THE GUILTY ギルティ(2018)のレビュー・感想・評価
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緊迫感と正義感
緊急ダイヤルにかかってきた電話から、拉致された女性を救えるか、というワンシチュエーションの作品ですが、緊迫感あるストーリーに唸らされる展開で、最後まで飽きることなく楽しめました。
画面的には、緊急ダイヤル受付の事務室の中で延々と主人公の様子を映しているだけながら、電話の向こうの声や音、ストレスを抱えているらしき主人公の表情や行動などから、全く単調さは感じず、ハラハラしながらどうなるかと見入ってしまいました。
主人公の過去や人物像、心理状態が事件と並行して示唆されてゆく脚本も秀逸だと思います。
特に、それまでの犯人像が根本的に覆される展開での、主人公の価値観や独自の正義感も覆されたような絶望感。
そこから過去の贖罪の行動に繋がるようですが、とても印象深い展開でした。
個人的にも思い込みが覆され、はっとさせられました。
舞台だったらもっと面白かったかもしれない
声と音だけで推理するシチュエーションサスペンスと思ってたが、大した推理はしていなかった気がする。主人公の暴走も結構ひどく、通常の職務を軽視してるシーンも。なんだこいつ!って感じで主人公の印象は悪い。
ただ、オペレーター室だけで展開する脚本の潔さはなかなか。なかなか面白い展開だった。
舞台の芝居だったらかなり評価が高くなってたと思うけど、映画なのでそこまでの高評価にはならない。さらにモヤモヤするのは主人公の過去。あんなに正義感を振りかざしてるのに、容疑者の少年を殺した理由がしょうもなさすぎる。
途中で気づきます普通に
母親が先に観に行ったんですが、「あたしゃ途中で気づいた」とのことで。わたしはあまり頭の回転が良くなくて、そういった手の話は最後のほうでやっと気づいたり、母親の解説を聞いてやっと点と点がつながったりするのですが、この物語はわかりました。途中で。これは今思えば、の話ですが、誘拐された女性がそもそもあんなにずーっと電話していられるわけないなぁとか。
もっとすごいどんでん返しみたいなのがあるかと思いましたが、そこまでじゃないです。見終わった後に「THE GUILTY」のタイトルがずーんときます。
最後、結局あの女性は助かるのですが、あれはわたしは死んでしまったほうがいい意味で観客の心にグサっと刺さるのでは、と感じました。正直「あ、この人助かるんだ。へぇ。」みたいなのもありましたね。
狭い正義が罪へと至る
2019年アカデミー賞外国語映画賞の最終選考にまで
残り、ハリウッドリメイクも決定したデンマーク発の
サスペンススリラーが公開。
主人公が緊急通報センターのオペレータということで、
観客は主人公アスガーと同じく進行中の誘拐事件の状況
を聴覚のみで把握することを強いられるわけだけど、
やっぱこういう手法はサスペンスフルで良いっすね。
受話器の向こうの人物は無事なのか? 周囲に危険は
無いのか?
 聞こえてくる息遣いや沈黙が怖い。
突然電話が切れた時のクリフハンガー感も怖い。
……と、褒めておきながらいきなり盛り下げる
ようなことを書いてしまうのだが、サスペンス映画
としての本作の手法そのものは決して「超斬新!」
と呼べるほどのものではない。
恐らく皆さんもご存知の通り『フォーン・ブース』
『ザ・ウォール』古くは『裏窓』など、聴覚や視覚
などの手掛かりを極端に制限することで緊張感を
生み出すスリラー映画というのは散見される訳で、
それに本作の場合、"音"そのものをヒントに事件の
手掛かりを得ていく演出もあまり無いし、プロット
だけ聞けばハル・ベリー主演の『ザ・コール/
緊急通報司令室』にそっくりだったりもする。
だがこの映画がユニークなのは、
まず"警察官の主人公VS誘拐犯"というシンプルな図式で
勧善懲悪ものを匂わせておきながら、実は主人公の方が
無自覚な“罪人”になっていくという点。そして、情報
を限定する手法で緊張感を生み出すだけに留まらず、
手法そのものが物語のテーマにも繋がっている点だ。
...
