「素晴らしい映画だった」THE GUILTY ギルティ(2018) asa89さんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい映画だった
コストが一ミリもかかっていない本作。映る場面は一つだけ。コールセンターだけである。キーボードを台パンでいくつも壊しながら本作は一つの電話だけで進んでいく。
こういった類似作品は数多くあれど、「想像」させるその無限大の怖さや臨場感が半端なかった。時間も1時間半と見やすく、緊迫し、展開が二転三転していく。そしてその情報の小出し具合も完璧である。
電話番号は絶対覚えろと言われた。(”暴力親父”がそんなこと言うのなんで?)
子供部屋に入っちゃいけないよ。??
水族館ね。ふんふん。
サメが好きなの。ふーん?????
この小出し具合と、意味が隠されたアイテムの散りばめ方、真実へのつなぎ方も小説的で良かったと思う。
「もう嘘は嫌なのよ」「何度も助けてといったのに誰も助けてはくれなかった!!」というセリフがあらゆるところに反響して乱反射している。嘘を明日つくはずの主人公と冒頭の風俗で強盗にあった通報者は”自業自得”だから駆けつけるのは後でいいと言い放つシーンにも反射している。暴力事件を起こしたレンガ職人の親父の「妻のメンタルブレイクで子供が危ない」という言い分は警察や行政は全く聞く耳を持たなかったのだろう。
トルネードような話の巻き上げ方である。
そして最後に「あなた、いい人ね」とその言葉で終わっていく。
昨今は意味のない描写が多い映画が多いけど、久しぶりに爽快な感じを味わった。配属当初からイライラしてる主人公がイライラしているわけや、子供が番号を覚えた理由などが間接的な情報から自分で「わかった!!!!」となる瞬間はゲームにも似た楽しさがあった。
こう考えると、途中で「酔っ払って自転車に乗って怪我をした通報者」や「僕も好きだよ」というセリフにもなにか意味はあったのだろうと深読みしている。あそこでなぜ「好き」といったのだろうか。普通「好き」とは言わないだろう。どこか小説的に感じた。だが、その不思議さもいい!
本作は久しぶりに吹き替えで見たのだけど、違和感ゼロでむしろ良かった気がした。