「リスベットの魅力で左右される作品かな」蜘蛛の巣を払う女 マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
リスベットの魅力で左右される作品かな
前作の「ドラゴン・タトゥーの女」はとてもエッジの効いた、ハードコアな作品で刺激的過ぎる所が多々あれど、あの世界観とアクの強いキャラクター、そしてストーリーの深さとアクションのバランスが良く、観る人の好みが分かれるが、好きな人には怖いもの見たさの刺激がたまらない作品です。
ルーニー・マーラ演じるリスベットがギラギラしながらも触れれば切れる抜身の刃の様な鋭さとポキリと折れてしまう様なか細さに天才的な頭脳とスタイリッシュな出で立ち。それでいて何処か純粋でクレイジーw、危なげながらも魅力に溢れたキャラクターで、前作を観ていれば自ずと期待をしてしまいます。
今回はキャストもスタッフも一新しての続編ですが、とにかく面白ければ問題無しなので、勿論期待をして鑑賞しました。
で、感想はと言うと…面白いのは面白いです。
ですが、どうしても前作と比べると…な感じですかね。
世界観も好きだし、映像も良い。スウェーデンのあの寒々しさと夜明けとも夕暮れとも区別のつかない天候も物語が何処に転ぶかを不安感を醸し出してる。
前作と比べて、アクション面もアツ盛りでオープニングはカッコいい。
ただ、前作のオープニングの「移民の歌」は鳥肌モノのカッコ良さだったので、比べれば劣るものも今回のもカッコ良くて好きは好きです。
じゃあ、何が問題なのかと言うと、やっぱりリスベットに尽きるかな。
リスベットの生い立ちで双子の妹と父親の話を描いているにも関わらず、リスベットが何処か人間くさい。素のリスベットとを描いていると言えなくはないですが、何処か魅力に欠けるんですよね〜。あの抜身の鋭さとギリギリのか細さを併せ持つリスベットの魅力がなんか薄い。
設計者で依頼者のバルデルの息子でアクセス解読のキーとなるアウガストを守る所なんて、何処か母性愛が感じられる。
今回のリスベット役のクレア・フォイはルーニー・マーラに比べると少し丸みがあって、優しさが見えるので、それはそれで魅力的なんですが、その分ハッチャケまくって、レッツゴークレイジー!とばかりにかっ飛ばして欲しかったかなとw
ミカエルとの友情と愛情と欲情の狭間も殆ど描かれてなくw、単にビジネスパートナーになってる。
あの、とりあえずいろんな意味でやっちゃえよ!と言うのが無いんですよね〜w
また、前回ほどアクの強いキャラも少なくて、ミカエルは普通の青年みたいになってるし、活躍は殆ど無い。
今回の敵となる妹のカミラも思った程の活躍とアクの強さも薄かったし。
み〜んな、大人になったと言うか、10代の頃の様なリピドーが迸るギラギラ感が無くなって、なんとなくマイルドかな〜w
ただ、あくまでも前作と比べてと言うだけで、普通にカッ飛んではいますけどね。
今回の監督のフェデ・アルバレスはあの「ドント・ブリーズ」の監督なだけに期待もしますし、もっとドント・ブリーズ並みに怖さとドキドキ感を盛り込めたのでは思います。
その分と言うか、前作よりもミステリー感が薄い分、ストーリーは分かりやすいし、変な捻りも無いので、入っても来やすい。
また、これでもかとハイテク戦が満載で、天才ハッカー、リスベットの面目躍如な活躍は面白いです。
ストーリーも世界観も面白いけど、この作品はやっぱり一にも二にもリスベットに左右される作品かなと思います。
リスベットの魅力は「羊達の沈黙」のハンニバル・レクター博士にも匹敵するぐらいに成り得ると思うからこそ、次回作でキャストを一新するかどうかは別として、改めてその意味と重要性を考えて欲しいかなと思います。