「ヴァイオレット(愛)の名にふさわしい結末」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン mokusin takataniさんの映画レビュー(感想・評価)
ヴァイオレット(愛)の名にふさわしい結末
TVシリーズ全14話+外伝を見てから本劇場版を観賞。初めは京アニへの応援と
見るなら作品内容を知った方がおもしろい位の気持ちだったがヴァイオレットが
依頼人と手紙を通して心が成長していく様とTVシリーズ第8~9話でのあまりの
痛ましさになんとか幸せになって欲しい思い一杯、ようするにドハマりした状態
で劇場版を見る事になった。
まず知識あり観賞は正解だった、TVと外伝の要素が随所に差し込まれるが
全部わかるから疑問符も頭に上がらず、本映画での時間経過の変化を楽しめた。
冒頭はTV10話で登場した少女の家、おそらく数十年後を舞台に彼女の孫娘が
エヴァーガーデンの足取りを辿る所から始まる。本作品は3つの物語が混ざり合い
進行するが、孫娘の物語は素直になれない気持ちを『手紙なら伝えられる』を知る
のと未来でエヴァーガーデンがその後どうなったかを視聴者に見せる役割を
担っている、全体で見れば非常に短いがTV1話を彷彿させる手紙が舞う演出と
壮大な音楽も相まって非常にお洒落な導入となっている、好き( ゚Д゚)b。
第2の物語は死期が迫る少年の御話、ファーストコンタクトは偉そうだが
ヴァイオレット最後の成長と、少佐と大佐、兄弟ゆえの複雑な関係を少年を通して
視聴者に訴える役を担う。訳あって休日出勤してたヴァイオレットに代筆を依頼。
宛先は両親と小さな弟、母親が残される娘に50年分の手紙を綴る話を思い出す。
そんな中で少年と重要な会話をするヴァイオレット、少佐と再会した時彼女は
『あいしてる』をすこしは理解したと言うと答える、少年は『わかるだけ?』と問うが
この時ヴァイオレットは返答できない、だが終盤の大詰め、最も感動的な形で
答えは返ってくる、流れだすBGMと相まって物凄いあざとい、でも好き( ゚Д゚)b。
最後の物語は肝心要のヴァイオレットとギルベルト少佐の御話、TVから始まった
両者のラブストーリーの結末を描く。作品を見て日は浅いが最も望んでいた終わり
を迎えてくれる、でも少佐、もう少し素直になれやと思ってしまった。『大馬鹿野郎』
は当然、でも勘繰り入る余地なしの王道ハッピーエンドだった。最高( ゚Д゚)b。
ヴァイオレットの成長は少年関連以外ない、もっともこれまで十分に成長も変化も
描写してるから必要ない、必要なのは少佐へ思いをぶつける機会だけ。
少佐に思いを馳せる姿、少佐幼少期の思い出の品を見て喜ぶ姿、TV第9話で
少佐以外の生きる理由を見つけたものの根底には少佐を引き摺り続けている。
名を貰い、知識を貰い、案じて貰い、ブローチを貰い、『あいしている』を貰った。
道具と言いつつそのじつ少佐はヴァイオレットをとても大事にしていた、多くの人の
想いに触れるたび彼女の心で少佐の存在は大きくなる一方だったろう。
少佐の話となると静かな佇まいからガラリと恋する少女になる様は心の成長を
感じつつもどうにもいじらしくて悲しくなった、そんな彼女が終盤の終盤、浜辺での
長い長い告白シーン、感情がとめどなく溢れ出し、思った言葉は出ず足は硬直
前に進めない自身の足を叩き懸命に気持ちを伝えようとするヴァイオレット
その姿は初めての告白に緊張している普通の女性、人の感情がわからず、義手も
不慣れだった少女がホント…いやぁ幸せになってくれて良かったぁ。
少佐がらみと言えば兄のディートフリート大佐がキーパーソンになっていた。
彼がいなかったら最後のハッピーエンドは起きなかったかも。相変わらずキツイ
言葉を飛ばす人物だが、戦争から月日が経ち丸くなった…というより本来の性格?
に戻ったのか弟との思い出の場にヴァイオレットを連れたりホッジンズに放った
キツイ発言に反省したりと物凄く様変わりしている。子供時代、少佐と遊んだヨット
上でヴァイオレットが嬉々と帽子の持ち主を聞くやり取りは淡々としつつ貴重な
笑えるシーン、こんな会話できるなんてTVじゃ想像つかんかった。船の上で大佐は
彼女に本音をこぼす、父親に反抗的な自分のせいで弟に家督を押し付けた後悔
でもそれは終盤で清算される、二の足を踏む弟の背中を押し出す言葉と共に。
こっちもきっちり決着が付いて良かった、それにしても大佐どうやって島に来た?
あのヨットか?だとしたら何だかドラマチックだ。
様々な事情が絡み、延期が続いた本作だが、劇場で見れて良かったと心から思う。
圧巻の作画、重厚なオーケストラ、思い伝える大切さ、安心して見届けられる最後。
生まれて初めて劇場で見た京都アニメーション、多幸感あふれる作品でした。