あみこのレビュー・感想・評価
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若い時にしか作れない作品がある
作家の初期衝動が強く刻印されている作品はそれだけで面白い。完成度うんぬんの前にその衝動がどこに向かうのか予測がつなかい無軌道さがスリリングだし、見たことのないものを見せてくれそうな期待感があるからだ。これはまさにそんな映画で、山中瑶子監督が二十歳の頃にしか作れなかった作品だろう。
主演の春原愛良がすごく良い目をしている。カメラをにらみつけるあの表情は、観客を吸い込む力がある。将来の展望のないあみこという女子高生が一人の同級生に恋心を抱くが、振り向いてもらえない。青春映画として当たり前のようなプロットなのに、独特さがディテールににじみ出る。スパゲッティとレモンをがっつかせてみたり。
舞台は長野をメインに後半は男の子を追いかけ、東京に出てくるあみこを描いているが、シナリオを書き切る前に東京の撮影を開始したらしい。この東京編の物語の無軌道さが、あみこの無軌道さと奇跡的にマッチしていて引き込まれる。あにこは、なぜ道行く人と唐突に踊りだすのか。意味などない、それは「純粋にそういう衝動があったから」踊ったとしか言えない。だから、面白い。意味や役に立つことなど考えない。現代への反抗として最も優れたやり方だ。
片時も目が離せないヒロイン登場
ポレポレ東中野のアンコール上映で鑑賞。
監督が19歳で撮った初長編が、世界の映画祭を回ったり、レイトショーのポレポレを満杯にしているという事実は確かにすごいが、「恐るべき新人!」みたいな看板が作品を底上げしているのではなくて、本当にちゃんと「映画」になっていて、しかも“個性”がダダ洩れするくらい溢れているのが素晴らしい。
とりわけ春原愛良という女優が演じる“あみこ”のごろりと転がしたような目つきと体格と存在感が圧巻で、本を広げて目しか映ってないカットなんかを見るとドキリとしてしまう。監督は影響やオマージュを隠す素振りもないが、圧倒的にオリジナルな魅力がある。
「こじらせ女子高生の青春物語」ならいくらでも存在するだろうが、映画のビジュアルとして片時も目が離せないヒロインが生まれたことだけでも傑作だし、それ以外にもハッと驚かされたり虚を突かれたりする瞬間が何度も持ち上がってくるこの感覚を、大勢の人に味わって欲しいと思う。
異様なポテンシャル、しょうもない話。
これが20才の自主製作とは驚き。近年の日本映画で最高の成果のひとつ『ナミビアの砂漠』に現れていた、あのカット終わりを短く切り上げてゆく前のめりな編集手法は、この段階ですでに独自のスタイルを獲得している。
気になる少年が別の女に溺れていることをスマホの画面で知ったときの絵の並び(スマホ画面に反射するあみこの顔→メリーゴーランド→ベッドで仰向けに横たわるあみこ)なんか秀逸。
一方で、まだ自分語りに夢中になっている若い女の子らしく、自分の脚本に酔っている。だから例えば山道を2人で歩くシーンなんかはセリフを聞かせるためだけにあの長さになってるんだけど、さすがに途中から画角の引き出しが尽きてくる。これは映画の勉強がまだ足りないから、仕方がない。でもそれならセリフを切るべきだった。だけど「セリフが詰まんないから切れ」というアドバイスを、自分語り好きの女の子は絶対聞き入れないんだよね。
勉強不足は、たとえば東京に来てからのショットが凡庸・退屈なことにも現れている。
「いろいろメンタルをこじらせて、貧乏なくせに周囲を貴族的に見下している若い女」物語は、世界の映画をきちんと勉強すれば、正直いってありきたりすぎることも悟ったはず。ほんと、こじらせ女子の煩悶なんか、ミッドライフクライシスのおじさんくらいどうでもいい。
だけどそういう映画史の勉強をしっかりやると、このやけっぱちな感じの無茶苦茶なエネルギーは薄れてしまうかもしれない。この段階で、ものすごく未来のポテンシャルを感じさせるデビュー作であるのはたしかです。配信もDVDもまだ先になりそうなので、近くの映画館でかかったらぜひ一度見てみてください。
ナミビアのおかげで映画館で見れた。
河合優実がこれ見て監督に「次作に出たい」と直談判した話を聞いてみたくなった。関係ないけど「こちらあみ子」は見てた、これも良作。
2016の「プールに金魚」の影響あるんだろうか?
同時代性ってやつか?前半の編集が似たテイストだ。
ナミビアでは全く無くなってるから時代の若さ表現と言う事で理解。
大衆文化とか俗世間とか言ってるくせに、1番俗な恋愛で爆発的な行動力を発揮する女子高生の話です。
なんか行き過ぎた甘酸っぱさが楽しい。
家で朝起きて同級生が馬乗りになってたらびびるわ。
まあ可愛い子ならいいかなぁ。
日本人はなァ
勝手に身体が動くなんて事はねェんだよ!!
