「超凄腕殺し屋の“絶対に殺してはならない一般人生活一年間”」ザ・ファブル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
超凄腕殺し屋の“絶対に殺してはならない一般人生活一年間”
原作は人気コミックらしいが、毎度の事ながら。
岡田准一が殺し屋に扮したアクション…程度の知識で、一本の邦画アクションとして鑑賞。
OPから察するに、いつもながらキレキレの岡田アクションが冴え、スタイリッシュでクールでバイオレンス絡めつつテンポのいい、日本でタランティーノ路線を狙ったクライム・アクション…?
が、話はユニークな方向へ。
“ファブル”と呼ばれる超凄腕の殺し屋。
殺しのテクニック、スキル、身体能力、状況把握などは超人級。どんな相手も6秒以内に始末する。
その凄さ強さから、都市伝説化すらされているほど。
そんな“ファブル”に、育ての親であるボスがある任務を課す。それは…
1年間殺し屋を休業し、普通の一般人として生活する事。その間、一人も殺してはならない。
相棒のヨウコと兄妹のフリをして大阪へ。ボスと旧知の大阪ヤクザ社長の世話に。
かくして始まった“絶対に殺してはならない一般人生活一年間”なのだが…。
“佐藤アキラ”と名乗る事となった“ファブル”のキャラが面白い。
殺し屋としては並外れているが、それと等しいくらい並外れた常識ゼロ。
一般人がどんな生活をしてるのかも分からない。
一般人は普段働いていると知り、就活するが、とんちんかんな応対で面接はことごとく落ちまくり。
とあるきっかけで採用されたデザイン会社。画は“画伯”級。
同僚と飲みに行った席で、枝豆は皮ごと食べ、魚は頭からまるごと食べ、フライドチキンも骨ごと食べる。
そうか、これは普通じゃないのか…。
大阪に来て早々チンピラに絡まれるが、わざと殴られ号泣して弱いフリ。頑張って“普通”してます。
殺し屋として以外何事にも興味関心無いと思いきや、趣味はクソつまんねーお笑い芸人・ジャッカル富岡(演・宮川大輔)の大ファン。何故かいつも大爆笑。やっぱり、感覚ズレてる…?
他にも超猫舌だったり、キャラの個性あり過ぎ!
ほとんど無表情、無愛想、ぶっきらぼう。
岡田クンが濃く、真面目に演じれば演じるほど笑えてくる。
クールかつバイオレンスなアクションかと思いきや、笑える所がいっぱい。意外や、アクション・コメディだったね、本作。
ミサキという女性と出会って、色々教えて貰い交流しながら、時々珍行動もするけど、少~しずつ一般人生活をマスターしていく。
が…
大阪ヤクザのトラブル~争い。
執拗にファブルを付け狙う若い殺し屋。
ミサキが捕らえられてしまう。
ヤクザや殺し屋とのバトルの中、絶対に殺さず、ミサキを救出する事が出来るのか…?
キャストも豪華個性派揃い。
福士蒼汰、向井理、佐藤二朗、光石研…。
中でも、柳楽優弥。実はファブルのライバル的殺し屋と思っていたら、そうではなかったけど、ふてぶてしさ憎々しさ憐れっぷり含め、さすがのハイテンション怪演存在感。
(ライバル殺し屋には福士蒼汰だったけど、ちと役者不足だったかな…)
相棒ヨウコに木村文乃、ミサキ役に山本美月、タイプの違うヒロイン。山本美月のか弱い守ってあげたくなるヒロインもいいが、木村文乃の魅力的で色っぽいいい女っぷりに一票!
また、ファブルの育ての親のボス・佐藤浩市と、柳楽優弥演じるアブナイヤクザの兄貴分・安田顕が、味のある演技でドラマ部分を締める。
『図書館戦争』もそうだが、岡田准一のアクション映画は魅せてくれる。
アクションのキレの良さは勿論、身のこなし、振り付けはやはりさすが!
クライマックス、敵の居る工事への“侵入”に驚き! あれ、岡田クン自身がやったの…!?
次から次へと襲い掛かる敵を殺さず、突破していくアクションの見応え、スピーディーさはなかなかのもの。
アクション振り付けに岡田クンと共に、実際に特殊部隊に居たフランス人アクション振付師を起用。
まさしく、プロフェッショナルな仕事ぶり!
この手のエンタメ作品は東宝が多いが、意外にも松竹。やるぅ~!
任務は必ず完遂する。プロとして。
ボスとの約束は守り、決して一人も殺さない。プロとして。
さすがに傷付き、絶対危機の中でも、世話になった人を必ず救出する。プロとして。
そして、平和に普通な一般人生活を送る。プロとして。
そのプロの姿に、いつの間にかに惚れ惚れと魅せられてしまっていた。
設定もキャラも面白い。
笑えて、何故だか最後は人情味も感じて、後味良く。
岡田クンにまた一つ、ハマり役。
ファブルの“絶対に殺してはならない一般人生活一年間”もまだ途中。
こりゃ続きも是非見たいね。