「こわいこわいこわい」ヘレディタリー 継承 きーろさんの映画レビュー(感想・評価)
こわいこわいこわい
親、家族、地域、そして宗教観。人間(アメリカン?)としてのアイデンティティの全てをぶっ壊して行く127分。IMAXのデカい画面と音響設備で見れば怖さ10倍緻密さ100倍ですわ。
親に愛されてないなんて恐怖でしかないし、家族に気を遣われないなんて絶望的だし、他人の善意が全て罠だなんて何のために生きてるのかわからなくなる。そんな救いようのないお話しに、少しだけ霊的なエッセンスを加えた感じで、基本は「人間って自己中で怖いです」な話。他人だったらいいんだけど、本当は愛し合い守り合わなきゃいけない家族だけで話が進んで行くのが独特の陰鬱とした空気感を生み出してるのかもしれない。
なんやかんや幽霊だけじゃなく障(さわり)とか怨念とか呪いとか精霊の怒りとか、何でもありの日本のホラーとは違って、キリスト教がベースの欧米のホラーはどうしても悪魔とかいう概念に落としがち。ん?これは?とばあちゃんの葬式で気づいちゃうもんな。
とはいえアリ・アスター監督の上下左右のパーンの先にある意外な映像の使い方のうまさには感服するし、ミニチュアの精度と使い方には全ての映像作家のやってみたい、が詰まってる。デビュー作に潤沢な資金が投入されるって素晴らしいな。A24の鼻の良さにも感服。
相変わらずトニ・コレットの顔つきがクライマックスで母親そっくりに豹変するのが自分的には1番の見どころだと思ってる(決して監督の大好きなだらしない男女の裸体ではない)。
でもね、平日9時から見る映画ではなかったな…この余韻で午後をどう過ごせと?やはりリバイバル上映前半の夜の時間帯を狙うべきだったと心の底から思いましたとさ。
それではハバナイスムービー!