たくさん笑って、込み上げる恥ずかしさと痛々しさと愛おしさ
楽しかった
ナミビアもあみこもどちらも好き
回転てん子とどりーむ母ちゃん
魚座どうし
も見たいなぁ
アオミくんパーフェクトデイズのレコード店の客だったのか!
女子の気持ちが表に現れた(イメージ)
ナミビアの砂漠からのリバイバル上映で鑑賞。
独特な世界観だが、浮世離れし過ぎず、観ていて夢中になる。
カメラワークも独特で、話もさることながら、つぎはどういう映像になるのか気になっていく。
途中、謎なダンス展開もありつつ、あれくらいであれば観られる笑
まだ社会的な抑制がきいてない感情、思いがすべて表に現れている感覚で意外性と爽快感で楽しめた。
最後は、しっかり笑いをとり締めもスッキリ。
2018年鑑賞の記録
このポスターにまず目を吸い寄せられました。不貞腐れてこちらを睨む女子高生の視線がとっても魅力的です。周囲とどうしても馴染めない自意識を持て余しながら、「なんだよぉ~おら~」って開き直る声が聞こえて来そうです。ぐじゃぐじゃしたこの現実を「どりゃぁ~」っと切り裂いて行く映画なんだろうと期待させます。
しかも、本作を制作した山中瑤子監督は撮影時にはまだ19歳で、スタッフもSNSを通じて募集したという話題性にも好奇心をそそられます。そして、本作でPFF(ぴあフィルムフェスティバルで観客賞を受賞したと云うのですから驚きです。こりゃあ観てみなければなりますまい。
そして本作は、関東地方では都内で只一館(ポレポレ東中野)だけで公開されました、一週間限定、一日一回だけの上映です。しかし、夜9時からのレイトショーだったので、仕事を終えてから駆けつける事ができます。そこで9月初めの或る日、電車を乗り継いで夜の映画館に駆けつけたのでした。ところが、びっくり。ホールには人が溢れ、その時点で立見席を含めて全席売り切れだったのです。
「え~っ?!! 」
びっくり。チケット売り切れなんて『カメラを止めるな!』以来です。その日以降、劇場から発せられる情報によると連日早々と売り切れが続きました。ネット予約できない映画館なので、仕事の有る身としては諦めざるを得ません。一方で、本作を観た人々からは熱い共感の声が寄せられています。こりゃあ、ますます観たい~。でも、これだけ評判だとなると、上映の延長、或いは再上映がある筈です。と思っていたら案の定、2週間後にアンコール上映が始まりました。そこで、今回は腹を括って早い時間にチケットを入手して上映に臨みました。僕が観た日も館内は満席でした。
そこで作品は、やはり予想したようなこじらせ女子高生のウガァ~ッと言う映画で、表現の方法にも若さや新しさを感じる事は出来ました。しかし、「表現の方法」に新鮮さはあっても、それより大切な「表現している物」自体が何だかぎこちなく感じました。例えば、
「えっ? それで人を好きになるの?」
「えっ? 今度はそれで冷めちゃうの?」
が、どうもしっくり来ないのです。ネット上に溢れる本作への絶賛の熱を感じる事が僕にはできませんでした。若い人々の思いに共感できないのは鈍感なジイサンの証みたいで恥ずかしいのですが、仕方ありません。
でも、そんな思いが一変する出来事がありました。この日は、監督舞台挨拶が上映後にあったのですが、登壇した山中監督を見て驚きました。
「若い~!(当然か)、可愛い~っ!、そして無茶苦茶声が小さい~!」
エネルギーのほとばしりが普段から感じられる方かと想像していたのですが、ご自身が引っ込み思案な女優さんと言う風に見えたのです。
若さほとばしる、疾走勇足物語!!!
いやぁ、すごい才能ですね、山中監督。
19歳?20歳?の頃、独学で作った映画だそうです。
すっごいなぁ。
ポレポレさんのアンコール上映で鑑賞です。
当日はアフタートークがありまして、本作は
なんの都合も気にせず、監督が自分で好き勝手に
撮った作品だそうです。だからでしょうか?
粗いなぁって感じつつ、キラキラしてずっこーん!と
突き抜けていました。
何よりも、全体を覆う厨二病感!!!いい。
悩め!考えるな、感じろ!そして動け!
