「適正が必要」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン dyanさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5適正が必要

2020年11月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

アニメは割と見る方で京アニにも昔から親しみがありますが、前知識一切なしで観ました。

ただ…25歳の男と14歳の少女の恋愛ストーリー(作中現在は29歳と18歳)だったのですが、正直これを知っていたら見なかった。
劇中、いきなり引き取って育てていた子供に告白するからびっくりしました。
しかも年齢差を問題視するような流れはほとんどなく、おおよそただの「男と女」として描いてる。
年齢差の恋愛作品を全て否定する訳じゃないですが、今の時代、せめて観てる側の驚愕や疑念を代弁するようなフォローが欲しかった。
その後どんなに情緒的で感動的な場面がきても「でも25で14に告白した男だしな~」と思えて台無しです。
展開への期待は消え、あとは美麗な作画を観察するのみの時間でした。
あと、登場人物の視点の切り替わりや回想が多いため、物語の方向性を理解するまで時間がかかったというのも入り込めなかった原因かもしれません。

でもこの作品の世界って色んな意味で浮世離れしていて、そもそもそういうトンデモ設定を是としてカタルシスを得る価値観なんでしょうね。
純真無垢で超人的な悲劇のヒロイン設定と、主役とはいえあまりにその子中心に動いてくれる人間関係。
まともな教育を受けていなかったはずの元孤児で、14歳で腕を失い、精密機器であろう義手のリハビリを経て、18歳にはライター的な仕事で世界的知名度を得ているって…一体職歴何年?業界はどうなってるんだ?しかも18歳で引退するのにその後も伝説として残り続けるほどの活躍が可能なのか…?
こんなことを考えてしまう自分はそもそも観るもの間違えてたレベルなんだと思います。
逆にそういった方向性が好きならばこれ以上ないくらいたまらないのでしょう。

主役の少女を目で見るだけで「楽しい」と思えるかが、この作品に馴染めるかどうかの分かれ目な気がします。
前半、ひたすら主人公がどんなに優れていて、どんなに哀れで、どれほど美しく愛し尊ぶべきかという説明が続き、それに合わせ京アニ作画もあますところなく本領を発揮します。
恐ろしいほど細かく描き込まれた髪、もったいつけて動くキャラ、生きてるように揺れる服の裾。
これらの技術は素晴らしく、美しい少女を愛でる作品の方向性と合っていて相乗効果が高いです。

病気の少年のくだりでは過去最高に涙が溢れたのですが、本筋にはあまり関係のない部分かと思うので作品への評価には繋がりませんでした。(この作品がこうだから泣けた!というよりかわいそうなペットや子供の動画を見たら涙が出てくる現象に近いもの)

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dyan