り手と観客が深い絆で結ばれたからこそ成し得たこの異例の試み。私はいつしか心底圧倒され、すずさんのことが益々好きになった。
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