主人公アスガーは、女性や子どもといった弱い立場の
人間の為に懸命になれる、正義感の強い人間ではある。
だが問題は、彼が自分の判断を疑うことをしない人間であること。
電話を受けて「一刻も早く被害者を救わなければ」と
考えるのはもっともだが、そこから先がおかしい。
不祥事を起こして捜査権限を持たない身でありながら、
彼は独自に事件を解決しようと躍起になる。なんでも
独断でコトを進め、周囲とも殆ど情報共有を行わない。
協力を要請された同僚や司令室側が「何が起こってる?」
と訊いても、彼の返事は基本「とにかくやれ」である。
いくらなんでもここまで情報制限する人っておるかね?
とは思うが、「報告したら自分で捜査ができなくなる」
「自分なら最速最善の方法で事件を解決できる」
とでも考えていたんだろうか。
だが彼はその“捜査”で次々にミスを犯す。
イーベンの娘マチルデに幼い弟の無惨な姿を見せて
しまったことなどは最悪のミスだ。怒り任せに容疑者
へ直接電話をかけたりもするし、彼はおよそ冷静な
判断というものができていない。あれらのミスは、
極端に限られた情報を、彼が自分の先入観のみで
解釈したために起きたものだ(『助けを求める側が
被害者』『元犯罪者の話は信用できない』など)。
各所と情報を共有して、関係者宅に捜査員を送って
いれば、もっと穏便に事を運べたかもしれないのに。
最後にアスガーが起こした不祥事についても判明するが、
それも独り善がりな考え方から起こしたものだった。
イーベンの事件で次々とミスを犯すまで、
彼はずっと自分の先入観のみに基づく正義を
疑ってもいなかったんじゃなかろうか。
主人公だけにフォーカスした極端に狭い視野の映像、
ブラインドを下ろした狭く暗い部屋などは、そのまま
主人公自身の狭くて暗い頭の中だったのだと思う。
...
前科者だろうが警察だろうが、立場に関わらず人は
罪を犯す。特に本作が描いていたのは、自分の行為
が正しいと信じ込んだ結果、罪を犯してしまう人。
『地獄への道は善意で舗装されている』なんて諺が
あるが、良かれと思って為したことがかえって悪い
結果を招くことが、世の中では往々にして起こる。
ニュースで流れる事件や歴史的な犯罪を思い返しても、
勝手な正義や思い込みで恨みつらみを募らせたり、
自分の意のままに他人を従わせようとして、結果的に
重罪を犯した人がどれほど多いことか。彼らはきっと
自分が犯罪者になるなんて思ってもいなかったろうし、
未だに鉄格子の向こうで『自分は正しいことをした』
と考えてさえいるかもしれないのだ。
土壇場で自分が罪人であると気付けた主人公は、
最後にようやく人の命を救うことができた。
「あなたは良い人ね」というイーベンの言葉は
彼にとって最大級の皮肉だったかもしれないし、
彼がイーベンにとってようやく“善人”になれたとて、
それで彼が犯した罪が帳消しになる訳ではない。だが、
きっとそんなことは主人公自身が一番分かっている。
最後に彼が電話を掛けた人物は明かされないが、あれは
冒頭で連絡してきた事件記者に、自分の事件について
洗いざらい話すつもりだったのではと考えている。
...
