劇場公開日 2019年6月28日

「香取慎吾の隠された魅力」凪待ち ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5香取慎吾の隠された魅力

2019年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

とにかく香取慎吾をこの役に起用し、彼の隠された魅力を引き出したことがこの映画最大の功績であり、魅力の核だろう。ギャンブル依存症で良いところは一つもないような男だが、見捨てることのできない人としての魅力を放っている。こういう駄目人間って確かにいるよなというリアリティを強く感じさせる、大変説得力ある芝居をしている。
人生をやり直すために引っ越した石巻で、悲劇に巻き込まれ、同調圧力の強い田舎町に馴染めず、殺人犯だと噂される。強くありたいと願うのに、強くなれない、環境のせいにしていつでも言い訳を考えてしまっている。震災から復興のためにがんばっている東北の町と人生に絶望した男の喪失感が重なるようで対比的だ。失われたものは帰ってこない、それでも前を向く町と、喪失感から逃れられず前を向くことができない男。映画はほんの少し、男の再生の可能性を見せて終わる。人はだれもそんな強くない、それを認めることが強くなる第一歩なんだと思う。

杉本穂高