行け!自己中でいけーーー!ってなもんです。
しかし、しかしですよ。
繊細な作品なんですよね。これが。
考えられた(であろう)緩急。
引き込む構成。
そして魅力的に仕上げられた主人公。
レモン、ガシガシ。
スパゲティ、わしゃわしゃ。
なんだろう?と観ながら
わけわからんかった自分の十代を思い出し。
きっと、これは山中監督の頭の中(だった)の
具現化に他ないのでしょう。
だからこそ、山中監督の作品が楽しみになる
一作でした。
感じれば良い・・・と思う作品でした。
網子
文藝天国とか4s4kiとか、メインどころで言うと欅坂46とか、メンヘラ「っぽい」女子の魅力におっさんになってからハマっている私から言わせてもらうと、この作品は違う。
というか、この人は違う。
この監督は多分、限りなく健全で真っ当な陽の人物だと思う。
こういうサブカル的アングラ的な作品よりも、“大衆文化”な王道の青春ものとかラブストーリーを撮ったら大化けする人だよ、きっと。
映画的な演出としては手堅くて凄くセンスを感じたから、一度王道青春映画を撮ってほしい。
主演の子も、まさかの朝ドラレギュラー女優まで登り詰めた岸井ゆきのと同じ空気感を持ってるし、この子もちょっとしたきっかけでブレイクする可能性は十分にある。
がんばれ。
厨二病感、イタいけど共感
私も高校生の時そんなこと考えてた!って共感できる映画でした。
自分の感覚、視点を独特だって褒められるとその人を同志だと思ってより思い入れしちゃうのよね。
それがアオミくんで好きになっちゃうのは凄いわかる。
で自分に絶対一目置いてるであろう男の子が大衆的な女の子と付き合っている意味がわからない。最後にわかる理由が本当ありきたりなんだけど、それもあるあるで本当共感できました!
イタさを描く時必要以上にウザくなりがちだけど、この映画はなんかクスッと笑えて青春を感じさせてもらえました。
「あんなの大衆文化じゃん」
田舎の高校のおそらくカーストでは中の下ぐらいの女子の恋愛物語。
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そこら辺の恋愛の映画より共感出来る。例えば、キラキラ女子のインスタ見て匂わせるとか可愛くないとかグチグチ言い合ったり、先輩に媚び売ってる女子達を見下したり。
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プライドだけは無駄に高くて、そこら辺の遊んでる女子と私は違うんだって思ってる。何となくわかるわその気持ち(笑).
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映画好きな人のカーストってわりとあみこと同じぐらいなんじゃないかな。めちゃくちゃ地味な訳でもないけど、キラキラ女子でもない。
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私と同い年の監督映画好きの感性って似てるんだな。モテる男子の描き方もうまかったよ。
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あみことの会話をちゃんと覚えてるけど、大衆文化の女と付き合ってたね(笑).
女子高生あみこのイタさはワールドワイドだ
監督の山中瑶子さんはとんでもなく若いのですね。今作は19歳から20歳にかけて撮った初の長編だとのこと。
高校生の異性に対する思い込み、勘違いをむきだしのまま封じ込めた鮮度の高い作品だ。
若い人たちには勿論のこと、私のように中学生のときから全く成長していないのではないかと疑っている大人たちにも間違いなく響くと思う。ベルリン、香港、カナダなどの映画祭で上映されたのも納得の秀作だ。
あみこのように「魂の時間を共有した」という思い(勘違い)を引きずって生きている人たちが世界中にどれだけいることだろう。
映画は自由だ!
あみこの心音風景がビジビシと伝わってくる!
高校生の何気ない日常。そして、恋。
教師や親は一切出でこない、ありふれた高校生の見る景色。
描写が最高。ブツブツ切れる展開も最高。
その男凶暴につきの音楽が使われたり。
見入った!
舞台挨拶を見てさらに好印象
短いし、たぶん学生的な色が濃いのかなーと思っていたけれど、予想に反して、主要キャストの演技が非常にナチュラルで、すっごく楽しめた。かなり笑えたし。
監督も主演の女の子も、助演の男性も、初映画だと聞いて、結構驚いた。確かにエンドロールなど質的に見劣りしてしまうけれど、内容は若者初体験といったところはそれほど感じなかったし、むしろ素晴らしいところばかりだったように思う。とにかく女子2人が可愛くて魅力的だった。10代の悩みや過ちがいっぱい詰まっていて、好感を持って楽しむことができた作品。音楽も良かったし。
この若い可能性に満ちたクリエイター等に今後も頑張ってほしいと心から願うばかり。
若さで撮れる映画は貴重だと思う
最終日。満席立見。
エンドロールのスピードが速すぎて私の視力では滲んで見えました。
映像が、撮り方が、構図というかその発想の全てが好ましかった。見せ方めっちゃ上手いな、と思って観ていた。私は好きです。はい。
物語的には、前半は、まあ、私にとってはごく普通というか、ああいう会話、したことはなくても想像しないですか?私はああいう会話を夢想するのが好き(変わっている可能性は高い)なので共感性は高かった。
後半は想像を超えました。私の空想好き程度では補えない発想の飛躍がそこに存在した。後半は完全にホラー映画かはたまた共感性羞恥なのか、うああ観ているのがつらい、と思った。実は褒めてるつもりだけど伝わらなさそうだ...。
チープなれどもディープな作りは、若さで作れたというのはあると思う。良くも悪くも若さで持っていった感じがあり、だからある程度年を重ねてしまうとどっぷり浸かるか、斜に構えて観るか、恥ずかしくなる。という幅になる気がしました。もうこの辺は好みでしかないよね。
余談ですが、信号の音で分かる長野市感。あれ聞くと善光寺思い出すの...私だけですかね。
次回作を楽しみにしています。
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