「良薬口に苦し」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
良薬口に苦し
題名から庭づくりの話かと勝手に思い、綺麗な花々に癒されるのも悪くないと鑑賞したのだが、妙な境遇の女の子の名前でした。日本の作品なのにヨーロッパが舞台のお話、もっとも池田理代子さんの「ベルサイユのバラ」もそうでしたね、歴史的文化や街並みなど女性の感性として惹かれるものが多いのでしょう。
主人公の職業は代筆業、シーエクスピアの時代からラブレターの代筆などエピソードには事欠きませんが、映画では愛する家族への遺言的な使われ方が多かった。口に出してはためらうことでも手紙なら素直な気持ちを伝えられるでしょうとも言っていた、それが手紙の効用の一つであることに異論はありませんが、要は言葉を選ぶ過程で気持ちの整理がつくことでしょう。
昔、テレビで聞いたユダヤ人の老婦人の話ですが、アウシュビッツに送られる列車の中で幼い弟が片方の靴を失くしていたので、「あんた馬鹿ね、靴をどうしたの」と責めてしまった、それが弟と交わした最後の会話だったそうだ、感情の為すがままに発した言葉が自分や相手を傷つけたりトラウマになることは映画でも示されていましたね。
バイオレットは孤児、軍人兄弟に引き取られ女性兵士になって戦争で両手を失うというなんとも過酷な運命、それでも文才を活かして義手でタイプライターを打つという健気さはなんとも痛ましい。
映画はバイオレットとギルバートのラブロマンスのようだが、乱暴な兄からバイオレットを庇い、読み書きを教え大事に育ててくれた弟ギルバートを慕う気持ちは分かるが所謂、男女の恋愛感情とは違うのではないかとも思う。要は、簡単ではないものの、コミュニケーションの意義や大切さを伝えたかったのでしょう。
ホモサピエンスの根源的なテーマに真摯に取り組んだ点では頭が下がるがなんとも気の滅入るエピーソードばかり、良薬口に苦しと言うことでしょうか・・。