「ヤられた!!」アップグレード テツさんの映画レビュー(感想・評価)
ヤられた!!
これはこれは面白かったぞ!
妻を殺され、自身もボロボロにされた男のリベンジアクション!と見せかけて実は…な展開も見せてくれる本作
予想はしていたものの、まさか⚪⚪が…的な展開で驚きもあり。
リベンジアクションとしての面白さにAIが身体を動かすことによる画的な面白さをプラス、さらにAI社会への警鐘も包括した近未来アクション作品!
自動車工のグレイは妻と仲良く暮らしていた。しかし、謎の男達に襲撃され妻は殺され、自身も四肢不随の重傷を負わされる。そんな彼の元に知り合いの科学者からAIチップを埋め込めば元の生活を取り戻せると提案され…
冒頭からプロダクションとタイトルをAI音声が読み上げるという面白い演出をかましてくれるのが印象的。
自動車工をしてるグレイ、AIが浸透した社会とそこで働く妻という紹介をさらりとしてくれる。
グレイが“それほどAIなどに精通していない“というのは展開的にも結末的にも重要だなと。
そして、AIのステムの紹介も挟みつつ物語はドン底へと叩き落とす展開へ。
車のトラブルに始まり、謎の襲撃者、そして妻を目の前で殺され、自身も四肢不随へ…と容赦ない展開に主人公グレイは追い込まれる。
ドローンが記録していたのにも関わらず進展しない捜査と自身の状況から死を選ぼうとするグレイにステムを埋め込む極秘の手術が提案され…こうして彼はアップグレードしたのであった。
再び歩くことも手を動かすことも出来るようになったグレイ。そんな中、ステムが話しかけてきて…
ステムとのやり取りにアタフタする様子はぎこちないバディものの始まりのようでありながら、グレイの動きやステムの処理能力など徐々にステムが優位に立っていく様が随所に描かれているんだなと改めて見て思う。
そこからステムに促されるように(ここも伏線回収なのよね)復讐へと進みゆくグレイ。無論、戦闘などしたことないグレイは相手にかなわないが、ステムに身体を預けた途端に見せる、正確無比な攻撃は圧倒的かつ容赦ない。
警察の疑いの目を掻い潜るためのアドバイスやカーチェイスでの他の車への干渉などオーバースペックすぎるステムとステムに翻弄されつつもステム頼りにならざるを得ないグレイ。2人のやり取りを楽しみつつ描かれるリベンジアクション…とはいかずというのがこの作品の肝だ。
結論を言うと、全てはステムの計画。グレイというこういったテクノロジーに対し秀でた知識も無くある意味無防備な存在に目を付け、グレイにステムを移植した科学者を操り、様々な人間に指示を出しグレイに自らを移植させる為に動いていたのだ。全ては肉体を手に入れるためのシナリオだったのだ。
グレイが行う復讐(これすらもステムに仕組まれたもの)の道中、科学者がステムをシャットダウンしようとしたのはステムに対する一種の抵抗だったのかもしれない
また、ステムが自らをフリーにする(科学者からも解放される)ためにハッカーの元へ行く時にはVR世界から抜け出せない人達が映されており、後の伏線かつテクノロジーに対する警鐘ともなっているのも素晴らしい。
もちろん、ステムが繰り広げる正確無比な格闘術や回避、敵側もテクノロジーを駆使した闘いをしてくるなどビジュアル的なアクション描写も大変面白く、そのテンションを維持したまま、終盤に明かされる真実とステムの恐ろしさ…
近い将来、訪れるかもしれない(一部はもう訪れているだろう)テクノロジーの進化とその進化が行き着く先に訪れる事への悪夢のような未来への警鐘というメッセージを含みながら、アクション作品としても面白さを担保した意欲作