主人公の行動がいくらなんでも極端過ぎたり、もっと
聴覚を使ったギミックで緊張感やミステリ的面白さを
持たせてほしかったと思う部分はあるけれど――
他人の意見を聞かず信じず、「自分は善だ、正義だ」
と頑なに信じて疑わない者こそ、最も重い罪への道を
ひた走っていることがあるかもしれない。
ソリッドシチュエーションスリラーとしてのエンタメ性
をしっかり持たせながら、そんな戒めも思い浮かばせる
佳作でした。3.5~4.0で迷ったが、4.0判定で。
<2019.02.23鑑賞>
悪くはないけど、期待値は低めの方が良いかな
アメリカの映画レビューサイト「ロッテン・トマト」で満足度100%と書かれると“ロッテン・トマトがなんぼのもんじゃい!”とひねくれた印象を持ちながらも、満足度100%って言うのに謳い文句に牽かれて鑑賞しましたw
で、感想はと言うと…一言で言うとアイデアの勝利とやったもん勝ちかな~と言う感じ。
面白くない訳ではないけど、満足度100%は謳い過ぎですw
自分的にはまあまあw
ストーリーは至ってシンプルで、オーディオブックやサウンドホラーゲームなんかに有りがちな感じで、ゲーム世代にはさほど目新しさは無いかな。
ですが、この手の物は有りがちであっても、意外と誰も手を付けてないと言う事が多くて、作ったとしても、そこにどうプラスアルファ付けるかがキモになります。
そのプラスアルファがどうなのか?と言う事ですが、ほぼ主人公のアスガーの一人舞台ですw
密室劇の様に進んでいって、外との様子は音だけで進行するのは評価が分かれるかな?
アスガーに掛かってくる電話を通じて、事件が展開していくのはアスガーは勿論、観る側にも想像力が試されます。
それがこの作品のキモなんですが、ネタばらしをすると単純でも殆ど人は終盤まで騙されるかな。
それがドキドキに変わる訳です。
警察の緊急通報番号と言うのは退っ引きならない事件が殆どと思いきや、実はたいした事の無い通報も多くて、それでもイタズラで無い限り、邪険にも出来ないので、オペレーターの方はホントストレスが溜まるかと思います。
アスガーは自分の担当範囲を大きく逸脱していく事で、結果として事件を解決に導く訳ですが、それに掛かりっきりになって、暴言も多数w
▼“何杯くらい飲んでる?”
▽“1~2杯かな?”
▼“じゃあ、車の運転は大丈夫だな♪ …ホントは何杯だ?”
▽“5~6杯かな”
▼“じゃあ、慎重に運転しろ”
アウトな会話ですw
▽“接触して、膝を打って痛いの!”
▼“今、忙しいんだ!後にしろ!(ガチャン)”
緊急通報の意味がありませんw
こう言った会話に笑いそうになりつつも物語は進んでいき、アスガーの抱えた悩みも徐々に明らかになっていきます。
ホラーではなく、サスペンスでラストのオチも怖いのを想像してたら、意外とハッピーエンドな感じ。
結構実験的な作品なので、もう一捻り欲しかったです。
映画としてはかなり単調なので、ホント観る人の好みと言うか、評価が分かれる作品で、個人的にはホントにまあまあな感じ。
ワンシチュエーション的な作品では過去に「CUBE」と言う名作もありましたし、最近では「カメラを止めるな!」もある意味ワンシチュエーションなので、あれぐらいの当たり感を期待してたから、ちょっと残念。
とはいえ、こういう実験的な作品は嫌いじゃ無いのでちょっと辛口ですが、珍味系を食べた様な満足感はありますw
騙された-露わになる二重構造
騙された。犯罪捜査もので、優秀な捜査官の技術的手腕に感嘆させるためのサスペンスだと思って観たが、全く違う映画だった。
主人公のアスガーは捜査官としてはまるで駄目だ(劇中場面における彼は捜査官ですらなく、緊急ダイアルのオペレータだが)。
ストーリーが進むほど、彼の人間的な弱さ・未熟さが露呈されていく。
犯罪サスペンスのフレームを借りて見る、社会に適応できなかった人びとの肖像。この構造は面白かった。
イーベンの家族のままならなさ。アスガーからイーベンへの電話は徐々に懺悔の色を濃くしてゆく。
彼は罪を償う決意を固めたようだが、そうして自分と向き合うことが、このように「弱い」人たちが苦しみを逃れるための最初の一歩なのだ。
また映画として面白いのは、ほぼ「音」のみでストーリーを動かした点だった。
映像はオペレーションルームのアスガーから一度も切り替わらない。一貫してこの方法をとったのは大胆だ。
しかしアスガーに聞こえる音から、観客の眼前にはまざまざと現場現場の光景が浮かんでくる。雨を降らせたのも良かった。読書の様な体験だった。
