「「大和」の悲しすぎる運命」アルキメデスの大戦 ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
「大和」の悲しすぎる運命
冒頭の「大和」の生々しく悲惨すぎる沈没に始まり、エンディングに至るまで、緊迫感の途切れない飽きさせない作品だった。戦争の危機に若き天才数学者が挑戦するという異色の設定が効果的だ。櫂直の真っすぐさを菅田将暉が好感の持てる演技で魅せている。彼の信じられないような数学の能力、本気度、思いの正しさが彼の内外に共感を呼び不可能を可能にしていく姿は実に爽快だ。
この作品は、通俗的な言い方をすれば、「理想」と「現実」の対決がテーマである。櫂直の理想主義の戦いは、周りを巻き込んで一旦は成功したかに見えたが、結局戦争を阻止することはできなかった。軍の本質は、力を誇示することであり、最終的には戦争に勝つことである。その強大な現実の力の前には、理想はあまりに無力だと思い知らされる。映画の中では直接語られないが、政治の無力さだったり、「国民の声」という世論の愚かしさに思いを至らされる。
異色のアプローチで戦争の本質を描いた作品として記憶に残るであろう。
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