劇場公開日 2019年2月22日

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「サスペンスのアイデア」THE GUILTY ギルティ(2018) vary1484さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5サスペンスのアイデア

2019年3月20日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

一つの部屋で繰り広げられる声だけのサスペンス。
デンマークのサンダンス映画祭出品作品。低予算映画のアイデアが詰まっています。この映画の舞台は、デンマークのコペンハーゲンの警察官の緊急通報司令室。1人の警察官が受けた1つの電話からサスペンスは始まります。しかし、カメラはその司令室から出ることはなく、電話を通して行われる会話のみを頼りにして事件解決に挑む。

まず、アイデア。もちろん誰もが考え付くようなシンプルでトリッキーなアイデアですが、それを長編映画のサスペンスへと作り上げたとこにものすごい価値がある。アイデアは思いつくことは簡単だが、それを誰もが理解できるレベルへと持ち上げることが最も難しい。

この作品がそれを可能にしたのは、素晴らしい脚本と、俳優さんたちの演技。電話の音声だけで全てを情報として伝えなければならず、まず”自然であること”、”伝えるべき情報を明確にすること”、それに加えて、”キャラクターの感情が伝わるようにすること”が絶対条件。それが90分続いたことが奇跡。脚本の会話部分と、声だけで感情を伝える声の演技が論理的にも芸術的にも優れていました。

それだけで終わらないのがこの作品のいいところ。主人公の警察官のアスガーのキャラクターの見えない部分がストーリーを動かしているからいい。アスガーは映画が始まってから自然ではない。何かを隠しているような気もすれば、周りは皆知っている何かを問題として抱えているような気もする。それが少しずつ階層的に明らかになって行くのだが、彼が抱える問題は明らかになるが、そこまでの経緯や、その問題とこの作品中のサスペンスとの直接的な関わりは明らかにされない。そこを視聴者が主体的につないでいくことで、エンディングの主人公の行動や感情に大きな衝撃を受ける。
ストーリーが事件を中心に進んで行く中で、自然なことと不自然なことが共存することによって。その不自然さがサスペンスとなりキャラクターとなって行く。それには自然であるべき所が、自然である必要がある。これがなんと難しいことか。

サスペンス映画は、単純なコンセプト、ストーリーでは埋もれてしまう時代。それを切り開く斬新なアイデア、革新的なテクノロジーに今後のインディー映画は向かって行くのだろう。

vary1484
きりんさんのコメント
2020年2月28日

こんにちは

様々なサービスセンター、お客様係のコールセンター等を日々利用しますが、要件を済ませたあとにふと電話の向こうの知らない誰かと二言三言、言葉を交わすことがあります。

ねぎらいの言葉は本当に喜んでもらえます。
日がな苦情や質問者への相手をさせられて喉も心も疲弊しているオペレーター。
「喉痛いでしょう、大丈夫ですか」
「説明が本当に上手ですね、感心しました」
「聞きやすいきれいなお声ですね」
「あなたの明るい声が聞けて良かったです、いい一日が送れそうです」
「クリスマスはお休み取れそうですか、お互い頑張りましょうね」
「もしかして〇〇県の人?」

ほんの数秒の声だけのやり取りですが、チーフのチェック(指導・傍聴)が入らないように交わす心の一瞬が好きです。

面白い映画でした。

きりん