ストーリーとしても、誘拐事件の緊迫感に加え、アスガーの公判について等の謎を配置することで、うまく観客の注意を引き続けている。
マチルデは今後どのようにして生きていくのだろう。病気の母と元犯罪者の父をもって。死んだ弟を思って。
アスガーが最後に電話をかけた相手は誰か?最後に残されたこの問いをもって映画が終わる。
私は彼の妻がその相手だったのではないかと思っている。
超低予算ながら良作。
映像に出てくる主要な登場人物は1人で、あとは声だけの出演。
舞台も通信室とその隣の部屋の2部屋だけという、明らかに超低予算な映画。
その限られた舞台設計でなかなかの展開をしてきます。やはりワンシチュエーションはシナリオが命ですね。
ストーリーのあらすじは映画に慣れてる方なら読める人もいるでしょうが、この映画の肝は最後のどんでん返しではなく、主人公の心理描写をいかに表現できるかなので、主演のヤコブ・セーダグレンの演技を楽しむスタンスで観た方がより面白く観られると思います。
ワンシチュエーションなので細かなところで物足りなさはありますが、ハリウッドでリメイクされるそうなので肉付けの仕方に注目です。
あまりやり過ぎるとこの映画の魅力が無くなってしまいそうですが。
声と音のみで進む世界
 今までにないタイプの音だけで物語が展開していく映画。映像がシンプルで音だけに集中して見れたので、気がつくと引き込まれていた。
 アスガーが次々と電話をかけて話が展開していくが見ていておもしろかった。また、アスガーの選択が悪い方向に展開していくので、悲壮感が漂っていくが最後に絶望かと思わせての救われる展開で良かった。
 展開自体はそこまでインパクトがあるものではなかったので、もう一つ二つどんでん返し的なものがあっても良かったかも。
うーん
主人公の判断ミスが顕になるシーンで思わず、よしっ!となるほど主人公にイライラしっぱなし。
ホームページでは面白そうに見えたのになぁ…。
主人公に失礼な態度を取られても付き合ってあげる相棒が不憫でした。
最後、周りは主人公の声しか聞こえていないわけで、「イーベン!」と悲痛な声で叫んだら何があったんだと疑問に持つだろうに、イーベンが助かった&過去の事件の事実を話して放心状態の主人公は、イーベンが助かったことを周りに話さず…。
途中、膝を怪我した女性に「後にしろ」と言ったり、と、本当にイライラする主人公だった
懺悔と贖罪
発想が活きるのは繊細な演出があってこそ。
音声がとりだたされているが、表情や仕草からどれだけの情報を観客に伝えられるかが肝心となる。
正当化から葛藤、そして告解へと心理が揺れ動く様が、部屋を行き来するだけで伝わるシチュエーションも秀逸。
ハリウッドリメイクした場合、アレンジをすればするほど良さが消えてしまうのではないかと心配になる。
イヤな感じの汗がかけます。
画面に登場する人物は、ほぼ主人公だけ。その主人公は問題をかかえていて、精神状態はあまり良くなさそう。イライラしてしまう自分を抑えて職務に就いているのがよく解ります。
電話の相手との会話だけで状況を説明しているので、もうスクリーンにのめり込むくらいに観入ってしまいます。
終盤、どんでん返しがあり、自分の行動に腹を立ててヘッドセットなど機材をぶち壊してしまう…始末書がたいへんそう(((^_^;)
主人公も始終こめかみ辺りに汗をかいてましたが、観てる方も汗が出てくるくらいリアルです。
“行間”ではなく“音間”を読む。
EMCにかかってきた一本の電話。『誘拐された』と助けを求める女性を救うべく主人公・アスガーは通話音声から情報を得ようとするが…。
冒頭の数分でアスガーの仕事ぶりや性格、かつての過ちなどを手際よく描き出す。サスペンスと思っていた本作は、中盤からは完全にホラーへと豹変。終盤には自分を蝕む先入観と視野の狭さをまざまざと思い知らされる。画面はアスガーの職場だけで進行するが、観客は最初から最後まで緊張の糸を切らさずのめり込んでしまう。音質・音の大小・聞こえる方角・沈黙の長さなどありとあらゆる音響演出がなされており、舌を巻いてしまった。
また、筆者愛聴のラジオ『アフター6ジャンクション』の特集によれば、本作の電話の音は通常の受話器から聞こえる音とはまた違った加工がなされているらしい。アスガーの脳内補正や主観が入り混じった演出だという。
とにかく見ている間中、『次はこうなるのでは?いやこっちか?』と考えれば考えるほど逆にミスリードされて作り手の手玉に取られ、最後は自分の中にある罪とその元凶を見つめ直していく。なるほど!タイトルの『GUILTY ギルティ』とはそういう意味か!!
