劇場公開日 2019年6月15日

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「現実に基づいた創作の物語」SANJU サンジュ しずるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0現実に基づいた創作の物語

2019年6月19日
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サンジャイ・ダットについては何の予備知識もなく。最近見たインド映画が面白かったので、こちらも気になって。

スターの栄光と影。酒、薬、性。映画でもありきたりのテーマで、最近大ヒットした「ボヘミアン・ラプソディ」なんかもその類。基本あまり興味はないテーマだな…などと思いながらの観賞だったが、長い上映時間、ダレもせずに面白く見られた。

名声と醜聞、過ちと再生、孤独や無理解への苦悩などの主人公視点だけでなく、親子、友情のハートフルドラマ、マスコミに対する社会批判、謎解き要素など、盛りだくさんでありながら、胃もたれしない。
どこまでが事実に基づき、どこからが創作なのか知らないが、フィクションとしても存分に楽しめる作品になっている。
伝記記者が追う証言で半生を振り返る手法と、それによる終盤のどんでん返しの構図が巧妙。ちょいちょい、小ネタな伏線の使い方も効いている。トラの唸り、父の師匠、赤いジャケット。双子なんかラストシーンまで引っ張って。下ネタなのに、ああ、青春の思い出だなぁ…と、ジーンときてしまった。
ゴッドは現代でももっと絡んでくるかと思ったが、嫌らしくなりすぎるからか、サラッと消えていったなぁ。
結構シリアスな内容も、時には歌や踊りを交えて展開するのは、インド映画慣れしていない私としては少し不思議な感覚だが、笑いもふんだんで、重い気分になりすぎず、晴れやかな気持ちで見終えられて良かった。

最後のダンスは、個人的には不要。まあ、歌詞にあるようなテーマもキチンと本編で描ききり、ハッピーな気分で綺麗に締まったな…と思う所で、ご機嫌に歌い踊っちゃうのも、またらしくて良いし、ご本人登場で大サービスなのは解る。

結局人は見たい景色を見、聞きたい声を聞く。信じると決めたものだけが、その人にとっての真実となる。特に伝達が格段に迅速になった現代、与えられた情報をただ鵜呑みにする事は、多大な危険を孕む。
さりとて、この作品もまた、『マスコミ』の内のひとつ。
若干シニカルに捉えれば、事実や問題提起は真摯に受け止めつつ、作品自体はひとつの『物語』として純粋に楽しむのが正解…というのは、斜に構えすぎだろうか。

ともかく、ハリウッド大作の、とりあえずギャグと爆発、みたいなのに飽きがきている昨今、インド映画の個性的な感触は、しばらく癖になりそう。

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しずる