「大人味の効いたすれ違い恋物語」マチネの終わりに みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
大人味の効いたすれ違い恋物語
久々に観る大人味のラブストーリーだった。終始、甘美なギターの音色をBGMにした、典型的なすれ違いラブストーリーだったが、すれ違い方が現代的でもあり、古典的で泥臭くもあり、本作のポイントになっていた。
天才クラシックギタリストの蒔野聡史(福山雅治)は、40歳代になって演奏者として行き詰っていた。彷徨っていた。聡史の女性マネージャーは、聡史に秘かな想いを寄せ、聡史を懸命に支えていた。そんな時、聡史は、偶然、フランス駐在のジャーナリスト・小峰洋子(石田ゆり子)と出会い、お互いに運命的なものを感じる。その後、フランスで再会した二人は、お互いの想いを確かめ合う。そして、洋子は、帰国して聡史に会おうとするが、突発的な出来事で二人の心は次第にすれ違っていく・・・。
聡史役の福山雅治は、『ガリレオ』の主人公を彷彿とさせる理屈っぽさで、音楽家らしいストイックさを表現している。音楽家として彷徨しながらも、洋子を想う一途さを好演している。流石にギター演奏シーンは見応えがある。
一方、洋子役の石田ゆり子は、今まで静かな役が多かったがジャーナリストとしての毅然とした姿もカッコ良い。年齢を感じさせない美しさで、聡史への秘めたる想いを好演している。懸命に自分を抑えようとする日本的な佇まいが切ない。石田ゆり子のイメージが活かされている。
本作のポイントは、二人のすれ違い方である。突発的な出来事だけが二人の心を混迷させたのではなく、人為的なものが強く介在している点が本作の特徴である。泥臭く日本的であるが、醜悪にならないのは、福山雅治と石田ゆり子の役者としてのクリーンなイメージが効いているからである。
ラストシーン。二人が駆け寄り始めるシーンで終わってしまう。肝心のその後は描かれない。観客の想像に任せてくれる大人の映画らしいエンディングだった。
本作は、運命に翻弄されながらも、愛を求め続けた、大人味のラブストーリーである。
コメントそして共感ありがとうございます。
お褒めの言葉、素直に嬉しいです。励みになります。
みかずきさんは本当に語彙が豊富で表現力の多彩さに
いつも驚かされます。
それではまた共感作で、よろしくお願いします。