「物凄くクオリティの高い再現VTR」アメリカン・アニマルズ といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
物凄くクオリティの高い再現VTR
予告編が面白そうだったので鑑賞しました。ただ、予告編で感じた印象と実際の印象は大きく違いましたね。
個人的な評価ですが、めちゃくちゃ面白かったです。映画レビューサイトの評価がイマイチ高くないのが不思議でならないです。
本作はアメリカで実際にあった貴重な本の強奪事件を描いたノンフィクション映画。作中には当時の実行犯本人が登場して証言を行うシーンもあり、ノンフィクション映画とドキュメンタリー映画の中間のような映画で、まるで再現VTRを観ているかのような不思議な作品です。
「何か大きなことをしたい」という大学生くらいの若者が誰しも感じている漠然とした欲求を、最悪な形で実現してしまった大学生4人組。物語の前半では本の強奪計画を緻密に練り上げていきます。本がある特別展示室の構造を調べ上げ、図書館スタッフの勤務時間を調べ上げ、本の転売ルートを確保する。その様子はさながら作中にも登場した「オーシャンズ11」そのものです。強盗団の4人はこの時「俺たちなら何でもできる」という万能感を抱いていたんだろうというのが伝わってきます。
しかし実際の本強奪決行当日。いくつかの「計画外」の事案が発生して決行が危ぶまれますが、結局日を改めて計画は実行に移されます。(ここで止めておけば良かったのに…。)
改めて決行された犯罪計画も、仲間内の揉め事や急ごしらえの計画や予想外の事態などの理由によって、やはり計画通りには進みません。あれだけ綿密に練り上げられた強奪計画も、一箇所に綻びが生じるとどんどんと計画を進めることが困難になっていき、それでも無理に計画を進めてしまったがために最終的に最悪の結末を迎えます。
「オーシャンズ11」はあくまでもフィクションであり、現実ではそんな上手く事が運ぶわけありません。ノンフィクション映画でありドキュメンタリー映画でもあるこの特殊な構成の映画だからこそ、主人公たちの抱いた生々しい罪悪感や後悔が観客にまで伝わってきます。これは実行犯の本人が出演するからこそできる演出です。実行犯や被害者の現在の姿まで描かれているからこそ、この事件はフィクションではなく実際に起こったことなのだと、この事件は過去のものではなく現在進行形の事件なのだとまざまざと見せ付けられます。
「実行犯本人の出演」に感動した私としては、「実行犯本人が出演する意味が分からない」等のレビューが多いことに驚きです。自分の犯した罪を世界中の「観客」に晒されるわけですから、映画への出演は実行犯の四人にとって重大な決断だったと思います。それでも彼らはこの映画の完成のため・被害者への贖罪のため・自分たちを反面教師にするために出演を決断したのです。もちろん彼らの行った非道な犯罪は許されるべきではありません。しかし今回映画の出演を決断した彼らには感謝と賞賛を送りたいです。