アメリカン・アニマルズのレビュー・感想・評価
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罪は縁遠いものでなく、思いの外近くに潜む
レビューなどから、もっと癖の強い作品かと思ったが、想像よりは見易かった。
どう生きればいいのか解らなくなったり、社会や人生の閉塞感、平凡や常識への反発、家族を大切に思いながらも抱く鬱屈、変化を待ち望みながら反面恐れる感覚などは、多くの人が多少は共感を持てるのではないだろうか。
4人が皆、生まれも環境も人格も、特別に異常な訳ではなく、ごく普通であるのが恐い。
堅実に生きるか、野心を抱いて挑戦するか、夢を追うか、自由を求めるか。
たかだか100年程度の、誰も肩代わりできない人生。代償を自分で支払う限りは、どう生きるかの選択は自由にすればいいと思うが、それが他者を損なうものになった時、社会が、法が、良心が、破滅をもたらす。
教育や親や周囲は、知識としての【罪】を口を酸っぱくして語るだろうが、その境を本当に見極めて、行動を選択できるのは自分だけ。
考えの甘さが選択を誤らせた。もっと上手くやれると。誰も傷付けずに。そしてきっと、成功の暁には、達成感に溢れて最高な気分になると思った。
結果得たのは、罪悪感と後悔と絶望とすり減るような恐怖。
例え社会に断罪されなくとも、その後の人生は、心の幸福や平穏を代償に支払うものとなっただろう。
冒頭の上下逆さまの気色(非日常を求める心の象徴だろうか)、再現映像のようなドラマと、そこに挟まる当事者達のインタビュー、その食い違いによってリアルタイムに変化する映像内容など、表現や演出の手法が斬新。
4人の中でも、記憶や主観が食い違っているのも、真実ってそういうものよね、と実感できて面白い。
本人登場は、なえるよね
ただ、まぁこの映画では必要だったのかもとは思えなくも無い。
若さ故の自分は特別なんだ、こんな現状に甘んじているはずの人間じゃないんだという根拠なき自尊心
強盗も簡単にできるはずという思い込み。計画を立てるときに映画て計画を立てる
どこかで引き返せるところがあったはずなのにやってしまった犯人の反省
結局家庭に問題があってもおぼっちゃん臭がただようところに、生やさしく見られたけど、これも現実に起きたことなのよね
ばかだよねー
殺人とか犯さなくて良かったね
我らの似姿たるボンクラども…
どいつもこいつもボンクラ過ぎて、退屈してて、臆病過ぎて、それでも自分は特別だと思いたくて、まさに彼らは僕等の似姿なんだと思い知らされる。
特に、本人と家族自身のインタビューシーンはそれがよく分かる…
ただ、「オーシャンズ」を思わせる宣伝はどうかと思うな。そういう観点では面白くはない訳だし。
ドキュメンタリーとドラマの秀逸な融合
作りとしては最近よくテレビで見かける「再現ドラマ」的構成である。ドキュメンタリーパートでご本人が登場し、ドラマパートで彼らの過去の行動を見せるというやつだ。だがしかし、さすが映画としての「画」の繋げ方は秀逸だ。ドキュメンタリーとドラマシーンが非常に美しく繋がり、単なる実録ドラマに止まるのを防いでいる。演じている彼らは特段本人に似ていないのだが(特にバリー・コーガンは全然似てない、本人はどっちかといえばアンドリュー・ガーフィールド似だ)、うまく引き込まれる。
この本人語りが若干相互矛盾を含んでいるのも興味深い点だ。そしてそれに応じてくるくると変わる映像。結局何が真実なのかは本人たちに聞いても分からない。誰かが嘘をついているというより、記憶というのは本来そんなものだと思うし、何ならなかったことすら本人の中ではあったことにできるかもしれないものだ。
