斬、のレビュー・感想・評価
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かっこよくて痛かった
音と映像は凄く格好良かったけど、映画としてのリアリティをあまり感じなかった。作られた舞台の中で作られた演技、作られた光、作られた雰囲気展開していた印象。映画だから作りものでべつに構わないけれど、全てが一体となって迫ってくるようなところが気迫だったような気がした。
作り出されたという印象が効果的なところもたくさんあったので、多少の違和感を感じつつも、カッケーなんて思ったけれど、放し飼い多少?なところがあったので、期待したほどでもなかったかな…
それにしても、池松壮亮はどうしてああいった演出をされるのだろう。意図は非常によく分かるけれど、時代劇ではちょっと違和感を感じた。時代劇だからこそ面白いというところも分からないでもないけれど…
正直、あまりよく分からなかった映画だったけど、斬るあるいは斬られることの痛々しさは非常に伝わってくる作品だった。
生々しさの積み重ね
舞台は幕末だが、倒幕イデオロギーも、ストーリーもない映画だ。
本作では、よくあるチャンバラ活劇のように、簡単に人を斬り捨てることはない。
刀の重量、流れる血の粘り気、斬られた人間の息遣い、腕や内臓の生々しさ……
そういったものの丹念な描写が積み重なって、シンプルに「日本刀を使って人を斬り殺すとは、どんな事なのか?」を追っている。
達人レベルに剣術を修めながらも人を斬った事も、女を抱いたこともない若侍を、池松壮亮くんが狂気を伴う熱演。
さらに上を超えて怖いのが、塚本晋也監督自身の演技。
それらを力強く押し出してくる、音と映像の迫力に圧倒されました。
90分なのに、観た後にヘトヘトになっていました。
前半の軽快な流れ、妙な間合いで含みのある会話に引き込まれた。 徐々...
現代に通じるなにか
なんだかよくわからないが足に力を入れ過ぎていたようで観終わった後立ち上がったら生まれたての子鹿のようになってしまった...。
恐ろしい、恐ろしい映画だった。映画を観た後のカタルシスは一切ない。ここで終わるのか...!いやでもここで終わるしかないよね...みたいな...。ここで終わるのが生々しい手触りというか...。
当たり前に時代劇を流していると忘れがちな「太平の世に人を斬る必要はない」=「刀で人を殺すというリアルを感じられない」というのがあからさまに現代日本の自分たちのようだった。躊躇なく斬る者が強いのか。強さへの無邪気な憧れへの警鐘みたいなものを感じた。
池松壮亮も蒼井優も生々しくて良い。音も生々しい。最後の叫びが耳を劈き、私の心を容赦なくぶちのめした。ぶちのめされた80分だった。
時代に斬り込んだ塚本版時代劇。
前作「野火」で初めて塚本作品に触れ、その世界観に没入し何度も繰り返し観ました。
「斬、」が発表されてからは是非劇場で見たいと思っていたので、スクリーンで鑑賞できただけでも幸せですね。
まず殺陣シーンの緊張感が素晴らしい❗️
序盤の木刀を使った稽古シーンも動きが冴え渡っていて見入ってしまいます。
そして果し合い。
動きの読み合いの末、抜刀し叩き斬る。
肉は裂け骨は砕け、視界を血飛沫が覆う。
自然の静寂の中、ただ生きる為に殺し合う男達。
その衝動はどこまでも純粋で美しかった。
次に蒼井優。
素朴な村娘として登場した彼女こそ、作品のキーキャラクターと言えるんじゃないでしょうか。
彼女を取り巻く環境の変化と、彼女自身の内面の変化。
蒼井優の素晴らしい演技もあいまって胸に刺さりました。
国家の為でも忠義の為でもない。
自分の為にただ、斬る。
「野火」で描かれた武器による暴力の連鎖はよりシンプルに刀に象徴されていて、予備知識なくとも誰もが没入できる時代劇に仕上がっていました。
塚本作品の最新作としても、また導入としてもおススメできる良作です。
剣豪ぶりは圧巻
『散り椿』の格闘を交えた殺陣に圧倒されていたので、本作の殺陣にはそこまで期待してませんでした。
ですが、なんでも見えればいいとうものではなく、見せない殺陣が、かえって剣豪ぶりを効果的に語っていました。
共通の出演者である、池松壮亮のキャラも違いも楽しい。
主要キャストの表現には、観るべきものがありました。
ただ、個人的にはプロットがしっくりきませんでした。
時代設定的には如何にも起きそうなストーリーなのですが、登場人物の誰かに共感を抱く前に事態が進行し、違和感を抱いているうちに、映画が終了してしまいました。
これから何かが始まりそうな序盤で、映画が終わってしまった感がありました。
時代劇の初回感?
