「高評価の人はアニメを見てる人だと思う」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン panpan00さんの映画レビュー(感想・評価)
高評価の人はアニメを見てる人だと思う
事前知識は元々無いが、映画の評判が良かったので鑑賞した。アニメを見ていないのだが、事前にYouTubeで「5分で分かるアニメ」を視聴し知識を軽く入れた。
この映画を観るなら事前知識はあった方が良いだろう。他の人のレビューだと冒頭で泣けたと言ってるが、それはアニメの話が背景にあるからで、知識の浅い人には到底共感できないでしょう。
まず、ざっくり事前知識。
ヴァイオレット・エヴァーガーデン(主人公)は幼くして軍に拾われ、そこで武器として育てられる。ヴァイオレットの育成はギルベルト少佐が行った。戦争でギルベルト少佐は命を落とし、ヴァイオレットはその時に両腕を失う。命を落とす前、少佐はヴァイオレットに『あいしている』と告げた。感情の欠落したヴァイオレットはその言葉が理解出来ず、その言葉の意味を知りたいと思い、戦争が終わると手紙の代筆業(ドール)に携わる。両腕は義手があるので、タイピングは問題なく出来る。手紙の作成を通じて人間の心、感情を学んでいく。
劇場版は3つのストーリーが走っている。
①デイジー・マグノリアがヴァイオレットの功績を辿る話
②病気で余命少ない子供(ユリス)のために代筆する話
③ギルベルト少佐と再会する話
それぞれについては下記の通り。
①デイジー・マグノリアがヴァイオレットの功績を辿る話
劇場版の作りは「永遠の0」に少し似ている。冒頭、若い女性(デイジー)は祖母が大切にしていた手紙を見つける。その手紙は曽祖母の代筆としてヴァイオレットが作成した手紙だった。(アニメで幼い子を残して死ぬ母(病気?)が、娘の為にヴァイオレットに代筆する話があって、それが感動話らしく、アニメを見た人はこの冒頭シーンだけで泣けるよう。)
最後、ヴァイオレットが過ごした離島に訪れると、ヴァイオレットが郵便切手に描かれていることを知る。
②病気で余命少ない子供(ユリス)のために代筆する話
ヴァイオレットは少年ユリスから両親、弟、親友宛の3通の代筆依頼を受ける。ユリスのお小遣いは少ないが、ヴァイオレットは特別に引き受ける。両親、弟宛の手紙は作成したが、親友宛の手紙の作成が途中のまま、ヴァイオレットは少佐と再会するため離島を訪れる。ヴァイオレットの外出中に、ユリスは危篤となりその一報が離島に居るヴァイオレットに入る。ヴァイオレットは直ぐに本土に帰ろうとするが、それでも3日掛かるので間に合わない。ヴァイオレットは本土に居る同僚のアイリス・カナリー、ベネディクト・ブルーに代筆代行を依頼する。彼女らの機転により、ユリスは親友に電話することが出来、自分の気持ちを伝えることが出来た。その直後に、息を引き取る。(このシーンは泣けます。😢。感動させるための挿入話なので、当然だけど。)
③ギルベルト少佐と再開する話
C.H郵便社社長のクラウディアは宛先不明で配達出来ない郵便物の中から、戦死したと思っていた少佐が書いたと思われる手紙を発見する。社長は少佐の生存を確かめるためヴァイオレットと共に離島を訪れる。離島では少佐は名前を変え、学校の先生をしていた。社長はヴァイオレットを集落の入口に残して一人で少佐と合うが、少佐はヴァイオレットとの再会を拒否する。少佐はヴァイオレットが両腕を失ったこと、兵士(武器)として利用していたことに罪悪感を持っていて、自信がヴァイオレットを不幸にさせていると考えている。ヴァイオレットは社長から少佐が再会を拒否していることを悟ると、少佐の家の玄関まで押し掛けるが少佐は再会を拒否する。
少佐宛に最後の手紙を残し、ヴァイオレットは本土に帰るため乗船する。少佐の目の前に兄ディートフリートが現れ、少佐はヴァイオレットが残した手紙を読む。少佐は自分の気持ちを抑えられず、ヴァイオレットの乗船した船を追いかける。大声でヴァイオレットに声を掛けると、ヴァイオレットはその声に気付き船から飛び降りて少佐の元へと向かう。再会後、少佐とヴァイオレットは抱きしめ合う。ヴァイオレットはドールを離職し、この離島で少佐と過ごして生涯を終える(と思われる)。
良かった点
・映像の美しさ
・声優陣
・ユリスの死(感動出来る)
・ハッピーエンド
次回作に期待します!!!!
残念な点
・少佐が生きていた件。劇場版作る上で、蘇らせたのだろう。蛇足だと思う。
・カトレアの服装。胸の大きい女性があんなに胸元を開けて仕事をするか?見たことある?(良かった点でもある(笑))
・エリカの必要性。アニメに出てたから出したのだろうか?蛇足だと思う。
・デイジーの必要性。ヴァイオレットの過去を追わせるにしても、登場シーンは少なく、切っても問題ないだろう。
・カマキリの死骸の必要性。少佐に右腕が無いのと同じで、カマキリの右前足が欠損していた。カマキリの死骸を見て驚く社長と冷静に情報整理するヴァイオレットを対比として描きたかったのか?
・登場人物が小さく描かれることが多く、余白が気になった。映像美を見せたいのか。余白が勿体ないと感じた。
・切手にヴァイオレットが描かれてる件。C.H郵便社の記念切手なので、社長が気を利かせたのだろうと理解しているが、それをデイジーが手にしてヴァイオレットを知るくだりは必要?何か凄い功績を残した偉大な人だとするには、18歳でドールを辞めたヴァイオレットには相応しくない。
・ボーカロイドみたいな声で歌う挿入歌が気になった。エンディングを見ていたら主題歌から全ての歌を同じ人が歌っているようだが、挿入歌だけ気になった。
・開始から一時間くらいは退屈。盛り上がるのは少佐登場かユリスの危篤くらいからで、それまでは非常に退屈で寝れる。
・少佐がヴァイオレットを追いかけるシーン。船と少佐の距離が遠いように感じるが、あの距離で声が届く?
・少佐がヴァイオレットを追いかけるシーン。海辺に茶畑が見えたけど、茶は潮風に弱いので、おかしいと思う。
工夫
少佐の兄、ディートフリート大佐は父に反発し、軍人一族の責務を弟の少佐に押し付けた。このことにより、大佐は弟の自由を奪ったと後悔している。一方で少佐はヴァイオレットを武器として育てたので、ヴァイオレットの自由を奪ったと後悔している。この後悔の連鎖がこの映画の工夫なのかな。浅いか。