犯罪モノは頭脳戦で痛快、駆け引き、という展開が劇映画の醍醐味だが、本作品はまさに「True story」であるため、精緻に見えて何から何まで杜撰だ。彼らはどことなく現状に満足していなくて、それを乗り越える「冒険」として高価な本の強奪を企むわけだが、とにかく想像力が圧倒的に足りない。リスクマネジメントもなにもあったものではない。そして「人を傷つける」ことを理解していない。
当然のように破綻して刑期を終えた後でも、彼らにリアルさはあるようでない。ある意味では「青春の苦味」は存分に味わったのだろうが...。
側から見ていればこういうのは馬鹿だなー、で済むのかもしれないが、願望自体は誰にでもあるものだ。彼らも計画だけで満足できたなら、最初でやめていたなら...と思わずにはいられない。
リアルの4人は絵になります
あまり前知識を入れずに鑑賞。
何者かになりたくて、若さの証明ゆえに、犯罪に手を染める若者4人のお話。若者達に感情移入して、『危ないよ!』って言ってあげたくなるような保護者の視点で見るような映画でした。それはきっと本人や家族の人たちのインタビューを織り交ぜるとともに、あまりに無邪気に犯罪計画を立てる浅はかさ所以なのでしょうね。
脚本は捻ってあり、それに呼応するかのように時折面白い画があり、制作者の意気込みがそこかしこに垣間見れました。
それにしても当人4人はみんな演者でもおかしくないルックス。どうせならイーストウッドみたいに本人達に演じさせたらっていうのはちょっと酷か。
背徳のスパイスと強かな罪の香
小さな世界で日々多くの人に紛れてただ生きる私にとって、背徳のスパイスや強かな罪の香は時に憧れの対象になる。
非情な殺し屋になりたいし、スマートな怪盗になりたいし、ドロドロの不倫がしたいし、芸能人と繋がってSNSで匂わせしたいし、人肉は食べたい。
きっと誰しも少しくらいは同じ思いを抱いたことがあるんじゃないか。
しかしそれらの「特別」の裏に悲しむ家族や失われる命や傷付く人間や閉ざされる己の未来が無ければ、それを考えなければ、の話なのである。
現実ではどうなるかが容易に想像できるから、妄想と脳内現実の別世界だとか、映画や小説などの創作物だとかで仄かな欲望を昇華させているんだから。
二重になった登場人物たちやドキュメントタッチのストーリーに引き込まれつつ、演出の隅々まで光るセンスと工夫に頭を殴られるような面白さを感じる作品。
映画のファーストカットが好きだ。
予告編と映画館マナーの映像が流れ、劇場内が暗くなり、スクリーンが広がり、製作や配給のロゴムービーが流れ、いよいよ本編の掴みとなるファーストカットが映し出される。一連の流れが好きだ。
週に何本、一日何本観ても、どんな名作でもどんな駄作でも、ファーストカットへのワクワク感は作品の度に更新されるのである。
本作ではロゴムービーの頃からジャングルを思わせる鳥や動物の鳴き声が聞こえて、「さてどんな初対面になるんだろう」とドキドキした。
そして画面いっぱいに出てくる映像に胸掴まれる。
何十年も前から世界中で膨大な量の作品が創り出され続けている映画において、完全に新しい表現や完全に新しい題材を扱うのはとても難しいことだと思う。
しかし、細かい工夫を重ねて新鮮で刺激的なものを次々と提供してくれる意欲ある人たちがいる限り、映画の表現はこれからも広がり続けるんじゃないか、とも思う。
本人達と家族、関係者と被害者の実際のインタビューを挟み、再現ドラマのように演技と創作の映像を進める本作。
フィクションでもドキュメンタリーでもない狭間のバランスがとても新鮮に感じた。
15年前の事件を語る上で時折表れる食い違いもご丁寧に描写。
スタイリッシュで綺麗で無骨でスピーディーな演出とカメラワークや映像の切り替えに心奪われ、これらの表現方法だけで興奮してしまう。
オープニングでは猛禽が小動物を捕食し、エンディングでは鳥たちの家族や感情を思わせる絵が入るのも非常にグッとくる。
上下反転した映像に「これから私の価値観がひっくり返されてしまうかもしれない…!」とヒリヒリする。