『search/サーチ』に続く革新的な一本。ぜひ、あなたも濃密な音の世界に没入してほしい。
仕事終わりのボ〜ッした頭でもそこそこ楽しめる
似たような映画でハルベリーのやつがあったな〜と思いながら見ました。
あっちに比べてやっぱ北欧の冷たさとか暗さみたいなものがあるなぁ…
ドラマはずっと執務室でやってるので地味だけど展開が早いので飽きなくて良かった。
ただオリバーが死んでるのが分かって父親に電話するとこから父親が犯人じゃないんじゃないの〜?って先が読めてしまう。
あとアスガーの独断で容疑者とか被害者に電話しまくるの大丈夫なん?危なくない?備品壊しまくってんの大丈夫?って日本人は思ってしまうよね…
相棒とかに対する態度が不遜すぎるしこんな人いたら怖いよ〜一緒に仕事したくねぇ。
最後ちょっと好感度上がったけど。
父親に何で警察に通報しないんだって問い詰めるアスガーにお前らに助けを求めたところで無駄やんけみたいな遣り取りが印象的だったな。
確かに前科者の方が疑われるだろうし。
面白かったけどまぁまぁって感じでロッテントマトもあんまりアテにならないなと勉強になりました。
イーベンが美人じゃなかったらどうしよう
野暮なことを言う。
絶対に最後までイーベンが出てきて欲しくないと思った。
あまりに野暮すぎる。
電話口の会話を盗み見、盗み聞きしてる分際で、このまま殺されるかもしれない状態にある女、イーベンの容姿について考えてしまったわたしも結構な罪です。
終盤、しっかりロマンスがあったのが良かった。
ウットリしつつ、薄々気づいてた恐怖に慄きました。
ラストのバックショットに繋がる、大事なロマンスだったと思います。
愛とか、罪とか、なんなん。
イーベンは最後まで出てこないので、安心して見て良し。
一音たりとも聞き逃さず
究極のワンシチュエーション。
「誘拐だ」と判明してから一気に出てくる緊迫感がその後もダレずにどんどん高まってくる。
電話口から聞こえてくる声と周囲の音から想像をフルに膨らませ、情報が追加されるたびに想像の画をアップデートさせながら観るのが新鮮で楽しい。
アスガーと共に電話番をしているような気分になってくる。
どんな小さな音も聞き逃すまいと息を殺して集中して観ていた。
子供に話しかけるフリをする、という機転の利くイーベン。
くぐもった声から読み取れる恐怖は相当で、最初は痛々しい気持ちになる。
しかし段々見えてくる事の真実はなかなかキツい。
「悪い男だ」のくだりで、もしや赤子を殺したのはイーベンでは?と疑っていたら本当にその通りになってしまった。
マチルダの今後の人生を考えると頭が痛い。
誤解まみれとはいえ、ミケルもただの良い人ってわけではなさそうだし。
しかし、分かりやすい弱者に気をとられると真実を取りこぼしてしまうものだな…。
まああんなの見抜けるわけもないけれど。
どこかやる気の無さげなアスガーの口調から、この部署に来てからの彼の良くないであろう態度が見て取れる。
記者の電話やら翌日の裁判の話やら、何か不穏なものを抱えた彼は通常の「デキる刑事」的な安定感が無いのが面白い。
事件そのものへの心配もありつつアスガー自身への心配もかなり大きい。
指示したことが裏目裏目に出た時の自分への失望感、緊急電話の中継係という職務がゆえ捜査を指示できないジレンマが余計に彼を追いつめ、張り詰めた糸がいつ切れるかと気が気じゃなかった。
そしてずっと匂わされていた罪の大胆な独白に度肝を抜かれた。
「何か悪い物を取り除きたかった。」彼も病んでいたということか。
イーベンもアスガーも、精神を病んでいたからって人を殺していいわけではないけれど。
緊急電話の部屋にいた人たちはびっくりしただろうな。コイツ言いやがった…!!とか思っているのかな。
ラスト、光の中にアスガーの黒い影が写ってパッと消えるエンディングのタイミングで残像が見え、作品自体の余韻と重なってグッときた。
一番良い形で終結してくれて良かった。
最後の電話は誰に宛てたんだろう。
ラシッドか、パトリシアか、ボスか。
いずれにせよ明日の裁判で供述書通りの受け答えはしないんだろう。
犯した罪も大きければ破損したPCと電話の弁償額も大きい。
ほぼリアルタイムで進む事件。
とことんリアルを追求しているかと思いきや、カメラワークやライティング、個人のイメージをグッと引き付ける部分の音量調整などがすごく映画的なのが良かった。
そしてアスガーの顔が良い。Tack.
