「映像のスタイリッシュさと、ストーリーのギャップ」アメリカン・アニマルズ ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
映像のスタイリッシュさと、ストーリーのギャップ
この若者たちは、本当は途中で止めようと思っていたのではないか。
或いは、皆が皆、実行にまで行き着くとは思っていなかったのではないか。
それほど計画は粗雑で、行き当たりばったりだ。
だが、自分は、或いは、自分達は「特別」だというような承認欲求や、歪んだ仲間意識が交錯し、ズルズルと犯行に至ってしまう。
時間は経ってしまっているが、それぞれの記憶が大きく異なることや、犯行中の重要な確認作業もなおざりで、また、古い映画の「華麗なる賭け」の一場面をスクリーン越しに見るたりすると、どこか現実感に欠ける、犯行自体にフワフワした感覚を覚えてしまう。
ITバブルが一旦弾け、その後、リーマンショックまでのそれ程長くはない好景気にあって、豊かとは言えない家庭環境や、成功する可能性の少ないアートの世界に身を置いてしまっている状況なども、彼らに閉塞感をもたらし、間接的にこの犯行を後押ししたのだろうか。
映画を観て、こんな馬鹿なことはしないと思う人々が多くいる一方で、若気の至りに共感する人も少なくないと思う。
日本にもバブルがあって、そんな中、実は閉塞感を感じていたんだとか。
自分にもちょっと無謀な時期があったとか。
だが、閉塞感が犯行動機であったら、何か悲しい。
作中の本人達がインタビューに答えている様を観ていると、犯行に至る過程を分析しようと試みるものがいる一方、どこかに、自分はやはり特別だという承認欲求を抱え、反省や後悔を感じることが出来ない者もいるように思う。
なかなか人は変われないのかもしれない。
日本で数回あった大学生の集団レイプ事件などは以ての外だが、一気飲みの強制で急性アル中になって救急車で運ばれたとか、実は根っこは、この事件と似たようなものなのではないだろうか。
どこに一線があるのか、それも分からずに越えようとして超えたのでなければ、本当に不幸だ。