映画へのワクワク感や映画の楽しさ、可能性の大きさを改めて感じることの出来る作品だった。
こんなに好きにさせてくれて夢中にさせてくれてありがとう。と、全ての映画に関わる人たちに伝えたい。
作品ごとの好き嫌いは置いておいて。
ストーリーと言えばいいのか回想録と言うべきか、とにかく映画の本筋もとても面白かった。
着地点も秀逸。
計画段階、肌を刺すような好奇心やゾクゾクする興奮を味わう4人と共にテンションを上げた先の現実。
蓋を開けてみれば、犯罪エンタメ映画のようなテンポの良い緊迫感など到底演出できないもので。
グダつく作戦、大声で怒鳴り合い罵り合い喚き合いジタバタと進行するその中身のみっともなさよ。
大きなリスクを冒した先に得られた物とは。
口籠もり涙ぐむ本人達の様子からもう全て全て窺える。
彼らと自分の指の間からサラサラと色々なものが流れ落ちていくのが目に見えるようだった。
特別な人間なんかじゃない、と言われる。
その通りだと思いつつ、敢えてその言葉に私は異を唱えたい。
俯瞰で観れば私の人生など平凡な日常かもしれないが、毎日色々なことが起きて、些細なことですら特別だと感じ、私以上に特別な人間なんていないんじゃないの、くらいの心持ちで生きているので。
犯罪をしようとしなかろうと特別も平凡も皆持っているものなんじゃないのと言ってやりたい。
いや私も自分の現状を惨めに感じたり人生に落ち込んだり未来に失望することがあるけれど。
ポジティブとネガティブのどちらかに針を振り切るのは難しいから。
それでも何とか自分だけは自分を愛してあげたいじゃない。この人生では私以外主人公になれないじゃない。
綺麗事だと切り捨ててなんか欲しくないじゃない。
しかしこの事件を題した映画に出演したり本を書いたりなんて、それって結局「分かりやすい特別」になれる道じゃないか、とふと思ったり。
捨てきれないね。自覚は無いのかも。でもそれで良いのかも。
どうせ共感も理解もできる。私が彼らだったら今何をしているんだろう。
結論が出ても一筋縄ではいかないのが人間。
4人それぞれの背景とその奥、日常に戻っていく様に何故だか涙がボロボロ出てきた。
いつかは死ぬんだ、さてどう生きてやろうか。
ドラマと現実が虚実綯い交ぜになった異色作
ケンタッキー州の大学生スペンサーは退屈な日常をひっくり返すような何かが起きないかとぼんやり期待しながら日々を過ごしていた。そんなある日大学の図書館に貴重な鳥類図鑑が保存されていることを知ったスペンサーは、同じく退屈な日常に悶々としていた悪友ウォーレンに強奪しないかと半ばシャレで持ち掛けたところ大乗り気、さっそく綿密な犯行計画を練り始めるが・・・からの実話サスペンス。
冒頭に「これは真実を元にした映画ではない。真実の映画である」と威勢のいい啖呵を切る本作は虚実綯い交ぜとなった特殊な作品。まずドラマにドキュメンタリーが混じり込んでいて、実際の実行犯たち本人が出てきてそれぞれが当時見聞きしたことを語ると、それがドラマに反映される。しかもそれぞれの記憶が微妙に食い違っているのもそのままドラマにしているので、登場人物がいるはずの場所がカットが切り替わると別の場所になっていたり、出会った人物の服装が入れ替わったりとデタラメ。しまいにゃドラマパートに実行犯本人が映り込んだりして呆気にとられます。そんなムチャクチャな演出はちょっとした出来心がどんどん雪だるま式に膨れ上がり暴走するドラマにガソリンを注ぎ込み、ポーンと投げ捨てたかのような結末にはとんでもなく重たいテーマが滲んでいる。今まで観たことがない破天荒な作風に圧倒されました。劇中で言及される映画やクレジットに被さる歌にもニヤリとさせられます。
これは相当レベルの異色作でホントにヤバいレベルの傑作だと確信していますが、観客が私ともう一人しかいませんでした。・・・もったいない!
