「難しいストーリー」海獣の子供 SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
難しいストーリー
五十嵐さんの作品では、はなしっぱなし、そらトびタマシイのあたりの作品が好き。海獣の子供の原作は、はじめのうちだけ読んでいたので、最後どうなったかは知らなかった。
映像は素晴らしいと思った。五十嵐大介の独特な画風、世界観を最新のCG技術を駆使してできるだけ再現しようとしている。
自然の雑多さ、わびさび、空気感、食べ物へのこだわりが大事にされている。
作品全体の評価は難しい。少なくとも僕は大きく感動できなかった。人によってはすごくはまるのかもしれない。
五十嵐さんの作風は、既存の漫画の価値観にはまらないところが魅力と思っているが、本作はメジャー作品になろうとして結局なれなかった感じにみえてしまう。
後半の展開は意味不明で、結局「祭り」とはなんだったのかわからないまま。原作を読めば解明できるのだろうか? 最後がわけわかんなくなるところは2001年宇宙の旅に似ているように思えるが、2001年の方は、スターチャイルドという謎を提示している分、まだ考える対象がある。海獣〜では結局何も変わっていないように見えるので、結局この一連の事件はなんだったのか、という感想になってしまう。
理屈でなく感じろ、的な作品であることは間違いないが、にしてはストーリーの核心部分を結局言葉で説明してるかんじで、むしろ理屈っぽく見えてしまう。
隕石が精子で、海が卵子である、というのを言葉ではなく映像で表現してほしかった。
科学とか言葉では人は宇宙全体を理解できない、ということが本作のテーマの一つだと思うが、ダークマター、ダークエネルギーの話とか、DNAや原子のイメージとか、超深海の生物のイメージとか、逆説的に我々のもつ宇宙のイメージというのは、結局科学の知見や視点を根拠にせざるを得ないんだな、ともやもやして、変なところで冷静になってしまった。
序盤の友達を怪我させてしまったところ、「私は悪く無いのに」という気持ち、がストーリーにどう絡むのか気になっていたが、最後に体裁だけ伏線回収した感じになってしまってるよう…。
映像はとにかく良かった。映画化に向いた原作は他にもたくさんあると思うので、これからも五十嵐作品が映画化していってほしい。