銃のレビュー・感想・評価
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思考実験的な意欲作
予告編のとおり、コルトパイソン357マグナムという強力な拳銃を拾った若者が、銃によって変わっていく姿を思考実験的に描いている。主人公の行動の描写のそこかしこに本人のモノローグを挿し込むことで、努めて冷静で客観的であろうとする理性と、拳銃という強力な暴力装置を手にしていることの情緒的な不安定さを対比させている。
拳銃は所持しているだけで罪に問われるから、警察官を見ると、所持がばれて罪に問われる可能性が頭に浮かぶ。一方で、急所に向けて発砲すればほぼ確実に致命傷を負わせることができるから、クズみたいな人間を見ると、撃ち殺してしまおうかと思う。いずれも平静でいるのは難しい。
逆上がりが出来るようになった子供は、何度も逆上がりをして見せる。人間は何かが出来るようになると、それを試してみたくなるのだ。よく切れる刀を手に入れれば辻斬りをしたくなるし、強力な拳銃を手に入れれば威力を試したくなるものなのである。
村上虹郎がなかなかいい。人を殺せる武器を持っているという不気味な自信を持ったり、撃てば弾がなくなるし、人に見られたらただでは済まないことを考えて苛ついたりする振れ幅を上手く表現している。拳銃を撃ちたいが撃てない、持っていることを言いたいが言えない。拾った拳銃を冷静に管理出来るつもりが、いつか拳銃に振り回されるようになってしまう。
拳銃というのは素手に比べれば強力ではあるが、実はあまり大した武器ではない。なかなか当たらないし、急所を外せば反撃される恐れもある。圧倒的に勝つためにはもっと強力な武器が必要だ。そこで武器開発のエスカレーションが始まる。機関銃、グレネード、ロケットランチャー、大砲、戦車、戦闘機とエスカレートしていき、最後には核兵器に辿り着く。
これまで人を殺傷する目的で核兵器を使用したのはアメリカだけだが、核兵器を持っている国はアメリカ以外にたくさんある。それらの国が、逆上がりが出来るようになった子供のようにならない保証はない。目的も使命もなく生まれてくる人間とは違って、武器は人を殺すために生み出された道具である。持っていると、武器の目的に人間が影響されてしまう。トランプが北朝鮮に対して核兵器のボタンの大きさを言うのは、チンピラがポケットの拳銃をちらつかせるのと同じレベルである。何かあれば引き金を押すのだ。
コルト社はアメリカの銃器メーカーで有名なゴルゴ13の愛用するM16というライフルを製造している。今年の春にフロリダの高校で起きた銃乱射事件ではM16の民間用であるAR-15が使われた。乱射した19歳の犯人がライフルを手に入れなければ、17人も死ぬことはなかっただろう。銃が人間を狂気の行動に駆り立てたのだ。
いまはまだ起きていない核戦争だが、人類が核兵器を所持している以上、この先いつ起きてもおかしくない。核兵器は大量に人を殺戮する目的の道具だからである。道具はその目的によって人間を支配する。
好きになれないけど面白かった
やっと世界は色付いたのに。
武曲の延長線上みたいな価値観かな?と思いました。あのとき死に魅了された少年が、現実に折り合いをつけられないまま、「銃」に出会ってしまった。そんなイメージ。
なにも起きないけど、たまに揺れるくらいの安全な綱渡りをしていたら、たまにはドキッとする目に遭いたいかもしれないし、思いきって下に堕ちてみたいかもしれないし、しがみついてみたくなるかもしれない。
きっと誰にもあること。
私は、たまたま「銃」を拾ったことはないけど、トオルは拾ってしまったからこうなった。
そのくらい、きっと、うっすい壁たった一枚向こうの話。
現実の象徴のような、平和な親友くんや、恋人候補のユウコの知らないところで、焦燥感で狂っていくトオルが美しかった!
