「期待をあおるのが非常にうまい」THE GUILTY ギルティ(2018) うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
期待をあおるのが非常にうまい
少し前に『search/サーチ』という映画があり、とても面白かったので、似たような映画だと思い、期待して映画館に行きました。星の評価は低めですが、私としては好きな部類に入る作品です。いわゆるワン・シチュエーションに限定した映画で、主に低予算を逆手にとって、徹底的に「見せない」演出をして想像力をかきたてる戦略で、過去にも同工異曲、たくさんの名画が名を連ねます。
『リミット』『ロスト・バケーション』『キャスト・アウェイ』なんかが、好きな作品です。逆に、『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』『ジュピター20XX』などは見ていてイライラします。「何が違うんだろう?」って、結局は見てもらうための工夫とか、努力をもっとやってほしいということ。
この映画では、途中どうしても耐えきれなくて寝落ちしかけましたが、持ちこたえました。音楽は一切入らず、効果音として聞こえてくるケータイの着信音さえ無機質な電子音です。その分、電話の向こうで起きているであろうことを、わずかな状況音で想像させる演出は見事です。たとえば、6歳の女の子が怖くておびえているのを勇気づけ、「すぐにパトカーが着くから部屋でじっとして」と言っている向こうからパトカーのサイレンが聞こえてきたらホッとします。これを、大げさにならない程度の役者さんのわずかな安どの表情などで表現し、この少女は声のみで、最後まで映画には登場しません。でも少しずつ情報が増えていき、いま彼女がどういう状況でどこにいるかが、時々刻々と変わっていく様は、観客にゆだねられているので、想像できない人はまったく面白くもなんともないでしょう。その点、落語みたいな楽しみ方です。
主演の俳優さんの演技も見事で、見終わった後に彼がどういう状況で、通報してきた母親がどうなってしまったかなど、実にたくさんの情報が提示されますが、絵面(えづら)としては電話のこっち側だけ。電話の相手がどんなひどい目に遭っているのかは見えない分だけさんざん想像させられました。
途中で、シフトを上がって、現場に駆け付けるとか、作業を分担して、通話を受ける人間と指示を出す人間の役割をつけるとか、いくらでも面白くする工夫が出来たはずなのに、あくまでもワン・シチュエーション、ワンサイドにこだわったがために、見る人が置いて行かれた印象です。それでも評価が高いのは、俳優、監督を含め、ノルウェーの映画が非常に珍しいので好意的にとらえた人が支持したんじゃないかと思います。
2019.2.28