ただ、続きがあるなら観たい気はします。
それから自分には、アクションでもないのに、揺れるカメラが若干気持ち悪かったです。
ずしんとくる。
池松壮亮と蒼井優は本当素晴らしい
斬新で異色な時代劇
時代劇を借りて塚本監督が描く現代の日本:長文
自分が最も好きな監督としている塚本晋也最新作ということで、期待に胸躍らせ封切り初日に渋谷ユーロスペースにて鑑賞。
のっけから轟音と共に展開する、刀が打ち叩かれる過程からのタイトル、塚本らしい手ブレ全開の殺陣へとテンポ良く場面が連なる。
…が、終始緊張感がありながらも描写・台詞にはかなり淡白(ともすれば説明くさい・生きた人間の言葉っぽくない)な印象を上映中常に持ってしまっていた。
中村達也演じる瀬左衛門との対決は凄惨な映像含め手に汗握ったが、十八番の手ブレ撮影ではなく腰を据えたカメラで見たかった…
と、考えているうちに最終対決が終わり、映画は終わってしまった。
観客に解釈を委ねるラストとというものは勿論好きだが、これは投げっぱなし過ぎないか?せめて杢之進に何かしらの結末を与えて考えさせてくれた方が…
などと思考を巡らせながら帰路に着いた。
散々考えた挙句、方々で監督が言っていた"これは現代の話"、"反戦"といったキーワードを手繰り寄せ、下記のような解釈に自分は落ち着いた。少し大袈裟で、故に陳腐な解釈になりそうだが、あくまで個人の感想である。
杢之進は"日本"である。
常に木刀で実戦を積まない練習をする、現代の自衛隊だ("実戦を積まない"はマスターベーションも同義)。
そんなとき、剣豪・澤村から戦の誘いを受ける。
そう、強国・アメリカから一緒に戦争をしようと誘われるのだ。
ゆうは"日本国民"。常に過剰なまでに戦争反対を掲げている。
しかしどうだ、自分の家族が殺された途端、あそこまで反戦一辺倒だった者が"仇を取るため人を殺せ"と言い出す。
杢之進は関係ない、澤村が引き起こした戦争なのに、だ。
これが現代の"日本"なのだ。
杢之進・澤村が無頼者討伐に乗り出したとき、澤村は刀を抜き、言う。"お前の実力を見せてみろ"。
集団的自衛権の発動である。
自身が傷つき、ゆうを目の前で犯されても杢之進は叫ぶだけで刀を使う素振りはない。
戦いに参加できない。
見兼ねた澤村が変わりに敵を討つ。
"一度人を斬れば変わる"
その言葉通り杢之進は初めて人を斬る。
日本が今一度戦争に参加すれば一体どうなるのか。
どこに出口があるとも知れない暗い森の中、唯一光を放つ刀さえ消えた瞬間に物語は終わる。
エンドロール後、誰のものかもわからない足音が観客の耳に木霊する。
そう、戦争の足音はすぐそこまで聞こえている。
鼓舞
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