「激動の大統領」LBJ ケネディの意志を継いだ男 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
激動の大統領
リンドン・ジョンソンは、ケネディとニクソンのはざまでやや目立たない大統領のイメージが強い。映画でも、職務に忠実で、調整役として奔走する場面が多く描かれるが、カリスマ性をもったような演出にはなっていない。公民権法もケネディの政策で、もともとは、これに反対の立場だった。では、ケネディが凶弾に倒れ、大統領職を継いだから、この法律の成立に尽力したのだろうか。そういうモチベーションもあったことは間違いないと思うが、僕は、リンドン・ジョンソンは、もっと一般大衆の目線で政治にかかわっていたのではないかと思う。公民権法に反対していたのは、わざわざ法律で縛らなくても、南部の人間も差別を解消することができると信じていたのではないか。だから、南部の工場で黒人が働けるように南部州の議員に一生懸命働きかけていたのではないか。では、どうして公民権法の成立を推進したのか。それは、自身の料理人を務める黒人の女性が、南部の故郷に帰ると、車にガソリンを入れることも拒否され、トイレを貸してもらうこともままならない...こうした現状に触れて、人種差別の撤廃には政治が介入しなくてはならないと考えるようになったのではないだろうか。これまで知ることができなかった、リンドン・ジョンソンの一般大衆に向けた正義感のような姿勢に触れられて、近い将来、アメリカには分断主義ではない政治が戻ってくるように思えて、興味深かった。
ただ、自身が始めたわけではなかったベトナム戦争に対する大規模介入を決定し、戦争が泥沼化、自ら大統領選挙への再出馬を断念せざるを得なかったことは皮肉だ。
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