リリーさん演じる刑事は、トオルをこっちの世界に繋ぎ止めようとしてるのに、私もトオルの気持ちが伝染してしまったのか、その言葉は、心臓を直接撫でるように、じっとりと気味悪い響きをもって聞こえる。
ラストシーン、トオルは自分の欲を果たして、モノクロの味気ない世界から解放されたはずなのに。
一気に彼の魔法は解けてしまった。
あのラストめちゃくちゃ好きでした。何回思い出しても落ち込める。
ムラジュンさんがあの役をやったことで、虹郎くんが虹郎くんになった気がします。何目線だよって話ですが。
中村文則さんは、たしか彼女の指を持ち歩く話を購入して、読みづらくて断念したくらいの知識しかないのですが、
結構中村ワールド再現されてますよね...?暗くて淡々としたかんじ。
難しくて読まず嫌いになりそうだったんですけど、小説も興味深く読めそうです~!
残念だが不完全燃焼に終わった
渇いた雰囲気漂わせるB級映画だが。
魅せるエンタメ性は無く、初期の塚本晋也風で、ちょっとこんな撮り方したらどうよ感が空回り。少しひいた状態での撮りでエキストラ的な人物達の会話もわざわざ入れ、こいつらにも何かあると思わせて、結果的に大した役割で無かったという思わせぶりも多用するとちょっとシラケる。さらに、ほぼモノクロにして何の意味がある?。で最後に、あ、ここでカラーねって、いやいやそれ程効果無いって。モノクロにした事で、携帯のLINE文が見えにくく、エロいシーンも残念な事に。さらに、クレジット中の電車内音含め、思わせぶり&狙い過ぎが観ててシンドかった。
リリーフランキー使えば、そりゃ多少の良作に見えますわ。さらにカラーだったら、も少し好評価かな。
とても面白かった。
村上虹郎の演技は非常に良くて、次第に狂気に代わっていくとろこが実にうまい!
すごくリアリティがあり、私達も、もしひょんなことから銃を手にしてしまったら、こういう風になるのかもしれないと怖くなる。
モノクロの映像が作品の世界観にピッタリで、手から宝物や幸せがこぼれ落ちていく様をあのように表現して、しかもそこだけ色がつくなんて、なんて憎い演出と思ってしまった。弾丸があんなにも芸術的に描けるのかと、鳥肌が立った。ただ、朝早い回に見に行ったせいか、観客が少ないのが気になった。皆さん、面白いですよ。
タイトルなし(ネタバレ)
☆☆☆★★
原作読了済み。簡単に。
私は戸惑っていた。私はこの作者の小説を読んだのは初めてだったのだが、私はこれ程までに読みづらい小説を読んだ事が無かったのだ。私は一体どうしてしまったなら、こんな小説になってしまうのか?を考えていた。とにかく私は、ここまで改行も為されない小説を読む苦行を味わった事が無かったのだ。だが、同時に。私はここまでの熱量の凄い小説もまた、読んだ事が無かったのだ。
原作は絶えず「私は…」のフレーズが続いて行く一人称形式で語られて行く。
普段は無気力な若者が、或る日に本物の銃を手にした事から。自分の中に吹き溜まっていた《何か》に突き動かされて行く物語。
映像化では、その「私は…」が現代風に「俺は…」へと変化していた。
映画が始まって、画面が終始モノクロだったのは意外だったのですが。案外と悪くなく、ほとんど原作通りに進行して行く。
ただ、内容を知りながらの鑑賞の為に、まだついて行きやすかのですが。何分にも、淡々とした映像が続いて行くだけに。段々と落ち掛けてしまい…。
原作を読んでいた際に。1番面白く感じた刑事とのやり取り。
(本の帯に映画化と有り)出演者に、リリーフランキーの名前が有ったので。読んでいて、おそらくこの役はリリーだろうと思い。ここが1番の見所だな?と思っていたのに。不覚にもその場面で少しばかり落ちるΣ(-᷅_-᷄๑)
う〜ん残念無念!