お宝を盗むという点ではオーシャンズと同じではありますが
内容は全く違ってました。片や抜かりない周到な準備をしたプロフェッショナルな軍団で、一方こちらの方は雑な計画でチームワークにも欠けるごく普通の学生。しかし、未熟な学生だからこそ持つ葛藤や甘さ、心の揺れ動き、特に映画後半に見られた失敗やアクシデントにみまわれた時にみせるリアクションにはいちいち頷けるものがあり、その演技、表現力はすばらしいと思いました。
安易に強盗なんて考えるもんではないよと教えてくれる、ストップ犯罪撲滅運動のプロモーション映画に採用されそうな映画でした。
物語はこの映画で完結する
私が観る前に思っていた映画とは違う映画だったけど、これは、これで、良い意味で裏切られた作品だった
「このままでは、平凡で退屈な大人になってしまう」と感じた大学生4人組が、大学の図書館に貯蔵してある希少本の図鑑を盗む計画を立てる
その話は実話が元になっているのだけど、この映画が他の映画と違うのは、当事者たちが、映画の中に出てきて、その当時の様子を語るのだ
それは、本人しか知らない心情の吐露であって、それがドラマで描かれる実話にリアリティを増している
主人公は4人の大学生だ
大学生ぐらいの年頃というのは、たいてい無謀で、無敵で、何でもできると思い込んでいる
たとえば、カンフー映画を観たら、自分もカンフーの達人になった気分になってしまうように、
彼らは「オーシャンズ11」を観たら、泥棒ができるような気分になってしまうのだ
そんなノリで、泥棒を計画したのが始まりだ
しかし、多くの人が経験あるように若さの勢いとか、ノリっていうのは、たいてい、バカげているもので…
ここでは、ノリと勢いだけではない苦味や痛みも描かれている
はるか昔に、私もそんな時期を通ったからこそ、彼らの痛みが心に突き刺さってくる
若さの勢いがあまりにバカげていて、笑ってしまうシーンも多かったけど、その代償をキッチリと払わされているところに現実を超えたリアルがあると思った
単細胞にも程があるでしょ。
計画、物語は少し退屈な印象を受けたが、当事者本人のインタビューから、本人達の関係がわかるあたりが面白かったし、その後の彼らはいかにもで笑えた。
主犯格が一番単細胞なのだが、単細胞に見えない仲間がついて行く理由が気になった。
それとも、退屈に侵された彼らは、刺激を求めてコントロール出来ない代償を負っただけなのか?
刑を終えて映画に・・出ざるをえなかった?
予告編を見る限りオーシャンズ的なお洒落泥棒を期待してしまうし、実際のところ計画段階で彼等の脳内に映し出される犯行イメージ映像はなんとスムーズで格好良いワンカット長回しであることか!しかし残念ながらこの映画はファンタジーではない。まず冒頭で「この映画は実話に基づいた物語ではない。実話である。」との断り書きが出る。そして事件の実際の犯人たちが4人とも劇中に登場してくる(それも話が転がり始めるたびに顔を出して現実に引きずり戻す)ものだから、クライムエンタテイメントとはほど遠い「ほぼドキュメンタリー映画」なのだ。まだ何者でもない大学時代の焦燥と恍惚と不安が交互にやってくるような若者の気分がよく描かれていてヒリヒリしてしまう。刑期を終えたとは言え普通なら顔を晒したくは無いだろうに…そこがやはり良くも悪くもアメリカの凄さなのだろうか。
事前情報から、もっとドキュメンタリー寄りかと思ってましたが、割とエ...
事前情報から、もっとドキュメンタリー寄りかと思ってましたが、割とエンターテイメント性の高い作品でした。
所々と本人たちのインタビューシーンが入りますが、特にストーリーを止めてしまうことにはならなかったと思います。
むしろ「実際にあった話」として、彼らが"特別なことがしたい"という欲求にかられた強奪シーンの馬鹿馬鹿しさ、救いようのなさが際立っていた。
ラストはなんかライフオブパイやビッグフィッシュみたいだったな
ドキドキ感あり
実話の強奪事件を、犯人本人が出てきて語り、当時の状況を再現ドラマで見せる、ドキュメンタリー。本人達は、刑期を終えて出所している。
4人の若者が、警備が手薄な大学図書館にある稀覯本を盗み出す物語。何か特別な人物になりたくて、人生が変わる瞬間を待ちわびる若者達。特別になるには、待っていてもダメで、自分から動かなければ。と、そこまでは良かったが、図書館に価値の高い本があることを知ってから、悪い方に動き始めてしまう。
犯罪に手を染める側のリアリティがあり、焦燥や精神的に追い詰められる瞬間のドキドキ感が伝わってきて、相応に楽しめた。
勢いだけでは
何でも、勢いだけでは、何ともしようがない。しかも、それが犯罪ならなおさらだし、その報いは大きい。本人達が全員登場しているのはすごいし、現在は真面目にしているのは、この出来事がもたらしたお灸の結果ですね。
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