「美しい世界観に圧倒される。」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
美しい世界観に圧倒される。
ドイツ圏らしい名前、国名、地名。
時代は第一次世界大戦か?第二次世界大戦頃。
架空の国、架空の時代の話しです。
原作は暁佳奈のファンタジー小説。
京都アニメーション大賞小説部門初の大賞に輝いた。
京都アニメーションの誠実な仕事ぶりに改めて敬意を現します。
主人公はヴァイオレット・エヴァーガーデンという名のドール。
ドールかと思っていたらエヴァーガーデンは人間の女性であると。
ファンタジー系のライトノベルですが、
しかし作品も登場人物も一様に芯が強い。
それはエヴァーガーデンの性格でもあるけれど、ストーリーの根幹に
観るものを強く説得する力強さがある。
「手紙の代筆」
これがキーワードだけれど、幼くして亡くなることを知ったエリスの
父親と母親そして弟に残した手紙。
エヴァーガーデンが代筆したのだけれど、
本当に胸に刺さる。
この映画は劇場版なので、エヴァーガーデンとギルベルトの出会いや
戦争に行った経緯そして戦争体験は過去のものとして、
語られる位で詳細は分からない。
きっとドラマでは経緯が細かく描かれているのだろう。
そして戦争の傷跡。
《戦争をすれば豊かになると信じていた》
この言葉はそっくりロシアとウクライナの戦争に当て嵌まる。
まさか遠く日本の暮らし向きまでが大きく影響されるとは?
戦争の悲惨は、
エヴァーガーデンは両手・両腕を半分から下を失う。
手紙の代筆のタイプライターを打つのは精巧な義手。
ギルベルトは片目と右腕を失い心を硬く閉ざす。
そして生死もエヴァーガーデンに告げず孤島に引きこもってしまう。
しかしある事からギルベルトの居場所が分かりエヴァーガーデンは
CH郵便社の社長のホッジンズと共に島に逢いに向かう。
ギルベルトの拒絶にあい島を去る2人に、居た堪れず追う
ギルベルト。
そこから先は未来から過去への回想になります。
省略や過去と現在そして未来の時間を縦横に駆使して、
「手紙の特別な意味」
「永遠の愛」
特に永遠とは過去と未来を繋ぐ手紙のようなもの。
この映画の世界観は大河ロマンとして独特で美しく胸を打つ。