「リスベットをジェームズ・ボンドに仕立てたいのだろうが」蜘蛛の巣を払う女 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
リスベットをジェームズ・ボンドに仕立てたいのだろうが
「ドラゴン・タトゥーの女」(2011)の続編である。デビッド・フィンチャー監督は製作・総指揮に下がり、ルーニー・マーラも、ダニエル・クレイグもいない。フィンチャー版オープニングの「移民の歌」(トレント・レズナーとカレンOによるカバー)の強烈な印象を超えるのは不可能だし、続編は酷といえば酷。
監督は、フェデ・アルバレス。盲目の老人と強盗が暗闇密室で闘うスリラー映画「ドント・ブリーズ」(2016)を作った注目の人だ。さらに本作は原作小説の「ミレニアム」3部作のハリウッド版ではなく、第2部と第3部を飛ばして、いきなり4作目の「蜘蛛の巣~」の映画化である。
すでにスウェーデン版3部作があるからというより、完璧で有名すぎる3部作からの脱却を図りたいのかも。それほどまでにリスベット・サランデルというキャラクターは魅力的なのだが、すでに3部作の原作者スティーグ・ラーソンは亡くなっているので、この第4作からはデヴィッド・ラーゲルクランツが執筆している。
それにしてもミステリーとしては凡庸すぎる。キャラクターの前日譚というのも安易だし、"核兵器の脅威"を持ち出すのが才能が無さすぎる。もう飽きたよ、それは・・・。
今回は、ドラゴン・タトゥーの女こと、リスベット・サランデルが主役となり、弱者を助ける正義のオンナになった。ミステリーというより、これはコロムビア×MGM映画の意向なのか、"オンナ版ジェームズ・ボンド(007)"的なノリになっている。総じてビジネス臭が濃すぎる。
リスベットを演じるのは、クレア・フォイ。原作のリスベット="少年と見紛うような小柄な女性"のイメージをうまく引き継いでいて、ルーニー・マーラから違和感なく観られる。ここは安心。
ただ、前作でダニエル・クレイグが演じた、記者ミカエル役のスベリル・グドナソンが問題。「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」(2018)で、ビヨン・ボルグを演じていた俳優だが、本作のミカエルは、前作より存在感が弱く、むろんダニエル・クレイグには到底及ばない。
また、前作エンディングでリスベットがミカエルに恋心を抱く感じがよかったのに、そのあたりの経緯が繋がっていない。ここを描いて欲しかった。いちおう恋人(バイセクシャル)のはず。
もしシリーズが続いていくなら、観るとは思うが、いまのところ可もなく・・・。
(2018/1/12/TOHOシネマズ日本橋/シネスコ/字幕:松浦美奈)