そして最後の暴力場面。原作を読んでいても、熱量を感じる場面でしたが…なるほどね!その為のモノクロ。更には親子共演でニヤっとさせられた。
出演者では、主人公の村上虹郎が。これまで観て来たなかでは、1番良かったし。
広瀬アリスは。段々と、自身の中に有る資質の様なモノを確立しつつあるのが分かる。
ただ、それよりも。この作品に於いては。日南響子の裸体の眩しさに、思わずクラクラしてしまった印象が1番強く残る。
2018年11月18日 イオンシネマ市川妙典/スクリーン4
over dose
人を殺すとね、普通の理性ではいられないそうですよ。
ある時偶然に拳銃を拾うところから物語は始まる。モノクロの画面が、この話は現実離れした出来事だから心配しなくいいよ、と語りかけてくるようだ。しかし、拾った西川を演じる村上虹郎の熱量が、いやもしかして現実?の気分を起こさせる。虹郎はべつに過演出の演技をするわけでもないが、彼独特のたたずまいがなにか不穏さを醸し出してきてたまらなかった。
その彼が、徐々に大胆になっていく。まるで、柵のない崖の際で、どこまで端っこに立っていられるかの狂気を味わうように。そう、それは妖刀を手にした素浪人のようだ。そして、ようやくそのざわめきに慣れてきた頃に、今度はリリーフランキーがやってきて、無事で済みそうな空気をまたぐりぐりかき回し始める。警官、アリス演じる女学生、隣の母親、トースト女、ああ、もしかしたらこの誰かを、誰かを、誰かを、、、。息が詰まったところでのラストシーン。おいおいこの人だすかよ、とニヤけるが、それもつかの間。ああやはりそうなるか、そうなるよな、やはり。やはり。
いいように感情を振り回された映画だった。
舞台挨拶付き。山本耀司氏(かな?)の服をまとって登場した村上虹郎は、まさに何度も職質をされそうなファッション。そのいで立ちとは対象に、檀上の彼は終始ほかの共演者を気遣う好青年だった。あのタイプは、先輩から可愛がられ、女にモテる。
ただね、はじめ弾倉を確認したときに、6発全部詰まっていたよね?それはないでしょ。一発撃って死んでるんだから。
【追記】
・・・と書きました。が、コメント欄でご指摘いただいたように残るそうです。知りませんでした。厚顔にも人に言うところでした。勘違いに気をつけましょう。(なので、ネタバレ解除。☆追加)
主人公は 闇が薄い
まず 前半の山場が 無さすぎ!
前半のシーンが 終盤になって効いてくるタイプかな?と思ったが そんなに盛りあがらない。
広瀬アリスの役が セフレの対比にしたいぽっいけど 微妙!
あと、セックスしすぎ!主人公が 恵まれない環境を演出したいなら モテない設定の方が良いのでは?
主人公の闇のオーラに惹きつけてられて モテるなら 分かるけど、これじゃ顔が良いから モテてるになってる。
バイトしてないのに 昼飯 カツカレー食べてるし!しかも 白シャツで!
全体的に 主人公が 闇に堕ちてくのも かわいそうと思えなかった
目の演技がすごい!
虹郎君の演技をちゃんと見るのは初めてでしたが、目で全てを表現してる感じに、釘付けになり痺れました。
特にリリーフランキーとの掛け合いは、圧巻でした。
ストーリー自体は、多分こうなるんだろうなーと思った通りの、予定調和的な展開で、それ程新鮮味もありませんでした。あと広瀬アリスの演技だけ、ホームドラマみたいで、浮いた感じでした(´口`)↓︎↓︎
村上淳の登場の仕方が、衝撃ですね(笑)
動物虐待のシーンが出てくるので、そこがちょっと減点ポイントです。
どんどん狂っていくのに、怖くなかった
曖昧な線引き
中村文則の雰囲気だけ
中村文則のデビュー作の映画化です。川原で自殺した男の銃を拾った大学生が、銃を持つことで変わって行く姿を描いています。同じ大学の女子大生と付き合いながら、合コンで知り合った女とセックスし、衝動的に猫を撃ち、その事で刑事が訪ねて来て、やがて隣の子供を虐待する母親を殺そうとして、最終的には身を滅ぼしていきます。比較的原作に忠実に映像化されているようですが、中村文則の小説に比べると表面的で、中村文則の雰囲気だけという感じで、全編モノクロで最後だけカラーになる当たりも自己満足的に感じました。初日の2回目の上映を鑑賞しましたが、観客が自分一人というのは初めてでした。
ずっと張り詰めた空気感が漂い、目が離せない!
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