期待し過ぎず、ニュートラルに聴く
前評判に触発され、すごい期待値を上げ、色々想像しながら観てしまった結果、話が入ってこなかった(涙)むしろ、二回目のほうが音の工夫とか、演技の工夫とか、字幕の工夫とか知ることができて、楽しめました。これから、みる人は、テレビのドラマを観るぐらいの軽さでみると、楽しめる気がする。ネタバレ見てからでも、面白いと思います。
タイトルなし(ネタバレ)
☆☆☆★★★
手掛かりは男に掛かって来る緊急電話のみ。
その電話の中に有る情報と、やり取りだけでサスペンスな展開が拡がりをみせる。
《犯人は、音の中に、潜んでいる》
映画のチラシの惹句にはそう書かれている。
しかし…。
映画を見終わって感じるのは、映画本編が本当に描きたかったのはもっと違うところに有ったのが分かる。
これは犯人探しの映画では無く、心の奥底に潜んでいる真実を引き出すサスペンス映画でした。
多くの伏線の中でもファーストシーンは重要で、見逃し禁止ではありますが。それはあくまでも本編の中で描かれる事件に対するモノと言え、或る意味ではマクガフィンに近いのかもしれない。
寧ろそれよりも、男の指に巻かれているバンドエイドで有ったり。左手の薬指の結婚指輪で有ったり等。映画本編の中で、はっきりと描かれなかった描写にこそ、観客に向けてジワジワと《真実》を炙り出していたと言えるでしょう。
緊急時に一切の手掛かりが消えた瞬間に感じる虚無感を。汗や無音状態での背中で表現する等。確かな演出力にも注目して貰いたいところです。
2019年2月25日 ユナイテッドシネマ豊洲/スクリーン11
「そう来たかぁ…」と漏れてしまう
フライヤー(チラシ)の謳い文句を読んで、勝手に「電話口から聞こえる情報を元に推理していく映画」と思い込んで観てしまったので、イメージと違ってしまい「これはハズレ映画かぁ。。。」と正直思ってしまいました。
けれど、それは間違いでした。
演出スタッフが生み出した人間の心理を凄く凄くついた展開に「そう来たかぁ...」と声が自然と漏れてしまいました。
ラスト20分のためだけに我慢の60分って感じの映画です。
ラストに行けば行くほど乱雑なピースがハマるハマる。
うまい!ただただ、うまい!やられました。
とはいえ、主人公に感情移入が出来ない...
正義感あふれる警察官であることは間違いはないのは分かる…
けど、、、やっぱり感情移入できないんです。
感情移入出来ないからこそ、「うまい」と思うのかもしれないですが、そのジレンマが最後までモヤモヤしてしまいました。
あれやこれやと書きましたが、この映画は《新しいサスペンス映画》の扉を開けたんではないかと感じています。
音(声)メインの映画なだけに、臨場感のある映画館で観てもらいたいです!!!
全92件中、61~80件目を表示

 
  












 
  
 