「少佐がこちらが望む程の器を持っていない」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン 映画はたまに見る程度さんの映画レビュー(感想・評価)
少佐がこちらが望む程の器を持っていない
一番綺麗なシーンであまりに感情移入出来なくて、折角速足でテレビ版と外伝を押さえて公開〆切間際に飛び込んだのが何だかとても徒労に感じてしまった。
これは何でだろうとあの超絶美麗な泣き部分でどうにも疑問が止まらなくなってしまいました。
何に感情移入出来ていないのか。
自分は4年かけて成長したヴァイオレットを少佐に認めて欲しかったんだ。でも、少佐がその器がないネガティブナルシストで、あのシーンでも「俺には」「俺では」から始まったから失望しているんだ。
会ってあげてよ、会ったらあの頃のヴァイオレットじゃなくてびっくりするんだからと思っていたから、会った時にあまりにヴァイオレットの話をしなくて拍子抜けしてしまったんだ。
「本当に...君なのか?」みたいなの、欲しかった。欲しかったのよ。まず髪型変わったところを誉めなさいよ!
あとは、少佐が会いたくない動機付けが、ヴァイオレットの会いたい気持ちに対して弱かった。もっともっとキリングマシーン描写が必要でしたね。リモートワークの件は蛇足に思えたので、その辺りの全てをもう少しカジュアルな話に置き換えて、少佐の旅部分をもう少し厚くしてPTSD感を補強して欲しかったな。
あと、島で農家の単純労働で罪を忘れて、なんかちょっと微笑んじゃったりなんかして。ならまあ会わないのも分かるけど、島にいても辛くて辛くて、毎日暗い気持ちで。って何か違わないか。安息の地なんでしょう?島の生活ぐらいは楽しんで欲しいよ。島の描写も寒風吹きすさびながらも晴れている日ぐらいはもっと光の粒に溢れているべき。ライデンシャフトリヒの港よりは流石にきらきらしていないと…そう考えると、市長の件も大佐にアームロックかました部分も、労力の無駄遣いのように思えてくる。
少佐の描写があまりに不十分で矛盾も多い。作る方も可愛いヴァイオレットを沢山描きたかったのは分かるけど、この作品は構造としてはキャラものではなく、ヴァイオレットの成長を軸とした物語だったのでは。4年間の成長の総決算として少佐に会うのだから、少佐側の辻褄は合わせて欲しかった。
加えて言えば、少佐のネガティブナルシストをある程度排した上で「主従関係から一歩進んだ関係」まで見せて、本当に成長した姿を見せて欲しかった。何だか感極まっちゃって意味のあることは何も言ってなかったように記憶している(ただし、例の場面はスクリーンは見てたけど完全に気が散ってたので「ヴァイオレットちゃん可愛い」ぐらいのことしか思ってなかった)けど、弱い少佐も含めて評価して肯定して一緒にいましょうという、逆に少佐のメンタルを補填するようなところまで到達して欲しかったと思う。そもそもあの絶対的主従関係が怖いほど気持ち悪く感じてたのは少佐の方だし。というかこちらもアレやっぱりちょっと怖いと思ってる。依存的な恋人のメンタルなんだよなぁ。
作品のピークはテレビシリーズの手紙50年分書いて号泣するヴァイオレットだったなぁと思ってしまう幕切れでございました。残念。
追記
みんなマジでTV版全部観た後にこれ観て感動してるの?不思議なもんだなぁ。
少佐の主観で考えると、描写された部分だけでは全く感情が繋がらないと思うけど。
何に感動したのか教えて欲しいよ。
自分は空白時間を超えてヴァイオレットのあまりの成長に衝撃を受けた少佐が、自らの罪の意識をそのギャップが十分に癒して、過去を振り返りながらもヴァイオレットとの新しい関係を築くような話を期待していた。その過程で一回突き放したのであれば、あのクライマックスで全然問題なかったと思う。
こいつをあのクライマックスに持っていくために必要な変化、作中では何も起きてなくない?
反射で泣くなよ。自分は腹立たしいです。