劇場公開日 2018年9月1日

「異様なポテンシャル、しょうもない話。」あみこ milouさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0異様なポテンシャル、しょうもない話。

2024年11月20日
PCから投稿

これが20才の自主製作とは驚き。近年の日本映画で最高の成果のひとつ『ナミビアの砂漠』に現れていた、あのカット終わりを短く切り上げてゆく前のめりな編集手法は、この段階ですでに独自のスタイルを獲得している。

気になる少年が別の女に溺れていることをスマホの画面で知ったときの絵の並び(スマホ画面に反射するあみこの顔→メリーゴーランド→ベッドで仰向けに横たわるあみこ)なんか秀逸。

一方で、まだ自分語りに夢中になっている若い女の子らしく、自分の脚本に酔っている。だから例えば山道を2人で歩くシーンなんかはセリフを聞かせるためだけにあの長さになってるんだけど、さすがに途中から画角の引き出しが尽きてくる。これは映画の勉強がまだ足りないから、仕方がない。でもそれならセリフを切るべきだった。だけど「セリフが詰まんないから切れ」というアドバイスを、自分語り好きの女の子は絶対聞き入れないんだよね。

勉強不足は、たとえば東京に来てからのショットが凡庸・退屈なことにも現れている。

「いろいろメンタルをこじらせて、貧乏なくせに周囲を貴族的に見下している若い女」物語は、世界の映画をきちんと勉強すれば、正直いってありきたりすぎることも悟ったはず。ほんと、こじらせ女子の煩悶なんか、ミッドライフクライシスのおじさんくらいどうでもいい。

だけどそういう映画史の勉強をしっかりやると、このやけっぱちな感じの無茶苦茶なエネルギーは薄れてしまうかもしれない。この段階で、ものすごく未来のポテンシャルを感じさせるデビュー作であるのはたしかです。配信もDVDもまだ先になりそうなので、近くの映画館でかかったらぜひ一度見てみてください。

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milou